「万年筆は、信頼のにおいがする」
銀行員になって最初に買ったのが、
1万円ちょっとの万年筆だった。
当時のぼくは、営業も数字も右も左もわからなくて、
それでも「何かだけは一丁前に持ちたかった」んだと思う。
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お客様の家で、ローンの説明をするとき。
書類を交わすとき。
利息や返済額をメモするとき。
カチッとキャップを外して、すうっとインクを走らせると、
それだけで少しだけ、自信が持てる気がした。
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やがて、字が少しずつ自分の形になってきて、
インクの減り方で、1日の重みがわかるようになってきた。
紙に滲んだ線は、
いつも真っ直ぐとは限らなかったけれど、
“そのときのぼく”を、ちゃんと記録してくれていた。
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