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198.・滋賀県彦根市・国宝彦根城400年祭「ひこにゃん」騒動勃発

※注 この著作権noteは2004年からの事件を取り上げ、2005年、2006年と取り上げ続け、現在は2007年に突入。今後はさらに2008年から2020年~2022年に向けて膨大な作業を続けています。その理由は、すべての事件やトラブルは過去の事実、過去の判例を元に裁判が行われているからです。そのため、過去の事件と現在を同時進行しながら比較していただければ幸いでございます。時代はどんどんとネットの普及と同時に様変わりしていますが、著作権や肖像権、プライバシー権、個人情報なども基本的なことは変わらないまでも判例を元に少しずつ変化していることがわかります。
これらがnoteのクリエイターさんたちの何かしらの参考資料になればと願いつつまとめ続けているものです。また、同時に全国の都道府県、市町村の広報機関、各種関係団体、ボランティア、NPО団体等にお役に立つことも著作権協会の使命としてまとめ続けているものです。ぜひ、ご理解と応援をよろしくお願い申し上げます。
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1.滋賀県彦根市・国宝彦根城400年祭「ひこにゃん」騒動勃発

「ひこにゃん」って知ってる? 2008年月日に滋賀県彦根市の国宝・彦根城築城四〇〇年祭が最終日を迎え、観光客らが約2000人が手をつないで天守閣を囲むという開幕イベントが行なわれた。


彦根市役所 観光交流課 ひこにゃんブランド推進室より


彦根市役所 観光交流課 ひこにゃんブランド推進室より


国宝・彦根城四〇〇年祭キャラクター愛称「ひこにゃん」。井伊の赤備えのカブトをかぶった猫(彦根藩二代藩主井伊直孝公を手招きして、雷雨から救ったという招き猫)をモデルにしたもの。

愛称は、彦根や彦根城の「ひこ」と猫の鳴き声の「にゃん」をかけあわせて、「ひこにゃんとなる。

この主催事業は、国宝・彦根城築城四〇〇年祭実行委員会と彦根市企画振興部彦根城築城四〇〇年祭推進室が中心となり月日の終了後も来年3月迄延長するといわれている。

2008年3月から開催されていたこの四〇〇年祭は大成功を収め目標を上回る万人以上の入場者を迎えたという。

しかし 、「ひこにゃん」がこの大成功とは裏腹に、消え去る運命が待ちかまえていた。

2008年月日のこと。「ひこにゃん」を巡り、著作者の「もへろん」さんが、同市と同祭実行委員会に対し、同祭終了後のキャラクターの使用中止などを求めた民事調停が彦根簡裁で行なわれた。

市側は「法的根拠のない不当要求。調停に応じる意思は全くない!」と強気に調停を不調にするよう求める答弁書を提出。

調停には申し立て側の弁護士が同席し、市長と実行委員長が出席した。

申立書や弁護士によると、実行委員会のキャラクター使用承認が無制限、無秩序に行なわれ勝手な性格付けがされているなど、キャラクター公募の趣旨を離れ、原作者の著作権を侵害していると指摘。原作者の監修の機会を設けて、キャラクター使用のルールを作るように求めたものだった。しかし、弁護士でもあるという市長は自らが書き上げた答弁書を提出。

それによると、「キャラクターの一切の権利は実行委員会に帰属する 」と、応募したイベント企画会社と実行委員会が契約し、申立人とは全く契約関係がなく、申し立てには何ら法的根拠がないとしている、その上で市が商標登録の手続きをしたことや「ひこにゃん」という親しみやすい名称は実行委員会が選び、無料にしたことで使用が伸びて知名度がアップしたと主張していた。

次回の調停に関して弁護士でもある市長は、「答弁書に対する申し立て側の主張もあり、二回目の調停に応じる。その後は状況が変わらない限り、調停には応じない」としている。

なんてひどい、言い分なのだろうか? わたしはこのまま泥試合になることを恐れた。

弁護士だといったって、著作権のことを知らない人はたくさんいる、つまり知識や経験もない人も多い。このように公募作品、応募作品には、「当社に著作権は帰属します」と記載されているのを見かけるが、この表現はおかしなものだ。公募したものは自動的に著作権という権利が帰属していると考えてしまうこと事体、法律家としては失格だといえる。

著作権はたとえ帰属しようが、譲渡しようが、著作者人格権が残されている限り勝手に利用できるものではない。

では、著作者の「もへろんさん」はどう意見をいっているのだろう?

もへろんさんは、「ひこにゃん」が祭りのPR目的を超えて、次々と勝手に商品化され、営利目的で使用され、「お肉が好物で、特技はひこにゃんじゃんけん」などと設定されたことに対し、「作者が意図していない性格付けを黙認し、管理を放置している」と批判。

四〇〇年祭終了後の商標使用中止のほか、指定されたデザイン以外の使用承認取り消しや相当額の支払いを求めていた。四〇〇年祭は昨年の3月から月日までの日程で開催され、ぬいぐるみや絵本、シールなど多くの「ひこにゃん」グッズが販売されており、大人気となっているが、著作権や所有権を実行委員会が持ち、使用申請があればだれでも許可しているという。市は約1100件の「ひこにゃん」グッズを許可していた。

ちなみに「ひこにゃん」は特別住民登録して住民票まで交付していた。

この四〇〇年祭によって、「ひこにゃん」キャラクターによってまちはたしかに活性化してきた。連日、テレビやマスコミの取材攻勢の中でこの争いを強気で進めようとする市側と、キャラクターにも著作者にも人格があるととなえるもへろんさん。一体どうなるのだろう?

彦根市民も、「ひこにゃん」ファンもこの動向に静かにたたずんでいた。

滋賀県彦根市は招き猫の発祥の地と、いい伝えにちなんで白猫をモチーフとしていて、とても可愛らしい。

月日で使用許可が終了してしまうのか、市議会や地元商店街、業者側からも継続使用の声が上がってきた。

今や「ひこにゃん」グッズは携帯ストラップやタオルなど約種類のグッズとなり認知されてきた。土産ものの「ひこにゃん」まんじゅうも土産物としての売上は倍増している。

「ひこにゃん」は2005年月に100万円で公募されたもの。そして昨年3月には市が商標登録を申請、「ひこにゃん音頭」などの音楽CDの販売も承認。いつのまにか1000件以上の使用信性を受け付けた。

もへろんさんから見れば自分が創作した著作物の「ひこにゃん」が知らないあいだに、次々と商品化され、鋭利目的で勝手に販売されることにく心を痛めていたことだろう。彼はこんなことをコメント。

「祭りのPR目的を超えて、営利目的で利用され、募集要項に反する………適正なキャラクター管理を行なわなければ、粗悪品が販売されてしまう」と声を大にして叫んでいたが市側にはまったく届かない。

もし、東国原知事のようにキャラクターを乱発し、管理もしっかりとできず、不正表示や事件にでもなったらどうするのだろう?

インターネットの書き込みはひどいものが多くある。もへろんさんが悪い、甘い、金が欲しいんだろうなどと悪口まで出てしまっている。それにお金を請求することは悪いことではい。著作権は財産権でもあり、正当なものだ。

むしろ批判は市長に向けられるべきものといえる。

しかし、ある日「ひこにゃん」戦争が突然、和解成立というニュースが飛びかった。

平成年月日のこと。

この日第あ回調停が彦根簡易裁判所で開かれた。

この和解のポイントは市側が、もへろんさんの著作者人格権を認め、一定の監修機会を認め、キャラクターの不適切利用の防止などについては双方が協力して臨むことで合意した。今後は市が「ひこにゃん」の使用を許可した商品内容などを年1回の割り合いでもへろんさんに通知し、一定の監修機会を与え、市の商標権やもへろんさんの著作者人格権を侵害するような行為が見つかれば互いに報告し、対応を協議することになった。また、もへろんさんが絵本づくりなどの創作活動を自由に行なえることも確認した。

市長はこう語る。「年内に解決でき、うれしく思う。申立人には歩み寄りやすい提案をいただいた」。

もちろんもへろんさんは、使用中止と金銭の請求は取り下げた。

これでもへろんさんはお金目当てでないことが証明された。

これで「ひこにゃん」を愛する人たちにとっては朗報になったでしょう。


 20220401manyual.pdf (hikone.lg.jp)  ひこにゃんデザインマニアル


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ひこにゃん事件付録

小松法律特許事務所 判決紹介〔著作権法61条2項,キャラクター〕
ひこにゃん事件 判決年月日 平成23年3月31日 事件名 平成23年(ラ)第56号 仮処分申立却下決定に対する抗告申立事件
担当部 大阪高等裁判所第8民事部 掲載文献 判例時報2167号81頁(原決定も掲載)

【コメント】 ・ 本件は,全国的に著名な彦根市の人気キャラクター「ひこにゃん」に関し,彦根市が, 原作者(以下「Y1」といいます。)及び原作者が所属するデザイン会社(以下「Y2」 といいます。)を相手方として,類似キャラクターグッズ類の販売等差止めの仮処分を申 し立てた事件であり,新聞等でも取り上げられるなど,社会的に大きな注目を集めました。 ・ 本件で,400年祭委員会は,国宝・彦根城築城400年祭のキャラクターを公募し, 「ひこにゃん」のキャラクターに係る著作権を,第三者を介して,Y1から譲り受けまし たが,その際,譲渡対象は「キャラクターに関する所有権(著作権)等一切の権利」等と されていました。なお,著作権法27条及び28条の権利は明記(著作権法61条2項参 照)されていませんでした。そこで,Y1から提出された3点のイラストデザイン(「本 件各イラスト」)に描かれたキャラクターと実質的には同一のキャラクターに係るグッズ 類でありながら,立体化されていたり,ポーズが異なっていたりするものについて,その 著作権が彦根市とY1のいずれに帰属するのかが大きな争点となりました。 ・ この点について,本決定は,著作権法27条及び28条の権利以外の著作権が全て40 0年祭委員会に譲渡されていることを確認した上で,著作権法27条及び28条の権利に ついても,本件契約書ないし仕様書においてキャラクターの立体使用の予定が明記されて いること等から,「本件各イラストに基づいて立体物を作成することは,これが原著作物 の変形による二次的著作物の創作と評価されるものであったとしても,このようなことを なし得る権利(翻案権)は,本件契約により400年祭委員会に譲渡されたものと認める のが相当である。」と判断しました。 ・ 以上のとおり,本件は,地方公共団体によるキャラクターデザインイラストの公募によ る著作権譲渡契約において,著作権法61条2項の推定が適用され,その覆滅が認められ た事例として先例的意義があるものと考えられます。 ・ なお,本決定は,立体物以外のグッズ類に係る翻案権の帰属については判断を示してい ませんが,複製権に関し,最高裁昭和53年9月7日・民集32巻6号1145頁(ワン・ レイニー・ナイト・イン・トーキョー事件)を引用して「著作物の複製とは,既存の著作 物に依拠し,その内容及び形式を覚知させるに足りるものを再製することをいう」とした 上,相手方イラストは「本件各イラストに描かれたキャラクターと同一のキャラクターを 描いたものであることを容易に知り得るものである」として,彦根市が有する本件各イラ ストの複製権ないし翻案権 ......... を侵害すると判示していることからすれば,立体物以外のグッ ズ類については,複製の範囲内にあるものとして,あえて翻案権の帰属についてまで判断 を示さなかったものと考えることができます。 1 小松法律特許事務所 判決紹介〔著作権法61条2項,キャラクター〕 ・ この点,漫画のキャラクターに係る著作物の複製については,最高裁平成9年7月17 日・民集51巻6号2714頁(ポパイ・ネクタイ事件)においても,「漫画の特定の画 面に描かれた登場人物の絵と細部まで一致することを要するものではなく,その特徴から 当該登場人物を描いたものであることを知り得るものであれば足りる」とされているとこ ろであり,本決定の上記判断は,従来の判例の立場に沿うものであると考えられます。 ・ その他,本件では,仮処分に先立ってY1と彦根市等の間で成立した調停により,上記 当事者間の権利関係が変更を受けたかどうかも問題になりましたが,本決定は消極に解し, 彦根市による類似キャラクターグッズ類の販売等差止仮処分申立てを認容しました。 ・ なお,類似キャラクターグッズ販売会社をも相手にした本案訴訟が本決定以前に大阪 地裁に提起されていましたが(大阪地裁平成23年(ワ)第3904号),平成24年1 1月22日,和解にて終了しています。 (本件各イラスト) 【参考裁判例】 1 「複製」の意義に関するもの ・最高裁昭和53年9月7日・民集32巻6号1145頁(ワン・レイニー・ナイト・イ ン・トーキョー事件) ・最高裁平成9年7月17日・民集51巻6号2714頁(ポパイ・ネクタイ事件) 2 著作権法61条2項に関するもの <推定覆滅を認めたもの> ・知財高判平成18年8月31日・判時2022号144頁(アイセル事件) <推定覆滅を否定したもの> ・東京地判平成15年12月19日・判時1847号95頁(記念樹・音楽出版社事件) ・東京地判平成19年1月18日・裁判所HP(再分配とデモクラシーの政治経済学事件) ・東京地判平成18年12月27日・判タ1275号265頁(ヤマト事件) 【事案の概要】 本件は,仮処分申立てを却下した決定に対する即時抗告事件であるところ,普通地 方公共団体である抗告人が,主位的に,①抗告人は原決定別紙イラスト目録記載1な いし3の各イラスト(以下,併せて「本件各イラスト」という。)の著作権者であるが, 本件各イラストに類似するイラストを使用する相手方らの行為がその複製権ないし翻 2 小松法律特許事務所 判決紹介〔著作権法61条2項,キャラクター〕 案権を侵害する,予備的に,②本件各イラストは周知又は著名な抗告人の営業表示で あり,本件各イラストに類似するイラストを使用する相手方らの行為が不正競争防止 法2条1項1号又は2号所定の不正競争に該当するとして,相手方らに対し,主位的 に著作権法112条1項に基づき,予備的に不正競争防止法3条1項(同法2条1項 1号又は2号)に基づき,別紙差止請求イラスト目録記載のイラスト(以下「相手方 イラスト」という。)を使用した商品の製造,販売,頒布の差止めを求めるとともに, 相手方イラストを使用した原決定別紙差止請求商品目録(以下「商品目録」という。) 記載の商品の製造,販売,頒布の差止めを求める事案である。 抗告人は,原審では,主位的に不正競争防止法に基づく差止めを,予備的に調停(後 記本件調停)による合意に基づく差止めを求めていた。 原審は,抗告人の申立てをいずれも理由がないとして却下した。そこで抗告人は, 即時抗告をし,抗告審において,著作権に基づく差止めの仮処分申立てを追加し,こ れを主位的申立てとした。また,抗告人は,抗告審において申立ての趣旨を減縮して 求める仮処分の内容を限定するとともに,調停合意に基づく予備的申立てを取り下げ た。 【決定内容の概要】 ア 争点1-1(本件契約により譲渡された著作権の内容)について 「(イ)……前記のとおり,本件仕様書や本件契約書には,採用されたキャラクターに関す る著作権等一切の権利は400年祭委員会に帰属するものとされ,何らの限定も付さ れていないから,本件各イラストについての著作権全部(ただし,著作権法27条及 び28条に規定する権利は,同法61条2項により,別途検討を要する。)がY1から 400年祭委員会に譲渡され,更に抗告人に譲渡されたものというべきである。」 「(ウ) 著作権法61条2項は,「著作権を譲渡する契約において,第27条又は第28 条に規定する権利が譲渡の目的として特掲されていないときは,これらの権利は,譲 渡した者に留保されたものと推定する。」と規定する。これは,著作権の譲渡契約がな された場合に直ちに著作権全部の譲渡を意味すると解すると著作権者(譲渡人)の保 護に欠けるおそれがあることから,翻案権や二次的著作物の利用に関する原著作者の 権利等を譲渡する場合には,これを特に掲げて明確な契約を締結することを要求した ものであり,このような同法61条2項の趣旨からすれば,「特掲され」たというため には,譲渡の対象にこれらの権利が含まれる旨が契約書等に明記されることが必要で あり,契約書に,単に「著作権等一切の権利を譲渡する」というような包括的な記載 をするだけでは足りず,譲渡対象権利として,著作権法27条や28条の権利を具体 的に挙げることにより,当該権利が譲渡の対象となっていることを明記する必要があ るというべきである。 これを本件についてみると,本件契約書においても,本件仕様書においても,「著作 権等一切の権利は400年祭委員会に帰属する」旨を規定するのみで,翻案権等が譲 渡対象として具体的に明示されていない。したがって,著作権法61条2項の特掲が あったとはいえないから,翻案権は譲渡人に留保されたものと推定される。 しかし,本件契約書には,別紙として「仕様書」(本件仕様書と同じ。)が添付され, ジェイコムは上記仕様書に基づいてキャラクター等を作成し,納入しなければならな いものとされ,仕様書においては,「キャラクターは,着ぐるみ等を作成する場合もあ るので,立体的な使用も考慮すること。」「採用された・・・キャラクターは,400年 祭委員会および同委員会が許可した団体等のインターネットホームページや出版物, PR用ツール等に対して自由に使用する。」ことが定められていたものである。このよ 3 小松法律特許事務所 判決紹介〔著作権法61条2項,キャラクター〕 うに,本件契約書ないし本件仕様書では,「キャラクター」の立体使用の予定を明示し ているのであり,他方で,400年祭委員会の着ぐるみ等作成について相手方らない しジェイコムの承諾等を何ら要求しておらず,かえって,400年祭委員会が,立体使 用を予定している「キャラクター」を「自由に使用する」旨が定められている。この ような規定の内容に加えて,上記のとおり,本件各イラストが,彦根城築城400年 祭のイメージキャラクターとして,同祭で実施される各種行事や広報活動等に広く利 用されることを予定して400年祭委員会に採用されたものであることなどを総合勘 案すると,本件契約書においては,400年祭委員会が立体物については自由に作成・ 使用することができることが示されているといえる。 したがって,本件各イラストに基づいて立体物を作成することは,これが原著作物 の変形による二次的著作物の創作と評価されるものであったとしても,このようなこ とをなし得る権利(翻案権)は,本件契約により400年祭委員会に譲渡されたもの と認めるのが相当である。この限度で,著作法61条2項の推定を覆す事情があると いうことができる。」 イ 争点1-2(本件調停による抗告人の著作権の内容) 「(ア)以上のとおり,本件契約により,400年祭委員会は,本件各イラストの著作権を譲 り受けたものであり,抗告人は,400年祭委員会から同著作権を譲り受けたから,複 製権を専有する(著作権法21条)。相手方らは,400年祭委員会が使用できるのは 3種類の本件各イラストに限られていたと主張する。 しかし,複製とは,「印刷・・・ その他の方法により有形的に再製すること」をいう(著作権法2条1項15号)が, 再製というためには,著作物と細部まで完全に一致する必要はなく,実質的に同一で あれば足りるのであって,著作物の複製とは,既存の著作物に依拠し,その内容及び 形式を覚知させるに足りるものを再製することをいうのである(最高裁昭和53年9 月7日第一小法廷判決・民集32巻6号1145頁参照)。また,平面的なイラストを 基に立体物を作成することは,そこに新たな創作性が加わっているとみられる場合に は,単なる複製ではなく,著作物の「変形」となるが,本件各イラストについては, 着ぐるみその他の立体物を作成する権利も,著作者であるY1からジェイコムを経て 400年祭委員会に譲渡されたものと解すべきことは前示のとおりである。 したがって,本件調停条項の解釈に当たっても,本件調停の前に400年祭委員会 が本件各イラストについて上記のような権利を有していたことを前提とすべきであり, 抗告人らとY1との間で本件調停が成立したことにより,上記のような著作権の範囲, 特に相手方らの行為を禁止する権利の範囲に変更が加えられたのかが問題となる。」 「……以上のような本件調停成立に至る経緯と調停条項の定める内容からすれば,本件調 停条項は,その当時表面化し当事者が明白に対立していた本件キャラクターの適切管 理問題と,後述する本件キャラクターを用いた相手方らの絵本の問題につき最小限の 整理を行ったものであって,双方の従前の権利関係につき変更を加えることは意図さ れていなかったというべきである。」 ウ 争点2(相手方らの行為が複製ないし翻案に該当するか)について 「 抗告人が本件各イラストについての著作権(立体物を作成する範囲での翻案権を含 む。)を有することは,前記認定のとおりである。……相手方イラストは,上記列挙し た特徴の全部ないし多くを有し,その特徴から本件各イラストと同一のキャラクター を描いたものであることを容易に知り得るものである。したがって,相手方らが,相 手方イラストを用いた菓子,絵はがきその他の印刷物(絵本を除く。),文房具類その 他の商品を販売,頒布することは,抗告人の専有する本件各イラストの複製権ないし 翻案権を侵害する。」 以上
〔文責:秋山 侑平)

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