才能がないと落ち込んだ日々から漫画原作者へ。自分の「おもしろい」を翻訳して、読者に届ける――ぽんぽこ。さん
「自分には小説を書く才能がない」。そう落ち込んでいた日々から、憧れの漫画原作者への道を切り拓いた、「ぽんぽこ。」さん。きっかけは、創作大賞2023での文藝春秋コミック編集部賞の受賞でした。
受賞作『恋せよ社畜、三十路の黄昏マリアージュ』は、舞台やキャラクターを大きく変え、コミカライズ作品『銀狼殿下の専属薬師~冷酷な狼王子は私にしか懐かない~』として生まれ変わっています。
2026年5月18日には、待望の第1巻がリリースされたばかり。そんなぽんぽこ。さんに、創作大賞応募のきっかけから、未経験だった漫画原作への挑戦、そして応募者への熱いエールをうかがいました。
藁にもすがる思いで参加したnoteの勉強会が「原点」への扉だった
――さっそくですが、創作大賞2023に応募されたきっかけから教えてください。
ぽんぽこ。さん(以下、ぽんぽこ。) きっかけは、note主催の勉強会でした。当時の私は作家デビューを目指し、さまざまなコンテストに応募していたものの、なかなか結果が出ない状態だったんです。
もともと理系で、小説を学ぶこととは無縁の世界にいまして。「自分には才能がないんじゃないか」と落ち込んでいたところ、勉強会があると知り、藁にもすがる思いで参加しました。そこで創作大賞のチラシをいただいたことが、応募の決め手です。
――noteの勉強会では、なにか気づきなどはありましたか?
ぽんぽこ。 最前線で活躍されているプロの先生方が、物語の掴み方や魅力的なキャラクターのつくり方を無料で惜しみなく教えてくださるんです。noteは、なんて太っ腹なんだろうと。ほぼ毎回のように参加して、運営の方が顔を覚えてくださるほどでした。
そのなかで一番印象に残ったのが、どの先生方も「自分がなにを書きたいのか」という明確なビジョンを持っていらっしゃること。勉強会から帰る電車で、自分が本当に書きたいものってなんだろうと自問自答して……。そこで思い出したのが、自分の創作の原点でした。
私はもともと薬剤師なんですが、仕事がとても大変で、通勤時間に読む漫画やライトノベルが最高の癒しになっていました。だからこそ自分もいつかそういう作品を書いて、だれかに恩返しがしたいと思っていたんです。
――そこからなぜご自身の職業と同じ、薬剤師を主人公にした作品を書こうと思ったんですか?
ぽんぽこ。 世のなかに、意外と薬剤師が主人公の作品が少ない気がするなと。だったら自分で書いてみようと思いました。
医療ものって結構シリアスな作品も多いですよね。でもそれだけでなく、たのしくがんばっている薬剤師もいるというポジティブな面を伝え、読んだ方の気持ちが少しでも軽くなるような作品を届けたい。であれば、自分が働いていたときの大変さやたのしさ、現場ならではの空気感を活かして書こうと思いました。
「あえて未経験の漫画原作へ」飛び込んで見えた壁
――創作大賞には小説部門もありましたが、あえて漫画原作部門に応募されたのはなぜですか?
ぽんぽこ。 せっかく応募するならば、初めてのことに挑戦したいという気持ちが強かったからです。別業界からクリエイターの世界に飛び込んだ身として、自分がイメージした物語が、小説や本、漫画として世に出ていくこと自体にも、強い興味がありました。
とくに漫画は、漫画家さんや編集者さんによって、自分の想像を超えるまったく別のものに生まれ変わるおもしろさがあります。周囲の作家仲間からもそのすばらしさを聞いていたので、いつか自分の作品が漫画になったらという憧れもあり、思い切って飛び込みました。
――応募に向けて、作品を執筆するうえでとくに意識したことはありますか?
ぽんぽこ。 とにかく「おもしろさをどう伝えるか」に全神経を注ぎました。具体的に読者像を設定し、その方の目線に立って、『おもしろいか』『続きが気になるか』を意識。とくにコンテストでも重要になる冒頭の掴みを徹底的に考えました。
また、読者層をしっかりイメージするために、実際に本屋さんへ足を運びました。自分の作品に近いジャンルの棚にどんな方が足を止め、どの作品を手に取っているのかを観察してみたんです。
選考に携わる方々も、最終的にはどんな方に届けるのかという視点を意識されているはず。だからこそ、つねに受け手のイメージを具体的に持ちながら、執筆していました。
――そうした試行錯誤を重ねた末に創作大賞を受賞されましたが、受賞の連絡を受けたときのお気持ちはいかがでしたか?
ぽんぽこ。 いろんな方が言われていますが、最初は詐欺メールかと思ったんです(笑)。本当に実感したのは、文藝春秋さんとの打ち合わせで都内の本社を訪問したとき。本社ビルを見上げた瞬間、「あぁ、本当に受賞したんだな」と込み上げてきました。
――創作大賞の受賞後には、実際に漫画原作者としての制作がはじまったかと思います。ふだんぽんぽこ。さんが書かれているのはライトノベルだと思いますが、執筆の違いや苦労はありましたか?
ぽんぽこ。 初めての漫画原作ということで、まず参考になりそうな本を片っ端から購入し、とにかく漫画について勉強しました。

漫画家さんが開かれている勉強会にも参加して、基礎を学ばせていただきました。ふだんなにげなく読んでいる漫画には、視線誘導やコマ割り、キャラクターの向き、間のつかい方など、あらゆる技術が詰め込まれていると知って、改めて漫画という表現のすごさに感動しましたね。
一方で、それを意識した原作を自分がつくれるのかというプレッシャーも大きくなって。ふだんライトノベルを執筆するときは文字ですべてを表現しますが、シナリオ形式の漫画原作では、キャラクターに語らせすぎず、説明しすぎないことが重要です。
各シーンが漫画になったときの絵をイメージしながら書く。これはライトノベルとはかなり違う感覚で、最初はむずかしかったです。
――その不安やプレッシャーはどのように乗り越えられたのでしょう?
ぽんぽこ。 作画を担当してくださった百々凪柑奈先生から、キャラクターデザインやラフをいただいた瞬間、覚悟が決まりました。文字だけで考えていたものが、私の想像を遥かに超えて絵として動いている。
それを見たとき、不安が一気に吹き飛び、モチベーションが最高潮に達しました。いまの自分にできることを、全力でやるしかないと、思い直しましたね。
――受賞後、作品は舞台やキャラクターの大幅な改稿を経て、『銀狼殿下の専属薬師~冷酷な狼王子は私にしか懐かない~』として生まれ変わりましたね。
ぽんぽこ。 編集部の方々との最初の打ち合わせで、「よりレーベルのカラーに合わせ、ターゲットとなる読者層に受け入れていただける作品にブラッシュアップしていこう」という流れになりました。
受賞作や自分が書きたいものをベースにしつつ、どうすれば漫画としてもっと魅力的に届くのか、どんなキャラクターや関係性なら読者にたのしんでもらえるのかを、何度も考えました。
そして最終的に『銀狼殿下』という作品へと生まれ変わったんです。自分一人で考えていたときとは違い、編集者さんや漫画家さんの視点が入ることで、作品の見え方が大きく変わりましたし、自分では気づけなかった魅力を引き出していただいた感覚があります。
漫画の連載がはじまる前には、TALESやほかのサイトに原作小説を投稿してみました。読者からの反応をリアルタイムで確かめながらブラッシュアップしていく方法は、とても効果的だったと思います。
――大幅な改稿でなにか気づきなどありましたか?
ぽんぽこ。 改稿では、女性向けレーベルに合わせて恋愛色をぐっと強め、読者が好むようなキャラクター性をがっつりシナリオに組み込んでいきました。
たとえば、容姿端麗で立場もあるイケメンが、かわいそうな目に遭ってヤンデレ気味になっていく姿や、表面上はキラキラしているのに実は腹黒い王子など、私個人の好みも編集者さんがうまく引き出してくれたんです。自分が書きたい根底のテーマはブレさせず、見せ方の切り口をレーベルに合わせて最適化していきました。
その過程で、作品の核は守りながら、読者により届きやすく調整していくことの大切さを学びました。コミカライズは単なる文字から絵への変換ではなく、作品がもう一度、新たに生まれ変わるような感覚でした。本当に貴重な経験をさせていただいたと感謝しています。
体を動かしながら物語を練る。農家と漫画原作者の両立
――プライベートでは、薬剤師から農家のお仕事に変わったとのことですが、日々の時間管理やモチベーションの維持はどのようにされていますか?
ぽんぽこ。 実家が江戸時代から続く農家で、いまはトマトやナス、キュウリなどの夏野菜を中心に、里芋や米など幅広く育てています。日々、その実家の仕事をメインにしながら、執筆を続けています。
一見、農業と創作は無縁に思うかもしれませんが、実は相性がいいなと感じています。畑仕事で毎日体を動かしていますが、その間、頭のなかでは「この物語の展開、どうしようかな」と考えています。意外と執筆のことを考える時間としてうまく両立できているなと。
そしてなによりのモチベーションは、月に2回、自分の原作が漫画となってサイトに載ることです。自分が考えたキャラクターたちが動いているのを見るだけで、次の作業への活力が湧いてきます。
――今後のクリエイターとしての目標をお聞かせください。
ぽんぽこ。 今後の目標は、小説や漫画原作など、発表する形態や電子・Webといった媒体に縛られることなく、とにかくたくさんのたのしい物語を読者に届け続けることです。
私の根本にあるのは、あの忙しかった薬剤師時代に自分を救ってくれた、読者の気晴らしになるエンタメを描きたいという強い思い。そこをブレずに大切にしながら、これからも新しいジャンルにどんどん挑戦していきたいです。
――最後に創作大賞への応募を迷っている方や、何度も挑戦してくださっている方に向けて、エールをお願いします。
ぽんぽこ。 私はこれまで数多くの作品を書いて、応募しても箸にも棒にもかからなかった経験がたくさんあります。でも声を大にして伝えたいのは、「評価されなかったからといって、その作品がつまらないわけではない」ということ。
作者がおもしろいと思って書いたものならば、世界中に必ず同じように感じてくれる方がいるはず。あとは、その「おもしろい」をどう伝えるかだけの問題です。タイトル、あらすじ、冒頭、見せ場の作り方。入り口を少し変えるだけで、作品の印象が変わることもあります。大事なのは、自分が本当におもしろいと思うものを、読者に届くよう「翻訳」することです。
創作大賞は、かつて未経験で迷子だった私を見つけ出してくれた、大きなチャンスがある場所です。よく「事実は小説よりも奇なり」と言いますが、応募した先にどんな展開が待っているかは、本当にわかりません。みなさんの執筆人生が、思いがけない出会いや喜びに満ちた、ドラマティックなものになりますように。
――本日はありがとうございました。
受賞者プロフィール
ぽんぽこ。

埼玉県在住。昭和生まれ。
薬科大学を卒業後、病院薬剤師として勤務。
退職後は実家の農業に従事しながら、モフモフな動物たちに囲まれた日々を過ごす。その合間に始めた創作活動で、創作大賞を受賞し、プロデビューへ――。
note:https://note.com/ponpoko_lean
TALES:https://tales.note.com/ponpoko_lean
X:https://x.com/racoon_and_royd
ぽんぽこ。さんが原作を務めるコミカライズ作品『銀狼殿下の専属薬師~冷酷な狼王子は私にしか懐かない~』の単行本第1巻が、2026年5月18日に発売されました。本格ファンタジーを、ぜひ単行本でおたのしみください。
創作大賞2026について
あらゆるジャンルの作品を対象にした、日本最大級の創作コンテストです。各部門には、34のメディアが選考に参加。大賞受賞作品には担当者がつき、雑誌・メディアへの掲載や、書籍化、連載化、映像化などを目指します。2026年7月8日(水)まで、noteもしくはTALESでエントリーが可能です。
創作大賞のスケジュール

応募受付期間:2026年4月8日(水) 11:00 〜 7月8日(水) 23:59
読者応援期間:2026年4月8日(水) 11:00 〜 7月31日(金) 23:59
中間発表:2026年9月上旬
最終結果発表 & 授賞式:2026年11月上旬
