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片頭痛とオナニーと私|自分の身体を取り戻す二十数年の記録


この物語は、片頭痛に悩む主婦が、
己の恥をかなぐり捨てて同じ悩みを持つ人
更年期を迎える方、年齢を重ねても
魅力的でいたいあなたに贈ります。



プロローグ

昔から春になるとムラムラする体質だった。

夫とのセックスレスもすっかり日常になった私にも、季節は巡り春は訪れる。
冷え切った心身は、春の夜風をいち早く感じ取り、次第に潤い、それを養分にして何かが芽吹きはじめるのだ。


頭痛からオナリサ

昔から肩こりが酷かった私は、若い頃から整体やマッサージ器具に頼る日々を過ごしていた。頭痛は月2~3回程度で、市販の痛み止めで治っていた。

アラサーになり、いよいよ本格的な頭痛の幕開けである。
少しずつではあるが、身体の衰えも感じるようになり、お腹のたるみも気になり出した。
腹筋運動を始めてみたが、翌日決まって頭痛が起きる。
この時は市販の痛み止めで対応していたが、
腹筋のたびに頭痛が起こるのでさすがに怖くなり、運動は以前からやっていたウォーキングに加え、ヨガを始めることにした。

私は小さな頃から病気がちで、身体を動かすのは体育の時間のみ。
おそらく、筋力不足から首や肩に負担がかかり、頭痛を引き起こしていたのではないだろうか。
この頃から頭痛の回数もだんだん増えていき、市販の痛み止めは、どれも効果が薄くなってきていた。

薬の効果がなくなることを恐れ、私は頭痛について積極的にリサーチを始めることにした。
当時スマホなどはなく、夫婦共用のパソコンで調べ物をしていたのだが、

ある日、私は「オナ禁」という耳慣れない言葉に出会う。

オナというのは、もちろんオナニーのことで
「オナニーをすると頭痛になるからオナ禁生活をする」という男性のブログだった。
頭痛とオナニー、一体何が関係するのだろうか。
お恥ずかしい話だが、当時の私は持ち前のドスケベ心と誤った探究心のせいで、脳みその大半をオナ禁が占領してしまい、

もしかしたら、そのオナ禁とやらが私の頭痛の正体を暴いてくれるに違いない、と思っていた。

そんな過剰な期待を抱きながら、私は夫の目を盗んではオナ禁リサーチに励むのだった。
だが当時のネット情報と、今のネット情報は月とスッポン。雲泥の差。
いくら調べても、無数のエロサイトが出てくるだけで、なんの成果も得られない。
潔癖症の夫にばれるのを恐れ、私は断腸の思いで、オナ禁リサーチ「オナリサ」から手を引いた。
今ならこんな質問にもAIが答えをくれる。
便利な時代になったものだ。
*これは後ほど記述

オナリサと別れを告げ心を入れ替えた私は、ウォーキングやヨガだけでは飽き足らず、心機一転パワーヨガの体験レッスンに行くことにした。

ヨガとは言っても、やはりパワーと付くだけある。
ドーベルマンのような先生の横で、やや肥満気味のチワワのような私が頑張るには無理があった。
思った通り後日お決まりの頭痛が起きる。
やはり私にはパワーと付くものは無理なようだ。優しめのヨガで体調を整える。それが一番だと思った。


私って片頭痛だったの!?

アラフォーを迎えた私。
頭痛暗黒期の始まりである。
私の頭痛は頭全体が重く締め付けられるように痛む。
頭痛のきっかけも、身体に合わない寝具、人混みや様々な光や音など自分にとってストレスになることすべてが、引き金になってきた。
回数も徐々に増えていき、今まで使っていた市販の痛み止めはほとんど効かなくなってきた。

しかしこの時、私に転機がやって来る。
あるテレビ番組の頭痛特集で、片頭痛は必ずしも片側だけの痛みではなく、両方痛む場合もあり、片頭痛と緊張型頭痛が同時に起こる人もいるという。
そして今は片頭痛の特効薬も登場したという内容だった。

私はすぐに近くの内科に駆け込み、自分の症状を話した。
先生は「それなら普通の痛み止めは効かないでしょ。」と言って、特効薬を処方してくれた。
処方された片頭痛専用の薬の効き目は素晴らしく、服用すると嘘のように頭痛が消えた。
その病院にはしばらく通っていたが、院長先生が身体を壊されて病院の体制も変わってしまった。

私は転院をすることに決め、比較的近くにある評判の良い脳神経外科内科に通うことにする。その病院で初めて脳のMRI検査をしたのだが、幸い脳に異常は無し。
ここでも前回と同じ片頭痛専用の薬と痛み止めを処方してもらった。
ただこの病院は予約制ではなく、待ち時間が2時間を超す場合もありそれがまた頭痛のきっかけになった。
先生に不満はなかったが、お薬をもらうだけならばと近所のかかりつけ医で薬を処方してもらうことにした。

さて、その病院で偶然見かけた「睡眠時無呼吸症候群」のポスター。
さっそく私は、寝ていると喉が塞がる感じがすること、たまに自分のイビキで目が覚めることなどを先生に相談してみた。
私の説明が悪かったのか
「そんな風には見えないなぁ。」
と、あまり取り合ってもらえなかったが
後にそれは、私の運命を大きく変える一件となる。


怪しいものにすがる 若林さんと小木さん

お笑いタレントのオードリー若林さんも、重度の片頭痛持ちで、学生の頃から毎日のように痛み止めを服用していたらしい。
そんな若林さんだが、頭痛外来に通ってはいるものの、なかなか良くはならない。
そうするうち頭痛学会の本まで読みあさるようになり、新薬「エムガルティ」の情報を知るのだが、自分には治験の話が全く来ないので、悔しい思いをしたそうだ。

一向に良くなる気配がない病状に、次第に追い詰められていく若林さん。
そんなとき、行ってはいけない方向に行ってしまうのが人というものだ。

ある時は、頭の前で鈴を鳴らし頭痛を取り除く、怪しげな霊感商法。
またある時は、整体師に腰を揉まれながら、カウンセリング係が若林さんの『心を開く作業』をするという、これまた怪しげな場所に行ってしまい
「あんたは侍の霊が憑いているから治療を受け付けないよ!」
と好き放題言われたあげく、帰りに片頭痛に襲われるという、とんでもない経験をしたそうだ。

私もかつて腰を揉まれながら
「あなたの先祖はモンゴルの騎馬民族です。」
と、言われたことがある。

整体師らは中世ヨーロッパと戦国武将を出してきがちだが
これからはモンゴルも要注意だ。

あとで知ったことだが、おぎやはぎの小木さんも相当な片頭痛持ちで、治験に落ちたとぼやいていたことがある。
そんな小木さん、何をやっても良くならず、自分が猜疑心の強い性格だと分かっていながら、なかば投げやりになったのか、30分数万円もする霊媒師を訪ねたそうだ。

その結果は、
「頭痛は霊の仕業じゃない。」
「あなたには中世ヨーロッパの騎士が三人付いていて、とても強い。」
そう言われたらしい。

整体師と霊媒師の中世ヨーロッパ推しは、昭和の時代から続く常套句だ。
『癒し』というのは高額であればあるほど、疑った方がいいかもしれない。

さて話は若林さんに戻るが、
SNSで新薬エムガルティの注射が始まると知った時、深夜ラジオで当時の嬉しさを思い出しながら
「エムガルティーーー!」
と、若林さんが何度も絶叫していたのは2021年のこと。
エムガルティに救われた喜びから来るものだったが、実はその数年前、私には主治医からエムガルティの治験の打診があったのだ。


治験、まさか私が選ばれる⁈

片頭痛の回数が増えてきたため、私はかねてから関心があった頭痛外来のある病院に行くことに決めた。
こちらの病院でも、脳のMRIに異常はなかった。
薬は前と同じ片頭痛の薬に加え、痛み止めと予防薬として飲む薬も、順次試すことになった。

そんな中、先生から治験の打診があったのだ。次の予約日、診察が終わると別室で製薬会社の人が待っていた。
名刺には治験コーディネーターと記してあった。
製薬会社からの要望は、
月1回の注射と血液検査を1年間すること。
他にも色々と制約があったが、何人かに1人は偽薬(プラセボ効果を把握するため)を使うというのに少し引っかかった。
疑り深い私の性格では、これは本物?もしかして偽薬?そればかりが気になり、精神的に悪影響が出るかもしれないと思い治験は断った。

さてこのエムガルティという新薬は、この約3年後に登場する。
1ヶ月に1度の注射で片頭痛を起こさないようにすることができ、もし起こったとしても症状は軽くすむという
夢のような薬なのだが・・・


ついに新薬エムガルティが登場

脳波の検査をすることになった私。
結果は異常なしでホッとしたものの、頭痛は一向に改善せず、むしろ悪化していく。

私の片頭痛は、2021年には年間172日にまで達していた。
そんな中、待望の新薬
「エムガルティ」が登場。
ただ、この薬には大きな欠点があった。
3割負担でも1本約13,500円。
月に1本注射を打つのだが、初回のみ2本接種しなくてはいけないので、約27,000円もかかってしまうのだ。
以前治験の参加は断ったが、この頃にはもう背に腹は変えられない状況になっていて、迷うことなく接種を決めた。

重度の片頭痛持ちと知られる、若林さんや小木さんが絶賛していたあのエムガルティである。

「これで人生が変わるかもしれない!」

そんな期待もあった。
ところが、数ヶ月続けても私には何の効果も現れなかった。
その後、同じく片頭痛予防薬のアイモビーグという注射も勧められ挑戦してみるが、便秘の副作用が出ただけで効果は感じられず、予防注射は中止することにした。


もうひとつの治験と春のムラフェス

ある日、先生から一枚のプリントを手渡された。
これが2度目の治験(実験)の打診だ。
写真を見ると、薄っぺらなシールにスマートウォッチ的な装置が取り付けられていて、(かなりうろ覚え記憶の改竄あり)
これを胸に貼り付けていると、24時間私の生体情報を測定できるらしい。
「次の診察までにやってみるかどうか考えておいてください。」と、先生に言われた。

私がこのへんてこりんなシールを一定期間貼るだけで、片頭痛の研究が進み頭痛に悩む人々に光が射すかもしれない。
これは神が私に与えた使命に違いない。それならば答えは1択、お引き受けするのみである。

いやしかし、季節はもうすぐ春。

冒頭でも書いた通り、私には年に一度の祭りがある。
ほんの短い期間だけ訪れる春の「ムラムラ祭り」
いや、こんな言い方はもう古い。
フェスだ!春のムラムラフェスタ

「ムラフェス」だ!

春は生きとし生けるもの、全てがフェスなのだ。
そんな大事な時期にいくら使命とはいえ、こんなもの貼り付けて、血圧やら脈拍やらを24時間監視されるとなると、おちおち励んでいられないではないか。
というか、ひょっとしてこの実験は「セックスと片頭痛の関係を調べるためのもの」ではないのか?

とその時、私のドスケベセンサーが即座に作動。

脳裏に浮かんだのは、お互いこの装置を胸に貼り付けて睦み合う男女の姿だった。
まぬけなように見えて実に近未来的ではないか。


・・・・・


おいおい!落ち着け!

何を想像しているんだ!
これは生体情報の収集であり、私のデータは新薬の開発に繋がる貴重な情報になるかもしれないのだぞ。
医学の進歩のためだ。
何をためらう必要がある。
私は直ちに邪な気持ちを打ち消した。
しかし同時に、ある疑問が頭をよぎる。

「もしやこの装置、セックスとオナニーの識別もしてしまうのだろうか・・・」

夫とのセックス無し
オナニーありのアラフィフ

さて、これはどうしたものか。


男の股間は男の沽券

男の股間は男の沽券(こけん)
こう書くと、ついつい韻を踏んでラップをしてしまいそうだが冗談ではない。
時として、男の股間は男の沽券に関わる一大事につながるので厄介だ。

プライドが高くデリケートな彼の股間と沽券を気づかうあまり、不本意ではあるが、女は演技をしてしまう場合がある。

素敵なパートナーがいて、
まずまずの快楽を得られれば
そこそこの幸せを感じることはできるが、
まずまずで、そこそこが毎度となると
たまには登りつめてみたいと願うのが女心というものだ。
どちらにしろ相手がいて生じる性の問題は解決が困難だ。
その点オナニーなら一人でもできるし、誰に気を使うこともない。

それにオーガズムは身体に良い影響をいくつも与えてくれる。
骨盤底筋が自然とリズミカルに収縮するので、
定期的にオーガズムを得ていると、更年期からの尿漏れの悩みが軽くなることもあるらしい。
他にもオーガズム時に多く分泌される、オキシトシンやセロトニン、といった脳内ホルモンは「幸せホルモン」とも言われていて、男女問わず更年期の強い味方だ。

尿漏れ予防のために、ヨガマスターから小難しい膣トレを習うのもいいだろう。
年々進化する高級美容液を買いに走るのもいいだろう。
でも私はあえて自前の、天然オーガニックな幸せホルモンを選ぶとしよう。
気持ちよくて、少し若返った気分にもなれる。
私にはそれだけで十分すぎるアンチエイジングになりそうだ。

そんな訳で、私はセックスレス主婦の恥じらいと、目先のムラフェスを優先してしまい、今回も治験を断ってしまった。

追記:先日先生に過去の治験について尋ねると、「多分〇〇と共同でやった自律神経を調べるものでしょう。」とのことだった。
ホルター心電図検査に近いものかもしれない。
セックスとオナニー?
識別はできないかもしれないが、ある程度は分かる・・・のか?


思わぬところに原因と解決策が!

2022年、私の片頭痛はさらに増え、年間182日に達した。
ついに、一年の半分が頭痛の日になってしまったのだ。
痛くないのは薬が効いている時だけで、頭痛がない日でさえ、じんわりと後頭部に痛みの種が潜んでいる。
いつ片頭痛の発作が起きるのか怯える毎日だった。

2023年も、相変わらず頭痛に苦しむ日々は続いていた。
片頭痛といっても痛み方は人それぞれだ。
私の場合、痛みはいつも後頭部や肩のあたりから始まり、そこから頭全体へと広がっていく。

なぜいつも後頭部からなのだろう。

首や肩のこりだけでは説明できない何かが、
寝ている間に起きているのではないか。
そう考えた時、以前からずっと気になっていた
睡眠時無呼吸症候群のことが頭に浮かんだ。

私は試しに、鼻から息を吸って5秒息を止めてみる。

次は10秒。

思ったとおりだ。
後頭部にぐっと力が入る。
きっと私は眠っている間に無呼吸になっていて、そのたびに後頭部に余計な力がかかり、頭痛を引き起こしているのではないだろうか。

次の診察日、もしかしたら無呼吸かもしれない、と先生に相談してみると、「睡眠専門の先生もいらっしゃるので、一度診てもらいますか?」と言われ、早速診察してもらうことになった。

以前かかりつけの病院で無呼吸症候群の相談をしたものの、そんなふうには見えないとスルーされたが、専門の先生はひと通り問診したあと、私の顔や喉、舌の形や厚みなどを観察。
私の顎は小さく、舌が大きく厚みがあり喉が狭い、など指摘された。
全てが無呼吸になりやすい条件が揃っているそうだ。

2024年春に、私は頭の先から足の先まで電極に繋がれ一泊入院。
検査結果は、1時間に70回も浅い呼吸と無呼吸を繰り返していることが判明した。
睡眠時無呼吸症候群とは10秒以上の無呼吸が1時間に5回以上、または7時間の睡眠中に30回以上ある場合に診断されるそうなので、私の場合は重度に近いらしい。
無呼吸症候群用のマウスピースくらいでは対応できないそうで、シーパップを使用することになった。
シーパップとは寝ている間にマスクから空気を送り込み気道を広げる治療法だ。

それから私は毎夜、トップガンのトム・クルーズが演じていたパイロットのごとく、酸素マスクのようなものを装着して眠りについた。
なかなか慣れず寝返りも上手くできないので
1時間ほどで外してしまうのだが、慣れていくに従って頭痛の回数が減りはじめた。

皆が口々に絶賛する魔法の新薬でさえ効果が無かった私のしぶとい片頭痛は、思わぬところに原因と解決策があった!
シーパップに慣れてくれば、もっと片頭痛の回数も減ってくるのではと、やっと希望の光が見えてきたのだが・・・




やって来い!幸せホルモン

しかしこれでめでたしめでたしとはいかないのが人生。
気がつけば、あの「ムラフェス」がやって来ていないことに私ははたと気がついた。

枯れ具合も夫に追いつき、夫婦足並みを揃えることができたと喜ぶべきか、いや、そんなことで喜んではいられない。
なぜだか、しばらく忘れていたオナ禁をふと思い出した。

やっていないのだから禁欲もなにもあったものではないが、オーガズムが身体に良い効果をもたらすのは調査済みである。
ならば久々に試してみるかと思い立ったのがいけなかった。

ムラムラしていたわけでもないので、時間ばかりが過ぎ私は焦りはじめる。
これではいけない。ちゃんと調べたではないか。
オーガズムは身体に良い影響を与えてくれて、
幸せホルモンだって出してくれるんだぜっ!

いでよ!オキシトシン!


・・・・・


おいでやすセロトニン?


・・・・・


おこしやす~♡ドーパミン♡


最後は、はんなり舞妓はんになってみたがブランクが長すぎたせいか、我が夫だけでなく脳内ホルモンにまでそっぽを向かれてしまった。

何事も無理はいけない。
歩きすぎて足底筋膜炎になり、ウォーキングはやむなく中止。
続いて五十肩も到来し、ここ数年、運動という運動をしていない。
それに加えて年々増えていく片頭痛が、ごく普通の生活をする体力と筋力を私から奪っていたのだ。
オナニーの不発ほど悲しいことはないが諦めも肝心だ。
まずは身体を柔軟にすること。
ここから始めよう。


医学は進む。私は歩む

シーパップのおかげで片頭痛の回数はかなり減ったものの、相変わらず頭痛との付き合いは続いている。

もう少し長くマスクを装着することができていれば、頭痛の回数も少なくなるはずだが、無意識のうちに外してしまうので、これには打つ手がない。
そして毎夜、トップガンのトム・クルーズのような重装備のマスクでは、肌が荒れてしまうのも問題になってきた。もともと肌が薄く敏感なので、肌とマスクとの接触面がひどい場合だと、水ぶくれのようになってしまうのだ。

先生に相談して、鼻の部分だけを覆う小さなマスクに変更してもらうと、徐々に肌荒れも治ってきたのだが、残念なことに頭痛の回数が少し増えてしまった。
鼻の穴に入れるタイプのマスクもあるようだが、そのタイプは鼻が大きくなり、人によっては人相が変わる場合もあるらしいので、それは試していない。

トム・クルーズに戻るか、このまま鼻マスクでいるか悩ましいところだ。

シーパップの治療を始めたのが2024年の春。
2026年にはまた新しい治験の話があった。
今度はボツリヌス菌を首や肩、頭など三十か所以上に注射するというものだ。
美容の世界で使われるイメージが強かったので驚いたが、医療の現場では以前から様々な用途で使われているらしい。
治験コーディネーターに詳しく話を聞いてみたが、今回は怖さが先に立って治験は断った。

そしてまた新たに片頭痛予防薬も登場している。
エムガルティなどの注射ではなく「ナルティーク」という飲み薬だ。
ただし高額。3割負担で1錠約1,000円。
基本は1日おきに服用するものなので、1ヶ月に換算すると高額なエムガルティよりもさらに高くつく。
試しに数日分だけ処方してもらったが、まだ効果のほどは分からない。

私が頭痛に苦しみ始めた頃と比べれば、治療の選択肢は確実に増えている。
睡眠時無呼吸症候群の治療と合わせ、改善を目指し、めげずに付き合っていこうと思う。


オナ禁ふたたび

以前と比べて片頭痛の回数が減った私は、心に少し余裕が出てきた。
ならば二十数年前、私の脳みそを占領したあの疑問、そろそろ決着をつけてもいいだろう。

頭痛と性行為は、本当に関係があるのだろうか。

以前と違い、今はAIがある。
調べてみると、やはり性行為に伴う頭痛はあるらしい。
筋肉の緊張や血圧の変化など、いくつかの要因が関係するそうだ。
性的興奮が高まるにつれて、首や顎まわりに痛みが出たり、オーガズム時に頭痛が起こる場合もあるという。

無理のない姿勢、首や肩に負担をかけないように身体の声を聞くのも必要。
(パートナーがいる場合は、お互い気遣いも大切に♡)

二十数年かかって、ようやく「オナ禁」の謎が解けた。
あの頃は無数のエロサイトに阻まれたオナリサも、今ではAIやSNSに助けられる時代になった。
オナニーが今ではセルフプレジャーという洒落た言葉になっていたり、「iroha」のような大人の可愛らしいアイテムの存在も知れた。
ただの恥ずかしい好奇心ではなくて、自分の身体を知るための入り口だったのかもしれない。
これで私の「オナリサ」も報われた気がする。


旅の途中

片頭痛から始まった旅は各駅停車。
終点は見えそうで見えないけれど「持病」とうまく付き合って改善しながら旅を続けるのも悪くない。
「だって持病なんだもの。」

片頭痛に苦しむ時間が減った分、自分の身体に向き合う時間も増えた。
実際私は自分がオナニーもできないほど、身体が弱りきっていることに気づくことができた。

だからこそ、私の恥知らずな物語も、皆さんが何かを克服する手がかりのひとつになればいいと願っている。
体重、舌、爪、便などは自分でできるセルフチェック。
それに加えて、定期的なオナニーも自分の身体を知る大切なセルフチェック、セルフケア、アンチエイジングになりそうだ。
セックスから遠のいてしまった世代に届けたい。
届くように、「セルフプレジャー」と今時の表現はせず、私はあえて「オナニー」と表現することに決めた。

とはいえ、何でもかんでもオープンにすればいいとは思わない。
大人はほんの少し秘め事があった方がセクシーだから。

自分を慰めるで自慰。
いかにも哀れな気分になるではないか。
自分を愛して大切にする行為をなんと名付けよう。

慰めるな。

愛そう。

抱きしめよう。

生きること、健康であることは、自分の身体を知ることから始まる。
いくつになっても、自分を愛して大切にして幸せでいよう。


エピローグ オナ禁からオナ伝へ

汝、恥ずかしがることなかれ。

大いに自分を愛せよ。

愛を広める者を「愛の伝道師」と呼ぶならば、
私はこれからの人生「オナニーの伝道師」

「オナ伝」

となって生きていこうと決心した。
思えば「オナ禁」から始まり四半世紀の時を経て「オナ伝」になる日が来ようとは・・・。
目頭が熱くなるではないか。


などと、大げさに宣言したものの、
私はまだまだ多様性とは程遠い世界で生きている。
家族の手前、ノンフィクションでは角が立つ。
ならばこの物語は、

「新感覚ノンフィクションエッセイ」

と謳っておくとしよう。




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