同級生・第二部 ーafter 15 yearsー|vol.1【全5話】|15年ぶりに、同級生に会った日
――この物語は、『同級生 -流れゆく季節の中で-』から十五年後の、かおりと正人の再会を描いた全五話の物語である。
朝、自宅で髪を整え、指先でルージュを軽く塗った。
今日は、お世話になっている取引先のマネジャー交代の挨拶に行く日。
やや強めの色を選んだのは、自然に背筋を伸ばすためだった。
東京の街路を歩くと、アスファルトに散った桜の花びらが目に入る。
桜も、そろそろ終わりだ。
春の光と風が、ほんの少しだけ気持ちを落ち着かせてくれる。
会社に着くと書類をまとめ、女性の部下と一緒に取引先へ向かった。
移動中、二人は軽く話す。
「今度のマネージャーさん、どんな人だろうね?
前の人みたいにすぐクレーム入れる人じゃないと
いいね」
「そうですよね。ご担当が言うには、経験者採用で
最近入社された方らしいです。
温厚な方って聞いてます」
「それなら良かったね。急ごうか」
「はい」
取引先に着くと、部下と一緒に会議室へ案内された。
扉が開き、男性と部下が入ってきた瞬間
――視界に、どこか懐かしい雰囲気が入り込む。
どこかで見たことがある。
そんな感覚。
胸の奥が、わずかにざわつく。
昔、告白されたあの人の面影を、
ふと重ねてしまったのだ。
名刺が差し出される。
顔を見た瞬間、思わず息を呑む。
「かお……じゃなくて、チーフさん?」
「正人くん?」
名刺交換の前に、お互い驚いた表情を浮かべた。
かおりは思わず、部下に向かって説明する。
「中学の同級生だったんです……びっくりしましたね」
正人も笑いながら、周りに言った。
「ホント、こんな偶然ある?25歳の時以来だよね。
田舎者二人がここで再会なんて」
二人の様子を見て、
お互いの部下たちもどこか安堵した顔になる。
名刺を交換し、軽く挨拶を交わす。
かおりの意識はあくまで仕事モードで、
昔の思い出には触れない。
正人もまた、昔の面影をどこかで確かめながら、
形式的に対応していた。
会議室を出るとき、二人は笑顔で送り合った。
かおりが帰社したとき、正人からメールが届いていた。
今日はご訪問ありがとうございました。
これからも弊社のご支援よろしくお願い申し上げます。
そのメールを見ながら、
かおりは思わず口角が上がった。
すぐに返信を書く。
本日は、ご多忙中にもかかわらずお時間をいただきありがとうございました。
今後とも弊社の製品をよろしくお願いいたします。
午後。
部下たちは給湯室でひそひそ盛り上がっていた。
「見ました? チーフ、あんな顔するんですね」
「いつもクールなのに、ニマッてるの初めて見たかも」
「やっぱり、25歳以来の再会ってすごいインパクトですね」
かおりはそんな様子を知らず、
デスクで静かに余韻に浸っていた。
その日の夜。
自宅に戻り、ドレッサーの前に座る。
ふと、朝使ったルージュに目が止まる。
指先で軽く触れながら、
かおりは静かに呟いた。
「正人……」
四月の風が、窓の隙間からやわらかく入ってくる。
25歳のときに別れたあの日から、
もう十五年。
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▶ 同級生シリーズ第一部 かおりと正人の青春編
マガジン|同級生 ─流れゆく季節の中で─
▶ 同級生シリーズ第二部 かおりと正人の再会編
マガジン|同級生 -after 15 years-
▶ 同級生シリーズ第三部 かおりと正人の黄昏編
マガジン|同級生(最終章) So Long
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