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■ 第3話:記録にない少女





【冒頭:彼女は“いない”】

ネブラ市第七層。人工森林の見回り中、管理局補佐官の青年・エイノ・ユグナーは、奇妙な少女に出会った。

年の頃は10歳ほど。
白いワンピースに長い銀髪、空色の瞳。
だが彼女を見た瞬間、エイノは本能的に違和感を覚えた。

「……あれ? 誰だ? この区域に子どもはいないはず……」

すぐに視界端に現れるインフォタグ。
ネブラの市民には、視認と同時に「存在情報」が自動表示される。

しかし──

その少女には、何の情報も表示されなかった。

「え……? タグが……出ない?」

エイノは端末を手動で起動し、顔認識検索をかける。

「……認識不能、だと……? コード未登録……?」

その時、少女がふとこちらを見た。
何の感情も映っていない瞳。けれど、確かに“見ていた”。

そして、無言で微笑んだ。



【捜査:見えない幽霊】

エイノは管理局本部に急報を入れる。
だが、監視記録にもログにも少女の姿は一切残っていなかった。

「幻覚ではありません。私は確かに接触し、声をかけた。そこに“いた”んです」

だが上司は鼻で笑った。

「若造。そんなのは“幻視ノイズ”か、システムのバグだ。よくある話だ」

「……本当に、いなかったんでしょうか?」

上司は冷たく言い捨てた。

「“記録にない者”は、この世界には存在しない」

だが、数日後。
エイノの周囲で、不審死が相次いだ。

■ 突然心停止するパトロール隊員
■ 仮想ログから消えた住民の記憶
■ 血痕だけ残して消える足跡

死者たちは、エイノが少女の話をした相手ばかりだった。



【再会:記録の外側で】

恐怖と疑念の中、エイノは再びあの森林エリアへと向かう。
すると、まるで待っていたかのように、少女が現れる。

「どうして……君は、誰も覚えていないんだ?」

「だって、わたしは“記録されない”から」

「それって……どういう意味なんだ?」

少女は指を唇に当て、そっと言った。

「しーっ。言っちゃだめ。わたしは“ここにいない”の」

その瞬間、通信機が爆音のようなノイズを放ち、周囲の空間が歪んだ。
エイノの意識が、強制的に“遮断”される。



【真実:名前のない存在】

目覚めたエイノは、都市記録局のアーカイブに潜入し、“未登録生命体”の存在証明を探す。

すると、極秘記録の中に、1件だけ異常な出生記録が存在した。

【個体コード:未定義】
【識別名:-】
【親権者:不存在】
【削除理由:空間不安定性・記録拒絶反応】

これは、ネブラのコアコードと“反発”する存在──
記録されないまま生まれた子ども。

都市に存在してはならない“情報拒絶体”だった。



【終幕:少女の願い】

再び森林で少女と出会ったエイノは、問いかける。

「君は……なぜここにいる? なぜ“殺す”必要がある?」

少女は静かに言った。

「わたしを、“いない”って言ったから。みんな、わたしのこと“存在しない”って決めたから。
だから……わたしも、彼らを“いない”ことにしたの」

「君は……寂しかったのか?」

少女はふと、小さく微笑んだ。

「……忘れられるって、消えるより怖いんだよ?」

そして彼女は、霧のようにその場から消えた。



【ラストシーン】

その日を境に、少女を見た者は誰もいない。
だがエイノの端末には、誰も知らない写真が1枚だけ残されていた。

そこには、白いワンピースの少女が、空を見上げて立っていた。

キャプションは、こう表示されていた。

【名前:存在記録なし】
【ステータス:観測中】



🟦 《第3話 完》

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