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第5話: 「まだ言葉にならないもの」〜光と影のあいだで 〜

その夜、
私は“何かを手放した”はずでした。

まだ言葉にならない、
新しい心のかたちのように

その夜、私は窓辺に立ったまま、
しばらく動けませんでした。

部屋は静かで、
時折、遠くの車の音だけがかすかに
聞こえてきます。

風は、いつのまにか止んでいました。

窓の外は、
夜の色にゆっくりと着替えています。

胸の奥は、
不思議なくらい落ち着いていました。

軽いわけでも、
重たいわけでもない。

ただ、
深く息を吸ったあとに残る、
やわらかな余韻のような感覚。

光も、
影も、

どちらも消えていないのに、
争ってもいない。

ただ、

同じ場所で静かに息をしている。

私は小さく息を吐きました。

シーの尻尾が、
小さく、くるりと揺れます。

葉の色が、
いつもより少し深く見えました。

やわらかな光の奥に、
静かな緑が溶け込んでいます。

ふたつはひとつの葉の中で、
ゆるやかに呼吸しているようでした。

私はそっと窓枠に触れました。

ひんやりとした冷たさが、
指先から静かに伝わってきます。

その冷たさがあるからこそ、
胸の奥に残る温かさが、
はっきりと浮かび上がるようでした。

嬉しかったことも。
悔しかったことも。

どちらも消えていません。

けれど今は、
どちらかを押し出す必要もないと、
自然に思えました。

そのとき

シーの葉が、
ほんのわずかに深く脈打ちます。

葉の根元に、
ごく小さなふくらみがありました。

気のせいかもしれません。

けれど私は、
目を離すことができませんでした。

胸の奥の揺れと、
同じリズムで、
そこに小さな気配が宿っています。

それはまだ、
名前のないまま。

けれど

それは、
ただ消えてしまう揺れではないと、
なぜか、胸の奥でわかっていました。

それは、

終わりではなく

はじまりでした。

その夜、

シーの葉が、
ほんのわずかに光を帯びた気がしました。

それは、
誰にも気づかれないほど
静かなはじまりでした。

🌙 この物語について

ココロリーフは、
大人のための心のファンタジーです。

無理をしてしまう日も、
言葉を飲み込んでしまう夜も、
すべてが心の揺れ。

その揺れに触れたとき、
精霊は姿を持ちます。

光だけでなく、
影も抱きながら。

🌙 次回予告

静かに重なった光と影は、
そのまま消えることはありませんでした。

夜が明けるころ、
私は小さな変化に気づきます。

それは、
揺れが形を持ちはじめる瞬間。

まだ声もなく、
まだ名前もない、

けれど確かに、
そこに芽生えた“新しい存在”。

🌱 第6話
「はじまりの芽」

まもなく更新予定です。

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