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ココロリーフの物語|#3 ポケットの中に残っているもの


私は、
ポケットに手を入れた瞬間、
ふと、指先が「何か」に触れていることに気づきました。

——けれど、そこには
何も入っていないはずでした。

電車に揺られながら、
確かめるように、もう一度指先を動かします。

やわらかい感触。
昨日まで、そこにあったものの名残のような——

けれど、思い出そうとすると、
うまく輪郭が掴めませんでした。

電車が止まり、
人の流れに押されるようにホームへ出ます。

外の空気は、
少しだけ冷たくて。

靴底がコンクリートに触れる音が、やけに乾いて聞こえました。

胸の奥に、かすかな寂しさが触れました。

同じ景色のはずなのに、
どこか、
違う場所に迷い込んだような感覚がありました。

風景は変わっていないのに、
自分だけが、ほんの少しだけ
浮いているような——

大きな公園を横切ると、
茶色い犬が、
ゆっくりと歩いていきます。

その向こうで、
ボールを追いかける子どもたちの声が、
風に混じっていました。

……

三毛猫が、
草むらから、ひょこっと顔を出しました。

目が合ったような気がして、
私は、ほんの少しだけ足を止めます。

三毛猫は、
一瞬だけ動きを止めて——
まるで、こちらの何かに触れたように見えました。

そのあと、草むらの向こうへ
するりと消えていきました。

私は、
もう一度、ポケットに手を入れました。

やっぱり、
何もありませんでした。

その感触だけが、
まだ指先に残っているような気がします。

通い慣れた道は、
相変わらず、何も変わっていなくて。

人の流れも、
音も、
光も、

すべて、
いつもと同じはずなのに。

私は、
ほんの少しだけ、
違う場所に立っているような気がしました。

そのまま、
また歩き出します。

少しだけ、ゆっくりと。
もう一度、確かめるように。



まだ名前のない揺れは、
静かに続いていきます。

第4話『手の中に残っているもの』

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