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スケッチブックの初恋【全9話】|vol.6|世界一不幸な私 ~涙と寝不足の朝

――本作品は、真由美(まゆ)と大輔が過ごした中学時代の、淡くて少し不器用な初恋を描いた全九話の記録です。


翌朝。

あの手紙を書いた人が、大輔じゃないなんて
どうしても思えなかった。

そう思いながら、
夜が明ける少し前まで起きていた記憶。

目が覚めると、涙と寝不足で
私は世界一不細工な顔に仕上がっていた。

お姉ちゃんにも同情された。

「マスクしなよ」

でも、マスクなんて普段しないから、
「どうしたの?」と騒がれるのも嫌だ。

あれこれ考えていたら、

「まゆー、学校に遅れるわよ」

お母さんにせかされて、
私は家を飛び出した。

学校のトイレで、
薬用リップと保湿剤を塗り、
とりあえず人前に出られる顔に整える。

教室に戻ると、
同じように疲れた顔の大輔と目が合った。

その瞬間、
私は世界一の女優みたいに笑顔をつくる。

「おはよー、大輔」

大輔は、

「おはよ」

と返してくれた。

でも、その声には
あまり元気がなかった。

「どうしたの?」

「最近さ、疲れちゃってさ。
 昨日なんか9時に寝ちゃったんだよ。
 聞きたい番組もあったのにさ」

――え。

昨日9時に寝た?

聞いてないの?

「最近さ、2年の先輩のしごきがすごくてさ。
 部活、もう大変で。
 すぐ寝ちゃうんだよ」

――え?

確かめていいの?

あのはがき、
大輔じゃないの?

違う人?

違う学校?

え?
え?

大輔、絶対聞いてたでしょ?

私はこの、
確かめようのない怒りを
どこにぶつければいいのだろう。

ふーちゃんには
ラジオの話は聞きにくいし、

くーちゃんは
ラジオに興味なさそうだし。

部活の時間になった。

私はこっそり
大輔を見に行った。

本当だ。

一年生は本当に
二年生にしごかれている。

――大輔、がんばれ。

バスケ部の部室で、
くーちゃんがニヤニヤしながら近づいてきた。

私はとっさに
スカートを押さえた。

「しないわよ 笑」

私は警戒する。

「あのね、ラジオのDく――」

そこまで言った瞬間、
私はくーちゃんの口を押さえ、
外へ引っ張り出した。

「何で知ってるのよ?
 くーちゃんラジオ聞かないでしょ?」

「うん、聞いてないよ」

「じゃあなんで?」

「まゆのお姉ちゃんに聞いた。
 まゆをサポートしてあげてって」

……あのやろー。

一番言っちゃいけない人に言ったな。

「で、何よ」

「あのね、教えてあげる」

「何よ!」

「ふーちゃん、彼氏できたんだよ」

「え?」

「男バスの健太くん。
 告白されてOKしたって」

「え?」

「狙っちゃいなよ、Dくん」

「やめて、Dくんって言うの」

「だいす――」

「もういいってば!」

くーちゃんは
ニヤニヤが止まらない。

本当にDくんが大輔で、
ふーちゃんが彼氏と付き合ったならいいんだけど。

どれもこれも
確証がない。

都会では見えなかった
夜空の星がきれいだった。

空に向かって、
私はつぶやいた。

「私、どうすればいいの?」

世界一の占い師さん。
どうか私に
進むべき道を教えてください。

そう祈ったあと、

帰ったらどうやって
あの怖い姉に仕返しをしようか。

そんなことを考えながら
私は家に帰った。


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