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物語の続きをあなたと

「なあに?」
名前を呼ぶと、あなたが振り返った。
柔らかく、優しい笑顔。
僕はほっとして、あなたの肩にカーディガンを羽織らせた。
「ねえ…今日はいい天気だね。」
窓から見える景色は、ほんの少し春めいて見える。
あなたは窓の外を見て、嬉しそうに優しく微笑む。
「温かいね。」
窓から差し込む日差しを受けて、あなたが感想を言った。
僕は頷きながら、車椅子を押して窓から少し離れてベットの方へあなたを連れて行った。
「横になる?」
僕が聞くと、あなたは首を振った。
僕はあなたの膝に毛布をかける。日差しは春めいてきても、まだ空気は冷たいから。
「外に出たいな。」
ぽつり…とあなたは言った。
その言葉に僕は胸が締め付けられた。
出してあげたい。
こんなところにずっといたら、外に出たいのは当たり前だから。
それでも、今のあなたをここから外へ出してあげることは出来ない。
僕はあなたのベッドに座って、あなたと向かい合わせになる。
「ねえ…今日も聞く?」
僕が問いかけると、あなたは笑って頷いた。
僕はあなたに話して聞かせた。
僕の考えた物語を。
時間が来て、僕はあなたの側にいられなくなった。
「またね。」
僕が挨拶すると、あなたは笑って手を振ってくれた。寂しそうな顔はみせない。いつも笑顔で見送ってくれる。

僕は帰り道で、少し立ち止まって空を見上げた。
もう日差しは陰り、冬の寒さが体を通り過ぎていく。
「またね。」
あなたの声が耳にこだまする。
僕の物語は、何度話してもあなたには残らない。
僕は同じ話を繰り返す。
本当はその先なんて考えていないんだ。
ただ、あなたの顔が見たくて、あなたの声が聞きたくて。ただ、あなたに会いたいだけなんだ。
この日々がずっと続くといいのに。
僕の頬に温かいものが流れて、落ちた。

そうだ。
明日こそは物語の続きを話そう。
あなたはどんな顔をするだろう。
続きってわからなくても聞いてくれるかな。
僕は目を擦って、また上を向いた。
空からはひらひらと白いものが舞って、僕の髪に、頬に落ちた。
それはひんやりした感触を残して、すぐに溶けて消えた。

帰り道、僕は物語の続きを考えながら帰った。
また明日、あなたに会いに来るために。
この日々が続いていくように。

この短編はきのころネクストに応募しています。
きのころさん、note300日記念おめでとうございます。これからも、笑えて、楽しくて、やられたって思って、そして読んだ後に元気が出る作品を、書き続けていってください。
一読者としてきのころさんの作品を楽しみにしています。
いつもたくさんの笑いを、ありがとうございます。

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