おてあげですね #アマノ文筆クラブ
揚げ物は食卓ではヒーローだが、台所では敵である。
食べる側にとっては、唐揚げやトンカツやエビフライは幸福の塊だ。立ち昇る香り、噛んだ瞬間のあの食感と美味さ。
だが、それを生み出す者は、多くの苦難と手間に向き合わされる。
小麦粉、卵、パン粉。指先は瞬く間に衣に封印され、自分が何を掴んでいるのか分からなくなる。食材より先に、自分の手がお手揚げ。
『ビニール手袋という文明は、素晴らしい』
次に待ち構えるのは高温の油という試練だ。油跳ねは容赦なく、鍋の前に立つ者は離れることも許されず、常に身構えることを要求される。
焦げるか生か。その境界を見極める緊張感は、料理というより精神鍛錬に近い。
『オイルスクリーンは盾であり、心の平穏を買うものである』
そして最後に残るのが、戦場跡のような台所だ。壁も床も、うっすらと油の記憶をまとい、ボウルや網には頑固な汚れが張り付く。
『洗い物は心を削る。食洗機が売れる理由に、誰も異議は唱えまいよ』
それでも、人はまた揚げ物を作る。揚げたての一口が、全てを正当化してしまうからだ。
大変だと分かっていても、自作、揚げたての美味しさには抗えない。そのどうしようもない魅力こそが、本当のおてあげ。
こちらを拝見し、インスピレーションが湧きました。
企画主催者様。

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