「誰かの役に立てば」という想いで書く。その積み重ねが広報、若手の育成、書籍化につながった
創作大賞2024のビジネス部門で入選した、宮脇啓輔さん。受賞作『「頭の回転が速い」を科学する』に改稿を重ね、書籍『できる人が大事にしている 複利で伸びる仕事術』がディスカヴァー・トゥエンティワンから出版されました。
サイバーエージェント出身で、現在は経営者として約50社のマーケティング支援をする宮脇さんは、経営や社員との1on1などで生まれた仕事観をnoteにつづってきました。今回は担当編集者の千葉正幸さんにもご同席いただき、応募までの経緯と、noteを書きながら進めた制作プロセスなどについて、うかがいました。
ハッシュタグを付けて応募したら、まさかの受賞
――もともと宮脇さんは創作大賞を意識していたわけではなかったとお聞きしましたが、応募に至った背景から教えてください。
宮脇啓輔さん(以下、宮脇) 最初は、経営している株式会社unnameの広報活動としてXを投稿することからのスタートでした。
転機となったのは2024年の3月頃です。社内にコンテンツ制作の担当者が入社したのをきっかけに、「いまはXで長文を投稿すると伸びやすいタイミングだから、月10本ぐらい投稿していこう」という話になりました。
ちょうどそのころ、6年ほど前にX(旧Twitter)で公開した「頭の回転が速い人の特徴」の投稿が、また伸びていたんです。それなら、いまの時代にあわせて書き直してみようとリライトしてXでポストしたところ、結構伸びて。「せっかくだからnoteでも投稿してみよう」となって、さらに内容をブラッシュアップして投稿したところ、そちらも想像以上に伸びていきました。
――そこからどうやって創作大賞にたどり着いたのでしょう?
宮脇 ちょうどnoteで別の投稿コンテストを見つけて、エントリーしてみようと考えていたんです。そのときに知り合いと連絡をしていたら、「創作大賞があるから、そっちにエントリーすればいいんじゃないですか」と言われて。そこではじめて賞の存在を知り、すでに公開していた記事にハッシュタグを付けてエントリーしました。
――その方が教えてくれなかったら、応募していなかった可能性が高いと。2024年って創作大賞でいうと、ビジネス部門が新しくできたタイミングですもんね。
宮脇 そうなんです。めちゃくちゃラッキーでした。やっぱり、エントリーのハードルが低かったのはすごくありがたかったですね。もしこれが、応募フォームに熱い想いを書かないと応募できない仕組みだったら、出していなかったと思います。
――受賞のお知らせを受けたときのことは覚えていますか?
宮脇 お恥ずかしいんですけど、受賞のご連絡を見逃していまして(笑)。noteのアカウントをかなり前につくった関係で、いまはつかっていないアドレスを登録したままにしていたんですよ。そうしたら再度ご連絡をいただいて、そこでやっと気づきました。
もちろんすごくうれしかったんですけど、正直どんな賞か全体像をよくわかっていなくて。軽い気持ちで表彰式に行ったら、めちゃくちゃガチな感じで驚きました。もう少しちゃんとして行けばよかった……と後悔したのを覚えています(笑)。
noteで読者の反応を見ながら進めた本づくり
――そこから、ディスカヴァー・トゥエンティワンの千葉さんとの書籍化の話が動きだすわけですね。最初の打ち合わせはどんな様子でしたか?
宮脇 最初に言われたのは「このnote記事1本だけでは書籍にならないので、どうしましょうか」ということでした。でも、受賞作以外にもいろんな広報コンテンツを出していたので、「ほかにも、こういうコンテンツが伸びています」とお伝えしたら、おもしろいですねと言っていただけて。
せっかく創作大賞をきっかけに本にするなら、noteで出す記事をまとめるとおもしろいかもという話になりました。その結果「とりあえずnoteに記事を書きまくって、1冊の本にまとめる」という方針になったと思います。
――千葉さんは、最初の打ち合わせでどんなことを考えていましたか?
担当編集の千葉さん(以下、千葉) 書籍化を考えたとき、まず気になったのが分量でした。ビジネス系の書籍の文字数はだいたい6〜10万字です。一方、ビジネス系の記事は数千字のものがほとんどなので、その1記事だけでは本にならないんですよね。
でも宮脇さんの場合は、受賞作を本の1パートとして、あとは同じぐらいのボリュームの記事を50本ほど集められれば、仕事術の本にできるなと。最初の打ち合わせでは、そうしたことをお伝えしたうえで、令和版の『入社1年目の教科書』(※)をつくりましょう、といったお話をさせていただきました。
※岩瀬大輔著(ダイヤモンド社、2011年刊)。15年読み継がれる仕事術書のロングセラー。
もうひとつ、書籍化を後押ししたのが時代の流れです。数年前から、SNSでバズったり話題になったりすることが書籍の売り上げに直結するという流れがより強くなっていました。宮脇さんも『「頭の回転が速い」を科学する』が話題になったら、Xやnoteでそれを展開させることでバズを広げていく、ということを意図的にされていて、おもしろいな、と思いました。人気のある記事を、PDCAを回して育てていくというか。
そういう方法ならば、本づくりと販売促進の両方で新しいことができそうだし、noteさんと組む意味も出せるんじゃないか、と考えていました。
書くことがないときは、社員との1on1、広報活動がヒントに
――最終的に、書籍には34本のコンテンツが収録されていますが、最初からネタが揃っていたんですか?
宮脇 いえ、書きながらリアルタイムで選んでいきました。noteが50〜60本ほどにふえてきたあたりで、これをどう本にしようかと考え、「3つの大きな切り口」をつくって、最終的に34の仕事のヒントに着地しましたね。本当に走りながらつくっていく進め方でした。
――書きながら進めていたということで、宮脇さんはいつ書き終わるかわからないといった不安はなかったですか?
宮脇 めちゃくちゃありました(笑)。でも、書籍を出すといったゴールはありつつ、noteを書いて出すこと自体は、会社の広報活動にもつながるという大義名分があったんですよね。そこだけでも意味があるし、その先に本があるからがんばって書こうと思いました。

――経営をしながらnoteを書いていくのは大変だったと思います。時間管理などもむずかしかったのではと思いますが、どうでしたか?
宮脇 経営もそうですが、去年の3月にはじめての子どもが生まれたタイミングだったので、子育てと並行していて、大変なところはありました。
結構、記事のテーマを考えるのがむずかしくて。もう書くことがないときには、社員と1on1をしながら、記事にしたほうがよさそうなものを、スマホでメモしていました。そうすれば、仕事でもメンバーの相談に乗れるし、本づくりにも活かせるなと思ったんです。
もともとnoteは、社員との1on1で若手メンバーがつまずくことに答えながら言語化し、それをnote化するプロセスでやっていました。書籍づくりでも、いろんなことをうまく活用しながら、進めていきましたね。
――それは書く側としては心強いですね。少なくとも特定のひとりには、そのnoteが必ず刺さることが見えている状態で書いていたんですね。
宮脇 そうですね。会社の広報活動やメンバーの1on1とシナジーのあるかたちで進められた点は、すごくよかったと思います。
かつ、noteで先に公開して、読者の反応を見ながら本づくりができたのもよかったです。
いきなり書籍として出版するとなると、めちゃくちゃがんばって書いたのに、あまり売れなかったらしんどいですよね。でも途中でnoteに出せれば、読者の反応を見ながら調整していける。それはすごく大きかったです。
――千葉さんは、noteで先に出すことに対して、社内で「本で初出しのほうがいいのでは」といった議論になりませんでしたか?
千葉 反対意見はほぼなく、そこまで初出しにもこだわらなかったですね。いまは「初出しの情報じゃないと価値がない」という考え方はあまりなくなってきているように思います。初めてかどうかよりも、読者がそのコンテンツと出会う場やタイミングをつくることのほうが大事だろうと。たとえば「noteで話題だから読んだ」「Xで流れてきたから見てみた」「ダイヤモンド・オンラインで読んだ」といったことが、読者と書籍の接点づくりという意味では効果があります。
書籍の内容がその記事1本だけだったら、「Webでもう読んだから、わざわざ本を買わなくていいや」となるかもしれません。でも書籍はその記事を入り口に、そこから展開される数万字の世界に没入していけますから、買って読む価値がある、といった認識ですね。
森を見ず、木を見ながらずっと書いていた
――『仕事術』は、昔から先人の書籍がたくさんある、いわゆるレッドオーシャンなジャンルですよね。そのなかで、今回の書籍の強みや差別化ポイントをどこに置いていますか?
千葉 まず、宮脇さんの視点がユニークなことです。私は職業柄、仕事術の本を何十冊も読んだりつくったりしているので、よくも悪くも「型」にはまってしまっている部分があります。でも、宮脇さんはそうではありませんでした。そのぶん、たとえば、たとえ話のつかい方だったり、エピソード内容だったりが、とても魅力的でおもしろかった。
宮脇 そうなんです。僕自身、あまりビジネス書を読まないので、企画会議のときに先にそうお伝えしていて。
だから自分の目線や、学んで感じたことでしか語れない。でもそのほうが、いまの20代にわかりやすく伝えられるんじゃないかと。AIが仕事のあり方を変えていったり、SNSで他人のキャリアが見えすぎて自分の軸がぶれて転職したくなったり、そういう20代をたくさん見ているなかで、超エリートではない自分が書くのは意味がありそうだなと思いました。なので、ベンチマークになる本を読み込むことは、あえてしませんでした。
――市場の全体像や先行事例は千葉さんが見ていて、宮脇さんは目の前の若手に刺さるかを考え続けていた、と。
宮脇 そうです。森を見ず、木を見ながらずっと書いていたイメージです。先にnoteやSNSで反応をもらえるので、おもしろいという反応があったら、「あまり読んだことがないものを書けたのかな」とか。
千葉 仕事術の本は確かに定番ですけど、宮脇さんが見ている読者イメージが新しいと思いました。新卒で入ったサイバーエージェントで見てこられた風景だったり、独立されてからunnameの若手スタッフとの1on1で聞いた話だったり。どれもリアルだし、そこから生まれてくる悩みはすごく新しいなと思ったんです。
「令和版 入社1年目の教科書」をつくりましょうと言ったのも、『入社1年目の教科書』がベストセラーになったのはもう15年ほど前で、その頃といまとでは、仕事観もかなり変わっていると思うんです。いまの時代にフィットした若手社会人向けの仕事術の席は、意外とまだ空いているんじゃないかと。
宮脇 あともう一点、新しさでいうと、サイバーエージェント出身の方の本があまりないよね、という話もありました。創業者の藤田晋さんの書籍はありますが、社員はあまりない。
でも、実は社内にめちゃくちゃ大事な仕事へのスタンスや考え方、名言は結構あるんですよね。それも取り入れていきたいと思いました。
「世の中の役に立つかも」が、次の1冊になる
――書籍化を経験して、宮脇さんの周りに変化はありましたか?
宮脇 いろいろあります。1つは、家族、とくに親がすごくよろこんでくれて、親孝行ができたなと。対外的には「本やnoteを読んだことがあります!」と言われることが多くなり、自分のことを知ってくれている方もふえた印象です。
あと、noteがきっかけでディスカヴァーさんを含めて4社からオファーをいただきました。2冊目の『一言で話せ。 仕事ができる人の1%会話術』(明日香出版社刊)は、5月14日に発売したばかりで、3冊目はいま企画が通った段階です。
『できる人が大事にしている 複利で伸びる仕事術』に関しても、海外の出版社からオファーがあり、外国語版の出版も決定しました。
――おめでとうございます!
宮脇 noteがきっかけです。出版社の方はかなりnoteを見ているんだなと感じました。ひとに認められるためにnoteを書いているわけではないですが、連絡をもらえるとやっぱり自信がつきます。価値があると認められた気がしますし、本になるのはうれしい。これからも自信を持って、出していこうという気持ちになれました。
――3冊目も決まっているとのことですが、今後こんな本を書きたいというテーマはありますか?
宮脇 正直、書きたい本はまったくなくて(笑)。noteも、noteを書きたいと思って書いているのではなく、周りのメンバーがどうやったら仕事がしやすくなるかと考えて、アウトプットする順番なんです。
結局は、世の中の役に立つ内容を出したい気持ちのほうが大きくて。「これを書いたら役に立つかも」と思うことがあれば、また書籍化を目指していきたいですね。
――最後にこれから創作大賞に応募する方へ、アドバイスをお願いします!
宮脇 やはり知っておいてほしいのは、過去のnoteもハッシュタグを付ければ応募できること。ゼロから書きはじめなくても、書いてきた記事を振り返って、ハッシュタグを付けるだけでエントリーできるんです。もちろん、応募要項は確認したうえでの応募になりますが。
もう少し長い目でみたアドバイスとしては、累積思考を溜めていくとよいと思っています。つまり、日々の仕事のなかで、ちゃんとアウトプットを残しておくかが大事。
いきなりたくさん書こうと思うと大変ですが、日頃からnoteで2000〜3000字ぐらいの記事を出しておけば、創作大賞がはじまったときも出しやすい。そういうふうに、うまくnoteを活用できたらいいのかなと思いました。
――本日はありがとうございました。
【受賞者プロフィール】
宮脇 啓輔(Keisuke Miyawaki)
株式会社unname 代表取締役/マーケティングコンサルタント/日経COMEMOキーオピニオンリーダー

1991年3月生まれ。滋賀出身、立教大学卒。
2014年、新卒で株式会社サイバーエージェント入社。社会人としてのスタンス、コミュニケーション力、基礎動作などのソフトスキルを習得し、Web広告運用コンサルタントとして月間1.5億円の運用実績をあげる。2017年、上場前のBASE株式会社に入社し、アプリマーケティングを担当。2018年、株式会社ペイミーにCMOとして参画し、BtoBマーケの立ち上げから、ビジネスチーム全体のマネジメントまで行う。2019年、株式会社unnameを創業。BtoB企業を中心に累計約50社のマーケティング支援を行う。現在は総合マーケティングカンパニーとして、支援業務以外に、研修事業、プロダクト事業などを展開している。
社内Slackで情報発信をしていたところ、「外に発信しないともったいない」と言われ、Xとnoteで20〜30代向けに発信を始める。その一つである“「頭の回転が速い」を科学する”がnote主催の創作大賞2024入選。本書が初の著作となる。
note:https://note.com/keisuke36
X:https://x.com/keisuke_unname
創作大賞2026について
あらゆるジャンルの作品を対象にした、日本最大級の創作コンテストです。各部門には、34のメディアが選考に参加。大賞受賞作品には担当者がつき、雑誌・メディアへの掲載や、書籍化、連載化、映像化などを目指します。2026年7月8日(水)まで、noteもしくはTALESでエントリーが可能です。くわしくは、下記のスケジュールや特設サイトをご覧ください。
創作大賞のスケジュール

応募受付期間:2026年4月8日(水) 11:00 〜 7月8日(水) 23:59
読者応援期間:2026年4月8日(水) 11:00 〜 7月31日(金) 23:59
中間発表:2026年9月上旬
最終結果発表 & 授賞式:2026年11月上旬
