一片のラブレター
小さなものに込められた気持ちに気づいたときに学んだお話。
ある程度歳を重ねると過去の出来事が
「あ~そういうことだったのか」と
回収できたような気分になることがあります。
そのときはわからなくても
あとで必ずわかるときがくるとわかっていたら
そのときわからないことは悪いことでもない。
でも残念ながらそのときは
そのときの気持ちで精いっぱいなことも本当。
だから未来からタイムマシンで遡って
過去の自分に「大丈夫だから、あとでわかる」と
耳元でささやいてあげたい。
今日はそんなお話です。
小学生のころによく一緒に遊んでいた女の子。
同じクラスだけど席は離れていて
背は自分よりも高い。
スラっとしていて髪の毛が長くて
クラスでも人気者。
名前はT子。
たまたま住んでいた団地が一緒だったので
団地内の公園で遊んでいると
知らない間にT子も遊びの輪に入ってくる。
子供の頃って人が遊んでいる輪に入るのが
得意なやつとそうでないやつがいるけど
T子は天才的にそれがうまかった。
「あそぼ~。入れて~」
T子がそう言って遊びに入ってきたことを
実は憶えていない。いつも知らない間に
T子が近くにいて、一緒に遊んでいた。
遊びはたいてい「高鬼」「泥ケー」。
走り回る遊びが多かったからいつも
軽い汗を額に滲ませていた。
遊んでいた仲間みんな
T子のことが好きだった。
遊んでいた仲間はやんちゃだけれど
T子にはなぜかみんな優しい。
そしてT子もまた優しくしてくれた。
ちょっと気が強すぎるのが玉に瑕。
ずっとこんな時間が続けばいいな~と
子供ながらに思いながら
夕方のチャイムが鳴ってみんな
帰宅していく時間が寂しかった。
そんなある日いつものように
みんなで遊んで解散しようとしたとき
T子が私の手に何かを握らせてくれた。
「帰ったら読んで」
少女らしい、でもどこか少し大人びた
表情のT子はなぜか恥ずかしそうに
目を伏せながら帰っていった。
どきどきじゃん?これ(@v@)
ど~すりゃいいんだ!?
手に持っているのは
授業中に短い言葉のやり取りをする
小さな紙切れ。
手を離せば風で飛んで行ってしまうくらい
小さなものだった。
どきどきを通り越して我慢できず
家に着く前に、だれも来ない
どこかの棟の一階のベランダ下に潜り込み
おそるおそる紙切れを開けた。
「あした学校終わったら○○まで来て」
どゎ~~~~~~!!!!
俺もしかしてシメられるんかな😖
やべっ。いたずらしたのばれたっけか。
スカートめくりいっぱいやったからそのことか。
いや給食のおかずにからし多めに入れたことか。
数々のT子へのいたずらが頭の中を駆け巡った(笑)
その仕返しか!?とも思えたが、今までのT子の
性格からしたら、そんなことはしないだろう。
たぶん(笑)。
それよりT子の字は初めて見た。
ノートの貸し借りもしたことなく、彼女の
字をまじまじと見ることはなかったから。
習字を習ってそうな、でもどこか丸文字で
親しみが感じられる字。
やばいわ。今夜は宿題できね~じゃん(笑)。
もしかして告白される?(>v<え~っ!
そんなこんなで
眠れそうにない目を無理やりつぶらせて
その日は眠りについた。
小さな紙切れが何を意味していたのか。
T子が何を伝えたかったのか。
もしそれがそのときわかっていたのなら
少なくとも今の私が手紙の大切さを
理解していることはなかったと思う。
T子がくれた紙切れにあった彼女の文字。
さりげなく書かれたたった16文字の字に
どれだけの考えや推測をめぐらし
彼女の心を想ったか。
翌日、学校は終わった。
T子から言われたとおり、○○の場所で
待っていた。
日が落ちていってまわりは次第に
薄暗くなっていく。遊んでいたやつらも
徐々に帰りだした。
T子はまだこない。
「なんかあったんかな…」
でもT子のことだ。明日いつものようにすっと
現れて、何気ない表情で遊びに来るだろう。
そう考えてその日は帰った。
なぜかわからないけどその日は
ぐっすり眠れた。その紙切れを枕の下に敷いて。
「明日学校で聞いてやろう」
もう少しで終わります(笑)
T子は待ち合わせ場所に来なかった。
ここで普通の大人なら
ドラマや映画をたくさんみて
いろんなストーリーを知っている大人なら
いろんな推測もできたでしょう。
さて、私はどうしたか。
次の日、学校へいったらすぐにT子を探した。
でもどこを探しても来ていなかった。
T子が仲の良い友達を探して聞こうとしたが、
「ん?だれだっけ、T子の仲いい友達って」
思い出せなかった。
そういや他の女友達とT子が遊んでいるところを
見たことがないことに気が付いた。
だっていつも俺らやんちゃ組と一緒だったから。
いつも一緒に遊んでいた他のやつにもT子のことを
聞いてみたが知らないという。
急に引っ越したかな~もしかして。
そんなやつ昔いたからなぁ。
おったおった、別れ言うのが寂しくって
みんなに引っ越し前日まで内緒にしといて
明日になったらもういませんって(笑)。
T子もそんなんだったんかな~(笑)
T子らしいな(笑)
そうだな(笑)
なぜかT子のことになるとみんな
マイナスの話をすることはなかった。
今思えばこそだが、T子は俺たちにとって
生粋のヒロインだったことは間違いない。
始業のチャイムがなった。
クラスの席について朝礼だ。
先生がいつもより神妙な面持ちで入ってくる。
「え~今日はみんなに話しておくことがあります」
ざわざわ・・・転校生か?(笑)
いつものおどけた俺たちのお決まりのセリフだ。
「昨日の夜・・・T子さんが亡くなりました」
目の前が白くなったと同時に耳がキーンとして
先生の声が遠くなった。
手には昨日もらった紙切れを握りしめたまんまだ。
「白血病でした。T子さんはずっと闘病していたけれど
みんなと同じ扱いをしてほしいとの願いから、
病気のことはみんなに隠していました。
先生はT子さんから言葉を預かっている。
病気を隠していてごめんなさい、と。
そしてみんな元気に次の学年に行ってね、と」
なんかそんな内容だったとかすかに覚えている。
よく考えたら鬼ごっことき息切らしてたっけ。
みんなが知らないところで胸を押さえてたっけ。
今思えばそれらしい仕草はいくつも思い返された。
いつも知らない間に一緒に遊んでいたT子が
今はもう、いない。
遊び仲間たちは一気に口数が減った。
でもその日、いつものようにいつもの場所で
みんなで遊んだ。いつか知らない間に
T子が入ってくることを想って。。
T子の葬儀はクラス全員で参列した。
泣く人もいたけれど、大半はみんな
T子と親しくないからたぶん
単純に死が悲しいのだろう。
でも私はなぜか涙が出なかった。
そして遊び仲間たちも同じだった。
これが一番不思議なことだった。
でも子供だったから
それがなぜかはわからなかった。
そして俺たちはその学年を卒業した。
T子がくれた紙切れはなんだったのだろう。
書かれた内容はただの「呼び出し」だ。
でも、
今まで過ごした遊んだ時間のこと
お互いが尊重しあえる関係だったこと
私に小さな紙切れを握らせれくれたこと
そしてそれをT子は誰にも言ってなかったこと
これらを考えたら
私を呼び出してT子が伝えたかった事は
おそらくだいたい想像できる
でもそれは今だから言えるわけであって
そのときはわからなかった。
わかりえなかった。
だからこそ小さな紙切れが重要になってくる。
紙切れの上の16文字たらずの表現
直筆の字
たった数秒で書ける文字数
筆圧や筆跡
消しゴムで消した跡
この紙をなぜ選んだのか
こんな折り方をなぜしているのか
紙に移った匂いはどうなのか
一気に書いたのか部分的に書いたのか
どこで書いたのか
何を想って書いたのか
書き直したのか素直に書けたのか
たった一片の紙切れなのに
いま、想像を巡らせればいくらでも
込められた?想いをあげることができる。
でもそのときは
精一杯なんだよ
この紙切れは何が言いたいんだって。
この紙切れが
一片のラブレターだったとわかったのは
葬儀の時にT子のお母さんと会った時だった。
いつもT子と遊んでくれてありがとう。
友達がとても少なかったT子だったけど
あなたやその他のお友達と遊んでいるときが
一番幸せだと毎日言っていたわ。
そしてあなたのことをたくさん話してた。
息を引き取る前にね、一言だけ託されたの。
それを伝えてもいいかしら?
どわ~っ、こんなこと言われても
俺こどもだぜ?!しかも小学生だよw。
(2週目の人生なら確実にこう言っていた)
てなことも言えず、はいとしか言えなかった。
T子のお母さんはゆっくり続けた。
待ち合わせの場所に行けなくてごめんなさい
こんなことなら直接書いときゃよかった
でももうわかるよね
大好きでした。なんでかな~
でもどうでもいいや。好きなんだから
こう言ったあと眠るように意識が落ちて
半日したあとに逝ってしまったらしい。
私はT子が思っていたことを初めて知った。
握りしめている紙切れには
とてつもない想いが込められていることに
心も身体も震えてしまった。
ただその震えが何を意味するのかは
まったくわからなかった。
でもいま。いまならそれがわかる。
どれだけの想いが込められていたか
痛いほどにわかってしまう。
それが大人であり
経験を積むことであり
人生の辛酸をなめることである。
私はT子から手紙の大切さを教えてもらった。
子供ながらにそのときは
手紙だけはしたためて書くようにしようと決めた。
そして宝物にしようときめたその小さな紙切れを
もう一度見たくて手をひらいたとき
どこからか一瞬の風が吹いて
それは飛んでいってしまった。
宝物なのに、大切なものなのに
追いたいとも探したいとも不思議と思わなかった。
T子が
「ほら~そんなに見るもんじゃないよ~!」って
パッと掴んでどっかに持っていったのだろう。
いま、T子の字はもう覚えていない。
でも思い出せばかすかに残る
握らされた一片のラブレターの感触だけが
この手に残っている。
あ~、終わるって言いながら長々と書いちまった。
書きながら涙とまんないよw
ようするに、手紙って
そんな想いを載せれるものだよということ。
LINEやメール、SNSなどもいいけれど
自分でいろんな想いを載せながら書いた手紙は
唯一無二のもの。
それを受け取った人は
文字と同時にたくさんの想いを受け取ります。
これは書かれた手紙でしか
やっぱりできないことだなぁと
T子が教えてくれた。
そう理解してはじめて
手紙って大切だよなぁって思えるようになりました。
いつごろからそう思えたかはもう
とっくの昔なんですけどね。
でもそのことを
👇の記事が思い出させてくれた。
ルカさんに感謝。ありがとう^^。
T子元気にしてるかなぁ。
またあの遊び場であそぼうな。
