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定年の日に、名前を戻す

(つつみひろ|ひとりごと)
定年退職日の朝、机の上に置かれた名刺を見つめていた。その白い紙片を見つめていると、長い年月のあいだ自分を包んでいた「肩書き」という名の輪郭が、ゆっくりとほどけていくのが分かった。

これまでnoteでは「ひろ爺」という名で言葉を紡いできた。
その名は、少しだけ自分を組織や日常から遠ざけ、自由な場所から社会を見つめるための、やわらかな仮の姿だった。
けれど、同じ名を大切に使われている方々が多くいらっしゃることを知り、その温かな響きをそっと手放す時が来たのだと、静かに腑に落ちた。

何より、役割や肩書きを机に置いたこの季節に、本来の名前へと戻ることが、これからの歩みにいちばん自然な選択だと思っている。

筆名は変わるが、言葉の温度はこれまでと変わらない。
暮らしの隙間にふと立ち上がる気づきや、胸の奥でゆっくりと沈んでいく微細な揺らぎを、これからも丁寧に掬い上げていくつもりだ。

人生という長い階段の途中にある「踊り場」に立ち止まると、足元に思いがけない光が落ちていることがある。その光に触れたときに生まれる、言葉になる前の静かな物語。それらを、誰かに強く届けるためではなく、ただそこにあるものとして、これからの机の上に置いていきたい。

名前が変われば、文章もまた、わずかに色を変えていくはずだ。
その移ろいを、読んでくださる方々と静かに分かち合えたらと思う。

新しく始まる「つつみひろ」としての言葉を、これからもどうぞよろしくお願いいたします。



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