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[SS] 球形のマシュマロ

球形のマシュマロを頬張る娘。
そんな娘を穏やかな気持ちで見る。

娘にとって、今日は待ちに待った日だ。
何千倍という抽選を潜り抜けて手に入れたプラチナチケット。
いや、ダイヤモンドチケットかも。

「楽しんでおいで。」
そう言って、あの人は仕事へ。
珍しくいつもより多くお小遣いをもらった。
悪いと思っているのだろうか?

私は、、、怖かった。
300年以上前の物体の復元。
世界初。
本当に大丈夫だよね?

娘は椅子に座って
体を固定するための棒を膝の上で押さえている。
私も同じ。

窓から見えるのは見物客。
こちらを珍しそうに見ている。
アイグラスで録画中・配信中なんだろうな。

スピーカーから声が響く。
「ゆっくりと動かして参ります。貴重な体験をお楽しみください!!」

「ねえねえ!!ママ!!動くって!!」
「そうね….。」
多分、だいぶひきつった笑い顔。

娘は余裕らしい。
下にずり落ちた靴下を直している。

落ち着いている所を見ると
やっぱりあの人の血が濃いのかなあ
なんて、思った。

ゆっくりと、動き始める。
外の景色が、人が下に流れていく。

最初はゆっくりと
そして徐々に上がっていくスピード。

体が椅子に押し付けられる。
これが重力。

心配して娘を見るが、明らかに楽しんでいる。
「ねえねえ!ママ体が引っ張られるよ!すごい!!!」
「うん….。」

どんどん早くなっていく。
外の人が飛ぶ様に流れる。
すごい力だ。
全く身動きが取れない。
相変わらず、娘はキャッキャ騒いでいる。

気持ち悪い・・・。
精一杯堪える。
堪える。
耐えるしかない。

ゆっくりと体にかかった力が抜けていく。
スピードが下がっている様だ。
そして、停止。

目を閉じると、ぐるぐる。
目が回る、吐きそう。

上の方でガコンと音、ロックが解除された様だ。
「はい、お疲れ様でした。」
開いたドアから、この観覧車のスタッフが顔を出した。

私はふらつく体を支えてもらって
ゴンドラと呼ばれるこの部屋の外に出た。
娘はスタッフの人とハイタッチ。

歩くことも出来ない。
フラフラしながらベンチに座る事が出来た。
「ママ....、大丈夫?」
「う、うん。大丈夫。でも、ちょっと休ませてね。」

娘は横に座った。
半分ほどになったマシュマロを食べている。

それにしても、地球に住んでいた頃の
私たちの先祖は何を考えていたんだろう。

ゴンドラと呼ばれる丸い部屋が10個。
円形のリングで固定されている。
その中に体を横向きに座り、椅子に固定される。

リングは高速で回転、ゴンドラは遠心力というもので
外向きに引っ張られる。
スピードが上がり、古き世界の重力とスピード
という二つの新鮮な体験が売りだ。

ゴンドラの側面には
ガラスで外が見える様に窓がついている。
とはいえ、そんな余裕1mmもなかった。

こんなものにカップルで、夫婦で?
中で、愛を語らうだって??

ご先祖様のワイルドさに
呆れると共に感動さえ覚える。

朝渡されたお金を思い出す。
あの人。
もしかして、知ってた?

帰ったら、問いただす。
拳を強く握る。

娘は上機嫌で、ベタベタになった口でこう言った。
「ねえ、ママ。今度はパパも連れてこようね。」

もう勘弁して….。


こちらの企画に参加させて頂きました。
ありがとうございます。

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