怒った後の、あの"後味の悪さ"。原因は、怒りじゃなかった。
「怒っちゃダメ」
……そう思って、ぐっと我慢してませんか?
わかります。怒り=悪いもの、我慢できる人がえらい、みたいな空気ありますよね。
でも、ここではっきり言っておきます。
我慢は、解決じゃありません。
はじめまして。現役の臨床心理士をやりながら、裏でゲーム実況もしている、だっちんです。
病院では、子どもから大人まで「怒りwith困ってます」な相談をたくさん受けています。
このシリーズは、「漫画・アニメから学ぶアンガーマネジメント」。
むずかしい心理学の話を、名作のワンシーンを借りてゆるっと解説していきます。
(というか、僕がアニメと漫画が好きなだけですけどね笑)
今日の題材は——『スキップとローファー』です。
(二期制作希望です)

その前に、『スキップとローファー』って?
念のため、知らない人向けにサラッと。
田舎から東京の高校に進学した、まじめで素朴な優等生・みつみちゃんと、
飄々としていて掴みどころのない、でもどこか優しいクラスの人気者・志摩くん。
この2人を中心にした、青春群像劇です。
派手な事件は起きないんですが、心のひだの描き方がとにかく丁寧で……刺さります。
※今回は、アニメ:シーズン1の第6話/マンガ:2巻 Scene.11 のシーンを使います。
がっつりネタバレするので、未見の人はブラウザバック……せずに、ぜひ読んでから見てください笑
まず、2人はケンカします
ことの発端は、こうです。
テスト期間なのに、志摩くんが学校をサボりがちだった。
心配したみつみちゃんは、正論で注意します。
「なんで学校来ないの?大事なことだよ?」
「最近、夜の街にいるっていう変な噂も流れてるし……」
これに対して、いつも穏やかな志摩くんが、めずらしく冷たいトーンでこう返すんです。
「それって、みつみちゃんにとっては、でしょ?」

……ヒュッ、と空気が凍ります。(ひぃ~~)
みつみちゃんは「…」となって、2人の間に気まずい空気が流れてしまう。
さて。ここでみつみちゃん、モヤモヤします。
だって、自分は正しいことを言ったはずなんですよ。
テスト前に学校来なよ、なんて、100人に聞いたら100人が正論と言うやつ。
なのに、なんだかスッキリしない。
このモヤモヤの正体を、心理学で解いていきましょう。
そもそも、怒りって「悪者」なの?
まず大前提から。

怒りは、喜怒哀楽の一つ。誰もが持っている、自然な感情です。
悪いものでもないし、消そうと思って消せるものでもありません。
「イライラしちゃう自分はダメだ」なんて思わなくていいんです。
お腹が空くのと同じで、怒りが湧くのも人間の仕様。
(消せたら僕もとっくに消してます笑)
存在するからには意味がある。
怒りの感情にも役割がちゃんとあります。
自分や大切なモノを脅威から守る役割があります。
とはいえ、怒り任せになってしまっても困る・・・。
問題は、怒りが湧くことじゃなくて、その怒りをどう扱うか、なんですね。
怒りの正体は「二次感情」
ここが今日の一番大事なところです。
怒りは、二次感情。つまり「2番目に来る感情」なんです。

コップをイメージしてください。
心配、不安、疲れ、不満、寂しさ……。
そういう一次感情が、日々ちょっとずつコップに溜まっていく。
そして、コップがあふれた瞬間——
表面に飛び出してくるのが、「怒り」です。
だから、怒っているように見える人の心の中には、
たいてい、その下に「本当の気持ち」が隠れています。
※余談ですが、僕がよく会う子どもたちの「ウザい」「めんどくさい」、時には「死にたい」も、僕はこの二次感情の仲間だと思っています。
表面の言葉だけを真に受けず、下を見る。これ、大人相手でも同じです。
つまり、怒りをそのままぶつけても、本当の問題は片付かないんですよ。
コップの水をぶちまけても、なんで溢れたのかは分からないままなので。
カッとなったら、まず6秒(←誤解されがち)
とはいえ、です。
「本当の気持ちを見つめましょう」って言われても、
カッとなった瞬間にそんな冷静になれたら苦労しません(真顔)。
というのも・・・↓↓↓

これ、脳のせいなんです。
アンガーマネジメントではよく
「怒りのピークは6秒」と表現されがちですが、
これはちょっと正確じゃないと思います。
「感情の瞬発力が違う」がよりイメージに近いと考えています。
トラブルが起きると、「怒り」は一瞬でトップスピードで駆けつけるのに、
それをなだめる「理性」は、のんびり歩いてやってくる。
その差が、およそ6秒と言われています。
だからまず、この6秒をやり過ごす。
深呼吸する、心の中で数を数える、その場を離れる。なんでもいいです。
理性さん「俺が来るまで、よく堪えた」

ここで爆発さえしなければ、80点。
……でも、6秒待っただけでは、まだ仲直りはできません。
(なん、、、だと、、、?)
本題はここからです。
みつみちゃんが、めちゃくちゃ良いことをする
さあ、『スキップとローファー』に戻りましょう。
ケンカのあと、仲直りしたいみつみちゃんは、あることを考えます。
「本当は自分は、何を言いたかったんだろう?」
……これ、さらっと書いてますけど、めちゃくちゃ高度なことをしてます。
怒り(二次感情)の下にある、本当の気持ち(一次感情)を、自分で掘りにいってるんです。

そしてみつみちゃんは、気づきます。
正論を並べて、志摩くんを言い負かそうとしていたけれど……
本当は、そんなことが言いたかったんじゃない、と。
雨の帰り道。みつみちゃんは志摩くんを呼び止めて、勇気を振り絞って、本音を伝えます。

「志摩くんがいないと、つまらないから来てよって言いたかっただけなんだ。ごめんね」
……いや、泣きますよね。これは泣く。
「学校に来るべき」という正論(二次感情)の下に隠れていたのは、
「あなたがいないと、寂しい」という、まっすぐな一次感情だったわけです。
志摩くんの本音も、実は
そして、この素直な言葉を聞いた志摩くんも、自分の本音を明かします。

彼が冷たく「みつみちゃんにとっては、でしょ」と返したのには、理由がありました。
自分が「夜遊びの噂」を、みつみちゃんに信じられたことに傷ついていた。
「君にだけは、信じてほしかった」——それが、志摩くんの一次感情。

冷たい態度(二次感情)の下に、「信じてほしかった」という傷つき(一次感情)があった。
2人とも、怒りの下の本音を出し合えたから、仲直りできたんですね。
みつみちゃんの計算のない素直さに救われて、志摩くんはいつもの笑顔を取り戻しましたとさ。
めでたしめでたし。(尊い……)
これが、アンガーマネジメントです
このシーン、アンガーマネジメントのド真ん中なんですよ。

大事なのは、これ。
怒りの目的は、「論破」じゃない。「思いを伝える」こと。
みつみちゃんは最初、正論で志摩くんを言い負かそうとしていました。
でも、本当に伝えたかったのは「来てほしい」という思いだった。
怒りをそのままぶつけるんじゃなくて、
自分が何に傷ついたのか、何を思ったのかに目を向ける。
そして、それを「具体的なお願い」の形にして伝える。
「なんで来ないの!」(怒り) じゃなくて、
「来てくれたら嬉しい」(お願い) に翻訳する。
……この翻訳作業こそが、アンガーマネジメントの本体なんです。
おまけ:「べき」に気をつけて
もう一つだけ。怒りの引き金になりやすいものがあります。

それは、「〜すべき」という思い込み。
「テスト前は勉強すべき」
「学校には来るべき」
みつみちゃんの怒りも、この「べき」から生まれていました。
でも、この「べき」って、時代や環境や、その人の育ちでぜんぶ変わるんですよね。
正しさは、玉虫色。
自分の正しさと、相手の正しさは違う。そう心得ておくだけで、だいぶ楽になります。

自分の中の「べき」が強く出てるな、と感じた時ほど、いったん深呼吸。
これ、覚えておいて損はないです。
まとめ
長くなったので、ぎゅっとまとめます。
怒りは二次感情。その下には必ず、一次感情(本当の気持ち)が隠れてる
カッときたら、まず6秒やり過ごす
ぶつける前に「自分は何に傷ついた?本当は何を伝えたい?」と掘る
目的は論破じゃなくて、思いを伝えること

……とはいえ、みつみちゃんみたいに、その場でスッと本音を掘り当てられたら苦労しません。
彼女は天才です。真似できなくて当たり前。
(僕も妻には、いまだに拗ねるという態度で怒りを伝えてしまうことがあります。反省。でもそれでもいいじゃない 人間だもの/だちを)
とりあえず、方向さえ分かっていれば大丈夫。
「あ、今のイライラの下には、なにが隠れてるかな?」
そう一回立ち止まれた時点で、あなたはもう十分えらいです。
困ったこと、傷ついたことを、一人で抱え込まないでくださいね。
最後まで読んでくれて、ありがとうございました。
こういう「漫画・アニメ×心理学」の話、これからも書いていきます。
次はどの作品にしようかな……(おすすめあったらこっそり教えてください笑)
それでは、良い一日を。

