43.「手書きフォント」の無料ソフトを使ってビジネスとして宣伝に使う場合の注意点は?
タイプフェイスと著作権
質問51・「手書きフォント」の無料ソフトの紹介があり、個人使用にて無料で使えると書いてありますが、このフォントを個人使用ではなく営業用レターで利用した場合、著作権法違反で訴えられてしまうのでしょうか?
文字の著作権等の権利問題を考える場合、文字を次の三つに区分して考察する必要があります。
(1)「タイプフェイス」(Typeface)
タイプフェイスの定義は少しあいまいな部分がありますが、「記録や表示、印刷等の文字組に使用するため、統一的なコンセプトを基につくられた文字または記号等の一組のデザイン」といわれています。
和文のタイプフェイスの例では、どなたもご存じの「明朝体」「ゴシック体」「教科書体」等があり、一組の構成としては、「漢字」「仮名」「約物」「数字」など必要に応じて、アルファベット、記号類に加わります。
これらタイプフェイスを具体的な記録や表示、印刷等に利用できるようにしたものを「フォント」(Font)といい、最近ではあまり見受けられなくなった活字や文字盤の形態を、アナログ的に収容したものを「アナログフォント」と呼び、ドットやアウトライン等のデジタルデータに変換(光・磁気媒体等)し収容したものを「デジタルフォント」と呼んでいます。
(2)一組を構成しない各文字
これは一組を構成するタイプフェイスではなく、一文字一文字をデザインして作成した各種類の文字で、商店街のキャンペーン、タイトル用にデザインしたロゴタイプなどもこれにあてはまります。
(3)美術の著作物としての書
著作権法の定義にあてはまる「書」などは美術の著作物として保護されます。
このように、文字についての法的保護は「著作権法」「不正競争防止法」「意匠法」「商標法」に分かれています。しかし、タイプフェイスに関しては、現在のところ著作権法では過去の裁判例においても認められていません。
また、最近になって、デジタルフォント化したタイプフェイスは不正競争防止法の商品であることが認められており、無断で他人のタイプフェイスを複製・販売等をしてはならないという裁判例や、デジタルフォントの場合に関しては、プログラムの著作物であると主張、刑事告発された例もあります。
また、「アナログフォント」も「デジタルフォント」も著作権法の保護が受けられず、不正競争防止法だけにしか頼れないのではありません。
これは、どちらも著作権法の定義にあてはまっているかどうかがポイントであり、著作権法第二条一項一号「思想または感情を創作的に表現したものであって‥‥」の定義にあてはまる各フォントは著作権法で主張できます。
また、この著作権法の定義にあてはまらないタイプフェイスがなぜ保護されないのかといえば、美術の著作物に該当しない限り、万人共通の文化的所産である文字等について、一定または特定の人に独占させてしまい、著作権法の保護期間の死後五十年にわたる長き期間、まったく利用できなくなる恐れもあり、このために著作権の定義にあてはまらないフォントに関しては制限を設けているのです。
「デザインロゴ」の場合は、美術の著作物に該当しないものは同じように著作権では認められません。
そのため、デザインロゴの意匠権に基づく保護を求める場合には、「意匠登録出願」をおこなう必要があり、意匠登録が認められるためには、文字そのものでなく、文字が特定の物品意匠(デザイン)として利用され、文字が文字として模様化されたものでなければなりません。通常の文字は登録を認めていません。
また、デザインロゴを商品の名称に使用して商標登録出願をおこなうことができますが、登録商標は、デザインロゴを保護するのではなく、商標を保護するためのものです。
フォントの内容が不明瞭な部分が多いため、フォントの説明に終始してしまいましたが、ご質問の手書き文字風フォントの場合は、創作性のある文字なので著作権があります。
ただし、「お試し版フォント」の個人使用に関しては、無料で使えると表示してあるので自由に利用できるでしょう。しかし、営業用となると表示がありませんので必ず許可が必要と思われます。
また、その「お試し版フォント」のソフトなどを複写し、他人に配布することは著作権法違反になります。
「個人使用」と「他に利用」するとは、異なった意味が同居していることを忘れてはなりません。
著作権に関するトラブルの多くは著作権にあるのではなく、その著作物を取り扱うための約束事、つまり契約上の問題といわれています。
「たかが写真一枚」といえども、その写真の内容、評価によっては五万円、十万円、百万円という価値もつきます。
また、写真が美しく、プロの有名なカメラマンが撮影したものでなかったとしても、その内容においてはまったく変わりなく、誰も撮れなかった写真やめずらしい写真、ユニークな写真などの価値はプロと同等以上のものになる可能性もあります。
その「たかが写真一枚」ということで約束事がしっかりしていなかったため、出版で使用する約束をしてあったのに、他の出版方法で何度も再版されてしまったり、CD・ROMで利用されたり、ホームページ等に知らぬまに掲載されているというケースもあとをたちません。
これらすべての解決方法は、やはり契約にあります。
また、契約書なきものは、たとえ相手から譲渡された著作物であったとしても、何かあった時の保証、保全の役割を一切果たさないということに気をつけねばなりません。
また、これらの契約が不整備であるということは、最終的にお互いが損失をこうむることにつながる恐れもあります。
メニューが鮮明なカラーコピーであったり、美しい印刷物であれば美味しくみえるが、色が悪かったり、粗悪なものであれば、食品は美味しく見えず、注文されなくなってしまう宿命があります。
たとえ素晴らしいアイデアであっても、とても便利な発明品であっても、その説明のパンフレットやパッケージに努力を惜しめば、現実にはまったく売れないでしょう。
また、説明書や解説書をよく読めばわかるといっても、意味不明なものも多く、それでは読む気などまったく起こらないでしょう。
つまり、しっかりとした表現のないモノは、買う気、食べる気が起こらないのは誰もがわかっているはずなのに、自分が考えるアイデアや発明品には、「その気にさせる」表現が失われているものです。

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