’Orange’で始める、やさしい統計分析(3/)
第3章 データの種類と「型」を知る
データをツールに読み込ませたとき、最初に行う重要な作業が「このデータはどの型か?」を確認することです。コンピューターは、データの種類によって「計算できること」と「できないこと」を厳密に区別しているからです。
データは大きく分けて、「数値」と「カテゴリ」の2つに分類されます。
3.1 数値データ(Numeric)
量や大きさを表し、四則演算(足し算や平均など)ができるデータです。機械学習の世界では、さらに細かく2つに分けて考えることがあります。
3.1.1 離散変数(数えられる数)
1つ、2つと数えられる「飛び飛び」の数値です。
例:シュート成功数、試合数、家族の人数。
特徴:1.5回といった中間の値が存在しません。
3.1.2 連続変数(つながっている数)
目盛りをどこまでも細かくできる、途切れない数値です。
例:住宅価格(MEDV)、身長、体重、走行距離、勝率。
特徴:小数点以下の値が存在し、平均値を出すことに大きな意味があります。
3.2 カテゴリデータ(Categorical)
種類やグループを表し、そのままでは足し算や平均ができないデータです。
3.2.1 名義変数(区別するためのラベル)
単に名前がついているだけの状態です。
例:ポジション(PG, SG...)、出身地、チーム名、血液型。
ポイント:これらは「1位、2位」といった順番も持たない、純粋な分類です。
3.2.2 順序変数(順番に意味があるラベル)
数値ではないものの、強弱や良し悪しの「順序」には意味があるデータです。
例:満足度(高い・普通・低い)、リーグの階級(B1・B2・B3)、順位。
ポイント:計算はできませんが、「どちらが上か」という比較が可能です。
3.3 なぜ「型」を分ける必要があるのか?
Orangeなどのツールでは、読み込んだ瞬間に「これは数値」「これはカテゴリ」と自動判別されます。しかし、時には修正が必要です。
例:背番号や郵便番号 これらは「数字」で書かれていますが、足し算や平均を出すことに意味はありません。これらは「数値」ではなく「カテゴリ(名義変数)」として扱うのが正解です。
分析を始める前に、自分のデータが「計算していいものか(数値)」、それとも「グループ分けするものか(カテゴリ)」を正しく認識させることが、精度の高い分析への第一歩となります。
3.4 Orangeでの型の確認と変更
ツールにデータを読み込んだ際、各項目が意図した「型」として認識されているかを確認することは、分析の品質を担保する上で不可欠な工程です。
3.4.1 アイコンによる型の判別
「File」ウィジェットの画面では、各項目の左側にデータの性質を示す1文字のアイコンが表示されます。
「N」アイコン:数値型(Numeric)。平均、分散、相関などの統計計算の対象となります。
「C」アイコン:カテゴリ型(Categorical)。グループ分け、クロス集計、分類の基準として扱われます。
「T」アイコン:テキスト型(Text)。計算対象外の補足情報(選手名、備考など)として扱われます。
3.4.2 型の変更手順
Orangeによる自動判別が、分析の目的と合致しない場合があります。例えば、本来は計算に含めるべきではない「背番号」が「N(数値型)」と判定されている場合などは、手動で修正を行います。
「File」ウィジェットをダブルクリックして開く。
修正対象の項目(例:背番号)の 「type」列 をクリックする。
ドロップダウンメニューから、適切な型(numeric または categorical)を選択する。
画面下部の [Apply](適用) ボタンをクリックして変更を確定させる。

コーヒーブレイク:なぜ「尺度」の呼び方が少し違うのか?
ここまで読んで、「昔、統計学で習った『4つの尺度』と少し呼び方が違うな?」と気づいた方もいるかもしれません。実は、伝統的な統計ソフト(SPSSなど)と、現代の機械学習ツール(OrangeやPython)では、データを眺める「目的」が少しだけ異なります。
「数式の正しさ」か「計算の結果」か
伝統的な統計学(SPSS派)は、「このデータに対して平均を出していいか?」「この検定手法を使っても数学的に間違いではないか?」という数学的な厳密さを重んじます。だからこそ、細かく「尺度」を分ける必要がありました。
現代の機械学習(Python/Orange派)は、「どうすればコンピューターが効率よく計算し、精度の高い予測を出せるか?」という実利を重んじます。
魔法の変換「ダミー変数化」
その最たる例が、カテゴリデータの扱いです。 伝統的な統計学では「血液型(A, B, O...)」は計算不可能な「名義尺度」として大切に扱われますが、機械学習では「ダミー変数化(One-Hot Encoding)」という手法をよく使います。
これは「A型なら1、そうでなければ0」という風に、無理やり「0と1の数値」に変換してしまう手法です。こうすることで、本来計算できないはずのカテゴリを、コンピューターが計算できる「数値の土俵」に引きずり込むわけです。
背景を知れば、迷わない
「古い統計学」の知識が頭の片隅にある方は、むしろその「厳密さ」を大切にしてください。「背番号を平均しても意味がない」という直感は、データ分析において最も重要なセンサーです。
