「求められるもの」と「書きたいもの」の重なりを探して。漫画原作が連載化、そしてコミカライズへ――優月アカネさん
創作大賞2023・漫画原作部門でPalcy賞を受賞した優月アカネさん。受賞作「こちら後宮、華の薬湯屋」は改稿を経て、『後宮湯屋の事件帖~死罪回避したい崖っぷち薬師には謎が舞い込む~』として2025年10月にPalcyで連載がスタート。その後、コミカライズ第1巻が、2026年2月27日に講談社から発売されました。
今回は優月さんとともに、担当編集者・安達南菜子さんにもご参加いただき、応募のきっかけやコミカライズへの道のりまで、じっくりお話をうかがいました。とくに創作大賞2026のエンタメ原作部門での受賞や書籍化を目指している方は、ぜひ参考にしてみてください!
求められるものを分析して仕上げた応募作
――さっそくですが、創作大賞を知ったきっかけから教えてください。
優月アカネさん(以下、優月) 2020年から執筆をはじめたのですが、コンテストで受賞することがデビューへの近道だと思っていて、いろいろなコンテストに応募していました。noteと「少年ジャンプ+(プラス)」のマンガ原作コンテストにも出していて、その流れで創作大賞2023を知ったのがきっかけです。
――優月さんは2021年に別のコンテストで受賞し、2022年に商業デビューをしていますよね。そのなかでなぜ創作大賞に応募しようと思ってくださったのでしょうか?
優月 またコンテストで受賞して、新しい作品を手掛けたいと思っていたんです。そのときに、ほかの投稿サイトでは、ランキングなどの数字が重視されるものも多くて。長年投稿をつづけている方も多いので、私のような投稿歴の浅いひとが受賞を狙うのは、なかなかむずかしいと感じていたんです。
その点、noteは小説投稿サイトというよりブログに近いイメージで、読者層も異なるのかなと。逆にそういう場所だったら、地盤がなくても受賞のチャンスがあるんじゃないかと直感して挑戦を決めました。
――優月さんはふだんから小説を書かれていると思いますが、創作大賞2023では、漫画原作部門にご応募いただきましたよね。なぜ小説でなく、漫画原作を選んだのでしょう?
優月 実は小説部門にも応募していました。漫画原作部門に2作品、小説部門に1作品、合計3作品です。
当時、漫画原作部門は3話まであれば応募できたので、最後まで書き切らなくても気軽に挑戦できると思って、複数出しましたね。
――応募にあたっては、どんな準備をしましたか?
優月 創作大賞2023は、協賛編集部をゲストに迎えて配信されていたXスペース「創作大賞RADIO」というものがあって、それを聴かせていただいていました。傾向と対策というわけではないんですけど、Palcyさんがどういう作品を求めているのかを把握して……。
それからPalcyのアプリを実際につかって、人気作品はどんなものか、逆に投稿作品が少ないジャンルはどこかを調べました。当時は後宮ものの作品があまりなかったので、これは後宮で勝負できるんじゃないかと判断したんです。
――受賞作の「こちら後宮、華の薬湯屋」に行き着いた流れを教えてください。
優月 「後宮もので行こう」と決めてからは、私は薬剤師だから薬草や薬関係の知識を入れよう。主人公はそのまま薬剤師にしよう。だったら異世界転移にしようと、自然とつながっていきました。
そこから、読者にたのしんでもらえる要素を考えました。主人公が女性なのに男性と間違われて後宮に入ってしまうハラハラした展開、イケメンキャラとのドキドキする場面、かわいいモフモフな生き物などを先にリストアップして、その点を物語でつなげていくような構成にしていった感じです。
というのも、創作大賞RADIOでPalcyの安達さんが確か「おもしろさを出し惜しみしないでください」とおっしゃっていたんです。その言葉を胸に、3話までに読者に興味を持ってもらえる要素を詰め込む気持ちで書きました。
――漫画原作では日常的に書かれている小説と書き方を変えるなど、意識したことはありますか?
優月 書き下ろしの小説の場合、最初から要素を詰め込みすぎないようにしています。あまり入れすぎると、読者の方々を置いてきぼりにしてしまうなと。終盤に向けて緩急をつけながら盛り上げていくイメージを心がけています。
一方で応募作の漫画原作は各話の末尾に「続きが気になる」仕掛けを設けて、3話でそれぞれのキャラクターの魅力と今後への期待感が伝わるように構成。推敲でも、むずかしい言葉よりわかりやすい言葉を徹底したり、擬音を多めに書いたり、読んだときにスッと入ってくるようにしました。
なるべく地の文を減らしながら、会話やセリフは多めにして。テンポ感を工夫したり、「主人公はいまどんな顔をしているのか」など、登場人物たちの動きが想像できる表現を優先したりしました。頭のなかの映像を言葉にしている感覚で、書いた感じですね。
初の中華後宮もので商業化へ。資料や本も本格的に読み込む
――受賞の知らせを受けたときのことを教えてください。
優月 しっかり作品を練って応募したものの、記念受験みたいな気持ちもどこかあったので、まさか受賞するとは思っていなかったんです。受賞の連絡が届いて……「え?私ですか本当に」という気持ちで、しばらくぼーっとしていました。
やっと実感が湧いたのは、安達さんとnoteの方々との顔合わせで商業化に向けて一緒にがんばりましょうというお話になったとき。プレッシャーとうれしさが一気に押し寄せてきました。
――安達さんから見て、優月さんの作品は、どんな点が印象的でしたか?
担当編集者の安達南菜子さん(以下、安達) 優月さんが漫画原作部門に応募してくださった2作品はどちらも拝読していて、両方ともひときわ光っていたんです。文章力の高さはもちろん、Palcyに向けた傾向と対策を考えて、読者についてきてもらおうという気概がとても感じられて。ガッツのある方というか、一緒にがんばってくださる方だという安心感もあって、ぜひお仕事したいと思いました。
最終的にどちらの作品を選ぶかは編集長と相談して、当時Palcyではファンタジー作品をもっとふやしていきたいという方針があったので、「こちら後宮、華の薬湯屋」を推すことになりました。
――顔合わせのあとは、どのように進んでいきましたか?
優月 連載をはじめるにあたって、応募作を改稿することになり、方向性を打ち合わせさせていただきました。応募作はどちらかというとラブコメの入ったお仕事ものとして書いていたのですが、謎解き系にしたらおもしろいんじゃないかとなって。
大枠が謎解き系になり、物語の大きな目標として「赤字の湯屋処を1年で黒字に立て直せなければ主人公は死罪になってしまう」という設定を加えました。そして、目の前に舞い込んでくる事件をひとつずつ解決していくスタイルに。そのなかで恋愛や、後宮のいじわるな妃嬪たちとのドラマも描いていくという、骨格が決まっていきました。
安達 後宮ものの売れ線を考えたときに、恋愛だけだと少しもったいないかなと感じていて。せっかく優月さんが薬剤師という大きな武器をお持ちだったので、それに絡めた事件を解決する流れにしたほうが読者へのフックが強くなるのではとご提案をしました。
ヒロインも、より強くてかっこよく引っ張っていけるキャラクターにして、話の組み立ても大きく変えていただきました。優月さんに本当にがんばっていただいたおかげで、いい作品に仕上がったと思います。
――改稿の過程で、とくに苦労されたことはありますか?
優月 私は恋愛を書くのがすごく苦手で、どうしてもドキドキ要素が足りなくなったり、男性の登場シーンが減ってしまったりするんです。そんななか、安達さんが「第1話で主人公とヒーローの絡みを入れてほしい」といった具体的なアドバイスをくださって。そういう出しどころとか、「これは入れたほうがいいと思います」のようなアドバイスをたくさんいただきました。

薬剤師の主人公が初めて皇子と出会うシーン(漫画:奈津むぎちゃ先生)
ミステリーや謎解きも、もともと私があまり読んできたジャンルではなかったので、見せ方の部分などですごく助けていただきながら、進めていった感じです。
安達 優月さんは漫画的な部分をよく理解されていて、私が思いつかないアイデアやセリフもたくさん考えてくださいました。私は漫画の読者がよろこびそうな視点だけをお伝えして。そこに優月さんが付け加えていってくださいましたね。
優月 あとは、中華後宮ものを書くのがはじめてだったので、世界観のつくり込みには苦労しました。中華後宮の資料や漢方、薬湯の本なんかも本格的に読み込んで、調べましたね。

――漫画連載と並行して、原作小説も優月さんのTALESアカウントで公開されていたと思うのですが、これはどのように決まったのでしょうか?
安達 連載と原作小説をほぼ同時にスタートさせて、連載を読んで気になってくださった方々が原作小説へと戻ってきてもらえるようにしたい、という話になったんです。そうやって一緒に盛り上げましょうという方針で。
優月 TALESには漫画原作用に書いたものをそのまま載せているんです。書き直そうかなとも思ったんですが、せっかく漫画原作部門で受賞させていただいた作品なので、このテキストがこういう漫画になっていますよというのをお見せしたほうがおもしろいと思って、あえてそのままにしています。
漫画原作への挑戦が小説の書き方を変えた
――受賞・連載化を経て、作家としての変化はありましたか?
優月 作業をしながら、漫画原作と小説って本当に違うなと感じました。その経験を別の小説に活かしたら、自分が書くものがよくなった気がして。作家として成長できたなという実感があります。
具体的には、絵として映えるシーンや展開、キャラクターの動き、個性が滲むセリフ回し。そのような一つひとつの濃さが漫画原作には必要だと気づいて。それってWeb小説にも通じるところがあるなと思ったんです。
Web小説でも派手な展開や引きのある展開が好まれると思っていて、そういう要素を意識して書いた作品がまた商業化につながりました。漫画原作的な描き方を小説に持ち込んだことで、より読んでもらえるようになったし、実際に商業化もさせていただけたので、すごくいい相乗効果が生まれたなと。
――優月さんの薬剤師としての知識は、作品づくりにどう活きていますか?
優月 デビュー作を書いたきっかけが「医療のおもしろさを伝えたい」という想いで、それがいまも作家としての軸なんです。作品を通じて薬学や医療の「こういうことがあってこうなるんだよ」というのを伝えたくて、入れ込めるならこれからも作品に入れたいと思っています。
――読者からの反応の変化は感じていますか?
優月 キャラクターへのコメントがすごくふえたなと思っています。以前はストーリーや展開への感想が多かったんですが、最近では「このキャラを応援したい」「ヒーローがポンコツすぎる(笑)」と、よくも悪くもキャラクターに注目してもらえるようになりました。
漫画原作に挑戦したおかげで、キャラクターのつくり方をすごく考えた時期があったのが活きているんだと思います。キャラクターを描くのが苦手だと自覚していたので、本当にうれしかったです。

受け取ったひとにどんな気持ちを残したいか
――今後チャレンジしてみたいことはありますか?
優月 小説ではバディ要素かSF要素を入れた医療ミステリーに挑戦してみたいと思っています。漫画原作では逆に、苦手意識のある恋愛を全面に押し出したベタベタの恋愛漫画でヒットを狙ってみたいという気持ちもあります(笑)。特定のジャンルに絞るというよりは、挑戦しつづけることをたのしんでいきたいですね。
――これから創作大賞に応募しようとしている方へ、とくに意識してほしいことを教えてください。
優月 やっぱり傾向と対策だと思います。受賞を目指すなら、各社がどういうものを求めているかを把握するのは外せないと思っていて。各社のコメントをよく読んで、自分なりに解釈する。そのうえで、自分の書きたいものと求められているものの円が重なる部分を探して、その重なりを押さえた作品をどうつくれるかを考える、ということがポイントじゃないかなと。
まったく方向性の違う作品を書くこと自体は悪いことではないんですが、受賞を目指すなら選考メディアの求めるものとのズレをなくす意識がやはり重要だと思います。
――エンタメ原作部門での受賞を目指す方へのアドバイスもいただけますか?
優月 当たり前と思われるかもしれませんが、漫画や映像にしたときにおもしろいかどうかを、意識することだと思います。実は私も、エンタメ原作部門に応募したいと考えていて、映像化もイメージしながら書いてみているところです。
たとえば連続ドラマみたいに1話単位でちゃんと起承転結があって、見せ場があるかどうか。そして最終的に、受け取ったひとにどんな気持ちになってほしいかという問いを持って取り組むといいと思います。
――本日はありがとうございました!
受賞者プロフィール
優月アカネ(ゆづきあかね)

小説家・漫画原作者。薬剤師として働く傍ら、2020年より小説執筆をスタート。創作大賞2023漫画原作部門≪Palcy賞≫、第1回「ストーリーな女たち」小説コンテスト≪最優秀賞≫など受賞歴多数。
代表作は『薬師と魔王』シリーズ(メディアワークス文庫)。準備中も含め、コミカライズ化が多数進行中。
note:https://note.com/emimarusan
TALES:https://tales.note.com/emimarusan
X:https://x.com/akaneyuzuk
創作大賞2026について
あらゆるジャンルの作品を対象にした、日本最大級の創作コンテストです。各部門には、34のメディアが選考に参加。大賞受賞作品には担当者がつき、雑誌・メディアへの掲載や、書籍化、連載化、映像化などを目指します。2026年7月8日(水)まで、noteもしくはTALESでエントリーが可能です。くわしくは、下記のスケジュールや特設サイトをご覧ください。
創作大賞のスケジュール

応募受付期間:2026年4月8日(水) 11:00 〜 7月8日(水) 23:59
読者応援期間:2026年4月8日(水) 11:00 〜 7月31日(金) 23:59
中間発表:2026年9月上旬
最終結果発表 & 授賞式:2026年11月上旬
