30ドルの奇跡——排気ガスを「酸素」に変える高校生の発明
車の排気ガスが、酸素に変わる——。
そんな夢のような話が、アメリカの高校生の手から生まれました。
SNSで話題になっているのは、ペンシルベニア州の18歳の高校生2人が発明した「Go Green Filter(ゴーグリーン・フィルター)」。3Dプリンターで作った小さな装置を車のマフラーに取り付けるだけで、排気ガスに含まれるCO2を酸素に変えてしまうのです。

■仕組みは「藻」の光合成
種明かしをすると、主役は「藻」です。
装置の中には藻を満たした小さなチャンバーが入っていて、光が当たると光合成を行い、排気ガス中のCO2を吸収して酸素を吐き出します。
フィルターは4層構造で、プレート1枚あたり約15%、合計で約74%のCO2削減効果を実証したといいます。
発明したのは、ユニオンビル高校の3年生、ロハン・カプールさんとジャック・ライヒェルトさん。MIT教授の藻類研究にヒントを得て、サイエンスフェアのプロジェクトとして開発を始めたそうです。
■材料費はわずか30ドル
驚くのはそのコストです。
3Dプリンターで作った試作品の材料費は、約30ドル(約4,500円前後)。
高価な触媒も、レアメタルも使っていません。
「藻と水と光」という、地球のどこにでもあるものだけで排気ガスをきれいにする。
このアイデアは2023年の「Changemaker Challenge」で最優秀賞を受賞。現在はEPA(米環境保護庁)と協力しながら、より大規模な実用化の可能性を探っているそうです。
■「高校生だから」できた発想
大人のエンジニアなら、「排気ガス対策=触媒や電動化」と考えるところです。
彼らは「光合成」という、理科の教科書に載っている仕組みで勝負しました。
もちろん、実用化には耐久性や藻の交換など、課題は山ほどあるはずです。
それでも、身近なものの組み合わせで世界的な課題に挑めることを、2人の高校生が証明してくれました。
日本の高校生からも、こんな発明がきっと生まれてくるはずです。
ただし、SNSで広がっている「排気ガスが74%減る」「世界中の車に付ければ環境問題が解決する」という話は、少し慎重に見る必要があります。
まず、この数値は開発者自身が行った限定的な条件での実験結果であり、公的な研究機関や第三者による大規模な検証が十分に行われたわけではありません。
さらに、専門家からはいくつかの課題も指摘されています。
最大の問題は排気ガスの温度です。車の排気ガスは走行中には数百度にも達することがあり、藻類がその環境で安定して生き続けられるのかは大きな疑問です。また、光合成には十分な光が必要ですが、車が夜間やトンネルを走る場合には効率が落ちる可能性があります。
さらに、自動車は大量の排気ガスを高速で排出します。手のひらサイズの装置だけで、そのすべてを処理できるのかについても、多くの研究者が疑問を示しています。
つまり、この発明は「実用化された革命的技術」というよりも、非常にユニークで将来性のある研究アイデアと考えるのが現時点では適切でしょう。
それでも、高校生が環境問題に挑戦し、新しい発想で試作品を作り上げたことは素晴らしいことです。実は藻類を使って二酸化炭素を吸収する研究は以前から続けられており、今回の発明もその流れを受け継ぐものです。
AIの時代になり、SNSでは毎日のように「世界を変える発明」が流れてきます。しかし、動画のインパクトだけで判断せず、「第三者による検証はあるのか」「実験室だけでなく実社会でも使えるのか」という視点で見ることも大切です。
この高校生たちの挑戦が、将来本当に自動車の環境技術へ発展するのか。期待を持ちながらも、冷静に見守っていきたいと思います。
■参考URL
・One Green Planet「Teen Inventors Create Algae-Powered Car Filter to Cut Emissions」
・Changemakers「Go Green Filter」
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