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[SS] 藤棚の下で。

土曜日の昼下がり。
まだ4月なのに、鋭い日差し。
28度。
もう日焼け止めが欠かせない。

自宅を出て、公園。
いつもの場所。

紫。
時折混ざる白、青。
太陽の光が反射して、キラリ。
そう言えば、昨日は雨だった。

真下にある木のベンチ。
お気に入りの場所。

都内には珍しい大きめの公園。
遊具、噴水、小さいがプールもある。
数年閉じたままのプール。

子供達の笑い声。
はしゃいでいる声。
うっすらと耳に。
目を細めると、走り回る子供が見えた。

エコバッグ。
小さめの水筒に詰めた麦茶。
バッグから取り出して脇に置いた。

「少しでも体を動かした方がいい。」
あの人が珍しく言った。

「じゃあ、一緒に散歩行きたいな。」
私も珍しく言った。

普段はお互いに言わない言葉。
たまたま、きっとたまたま。

スマホをテーブルに置いて、こっちを向いて
「そうだな、じゃあ行くか。」
あの人は、そう言って立ち上がった。

あの人は私の手を引いて
まっすぐ、ここに来たんだっけ。
そして、二人で並んで座った。

毎週土曜日、この時間。
二人の習慣になっていた。

暑すぎて無理な日
仕事で無理な日
体調の悪い日
そんな日もあった。

ベンチに座って
ぼーっと、ただぼーっと。
そんな時間。

あの人は何も言わず
私も何も言わず。

足元を見る。
サンダル。
これもお揃いで買ったんだっけ。

隣。
誰もいない。
私一人。

エコバッグ。
お気に入りのコップ。
これもお揃い。

二人分、麦茶を注ぐ。
変わらない味。
あの時と何も変わらない。

「なあ、藤の花の花言葉って知ってるかい?」
「え?知らない。」
「歓迎、優しさ。だってさ。」
「珍しいね。そんなの知ってるの。」
「調べたんだよ。」
「調べたの?」
「ああ。」
あの人はそう言って、麦茶を一口。

「あと、もう一つ。」
「ん?」
「なんでもないよ。」
「そう?」
あの人は笑っていたっけ。

麦茶を飲み終わった。
ゆっくりと立ち上がる。
あの日から随分経った。

花言葉、調べてびっくりしたなあ。
あの人が、ね。

私は変わってない、あの人はどうなんだろう。
同じだといいなあ。
きっと同じだと思うけど。

だって、ここに連れてきてくれたのは
あの人なんだから。


こちらの企画に参加させていただきました。
ありがとうございます。


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