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あやが付くこと 最後まで②

 一番電車に間に合う様に
 駅の駐車場に着いた。

 車を預けて出る時、管理人の方が
 「いってらっしゃい」と
 送り出して下さった。

 「行ってきます。
 よろしくお願いします」

 それだけで、
 旅の始まりは気分が上がる。

 切符を買って改札を抜ける。

 人影まばらなホームに、
 コオロギの鳴き声が反響している。
 蝉時雨と共に、
 夏と秋がここに共存していて、

 「ピーンッ ポーンッ」

 間延びしたチャイムの後で、
 トイレの所在を知らせる
 アナウンスが
 ゆっくりリピートしている。

 ホームに立てたから、ひとまず、
 この旅は成立である。

 そもそもこの時点で、
 リタイア予想こそがおかしい。

 まぁ、まぁまぁ、ぼちぼち行こう。

 4両編成の下り列車に乗り、
 2人掛けのシートにはまる。

 座るというより、はめこむ。
 
 太ったお尻周りを、こんなことで
 実感させられるのは、嫌だな。

 私ばかりではないのだけれど。

 私のせいだと言いたげな目をして、
 夫が見る。

 そんなどうでもいいことを
 モヤッとしつつも、電車は定刻通り
 最初の乗換駅に到着。

 朝食を調達せねば!と
 駅を出て、至近のコンビニへ歩く。

 ちょっと離れてたなぁ…

 杖を突きながら歩くのは、
 なかなかの疲労度なのだ。

 それでも、 
 目新しいことが人参の様に、
 私の目前にぶら下がっている時は、
 歩けるのである。

リバティ
リバティのロゴ

 東武鉄道のリバティ。
 夏に湯西川温泉に来た時、
 夫が入場券を買って、
 見せてくれたのがこの車両だった。

 当時はまだ、
 デビュー間もない頃だったのかな?
 カッコイイ…けど、
 まぁ、興味は示しても、
 恐らく乗る機会はないかもな。
 …って思ってた。

 何年越しだろうか。
 もう忘れたわ。 

 旅の決定権が、
 私に巡って来たことはない。

 俺がどうしても行きたいと、
 思う所だけ。

 時刻表を「あ〜見えねぇ!」と
 文句言いながら調べ、
 行程を全部決めた後で、行くぞ!
 になる。

 思い起こせば…

 気が揉めて一番ヒヤヒヤした、
 あの一件。

 3年前の金沢の時。
 私の旧友が居て、高校卒業以来の
 再会を果たしたが、
 彼女のコロナがやっと落ち着いて、
 会えると言ってくれた所だった。
 
 にわかに会いたいと言われたって、
 年賀状一枚で、
 繋がっているだけの様な薄い縁。

 普通は体よく「忙しくてごめんね」と
 断られてもおかしくないのに、
 快諾してくれた彼女の、
 変わらない優しさに感謝した。

 それだけに、私は会いたかった。
 
 その頃、台風の動向が気になり、
 夫はギリギリまで、
 出発を決めかねていた。

 それは気にして当然だけど、
 そもそも、
 「その友達に会えば良い。連絡取れ」 
 と言ったのは夫の方で、
 私からではなかった。

 それを仮に私が、
 彼女と何もコンタクトを
 取らなかったとしても、
 不機嫌になられる。

 地雷だらけじゃないか…

 いつもそうやって、
 天国と地獄のシーソーが
 用意されて、翻弄を食らう。

 会いたいと言ったところで、
 容易に叶わないのは、
 重々承知していたから、
 端から諦めていたのが本音。 

 期待すれば、8割方ポシャって来た
 その実績は、呆れを通り越して、
 お見事の域に達している。

 私は足も達者じゃないし、
 脳内バーチャル旅だけで、十分。

 お一人の旅なら、
 ご自由にお出掛け下され。と、
 毎度思うのである。

 長い話になったが、
 冒頭のボヤきの所以はそこにある。

 ただ、約束した以上は、
 相手があることだけに、
 そんないつもの気まぐれで、
 取り止められたら、薄い縁が完全に
 お陀仏。取り返しが付かない。

 逆の立場ならば、それこそ、
 いい加減にして欲しい傍迷惑な
 匂わせで、完全なるやらかしだ。

 うやむやにされそうな、
 そんな焦れる時間の長さに、
 ストレスを募らせながら、
 私は彼女にどう謝罪しようかと
 その言葉だけを思案していた。

 それで、出発確定したのが2日前。
 ふぅ、やれやれ。

 北陸新幹線に乗って金沢駅に到着。
 無事にホテルで、
 再会ミッションを果たせて、
 一安心したところで、やっと、
 本来の旅の醍醐味に
 浸ることが出来た。

 酔いつぶれた夫が眠っている間、
 部屋を出て、
 駅ビルに息子と出掛けて、
 夜の散策をしたことの方が、
 実は楽しかった。

 私を思って動いてくれているのは、
 良く分かるが、従わせが重い。
 
 夫は人の心を読むのが苦手で、
 不器用だ。

 長いエピソードになってしまった

🚅🚅🚅

 話を今回の旅へ戻そう

 …ふぅ、着席。
 
 車内で食べようと持ち込んだ。
 おにぎりとカップデリ。 
 薬を忘れずに飲んで終わり。
 
 息子も前日から出掛けていて、
 LINEでお互いの行程を
 知らせ合っていた。

 今回は目的地の地方で、
 前日はレベル4の豪雨が
 降ったばかりで、自分達の地域も、 
 そうなったばかりなのに 
 「行く支度をして」という夫。

 そう言うからには、
 大丈夫なのでしょうな…

 用心深い割に、
 大胆な判断をするので、
 たまにヒヤヒヤする。

 とはいえ、向かっているのだから、
 ダメならそこで引き返してくれば、
 良いだけのことだと、
 自分に言い聞かせておく。 

 夫の独特なクセツヨ文字が、
 手帳にびっしり並んでいる。

 用意周到なのは、相変わらず。

 あとは幹事(夫)に任せた。

 リバティの車内は、
 座り心地の良い
 織地も綺麗なシートと
 間接照明が使われいるからか、
 移動中に眠るにも快適だった。

 途中で会津方面と日光鬼怒川方面で
 連結が切り離される。

 田園風景と山間の清流に、
 目を和ませていたら、
 突然窓に雨が打ち付けて、
 辺りは暗く、斜めに流れて広がる。

 予報通りのお天気。
 やっぱり、土砂降りなのか〜。

 途中、雨あしが弱まったが、
 標高がじわじわ上がるから、 
 辺りの山々から、雲の様に
 真っ白なもやが立ち登っている。

 会津田島駅を降りて、
 会津鉄道に乗り換える。

 改札を出て線路を渡る時も、
 女性職員さんがビニール傘を
 差し掛けて手渡してくれて、
 足元に気を付けながら、
 ホームに着く。

 待っていたのは赤い電車。

トレードマークの赤べこ

 会津鉄道は随分前に訪ねた
 裏磐梯の休暇村へ旅した時に
 使った以来で、
 懐かしい再会だった。

 ➂へ続く


 

  

 
 
 

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