一度逃げたあとで戻るのが、いちばん危ない
みなさんに届くように、
あえて難しい言葉では書きません。
あとで何度でも読み返せるように。
大切な家族にも、そのまま渡せるように。
小さい子どもにも、少しずつ伝えていけるように。
災害のときに必要なのは、
詳しい説明より、
迷わないための言葉だと思うからです。
災害のとき、
最初に逃げることだけが
大事なのではない。
一度逃げたあとで、
戻らないことも、
同じくらい大事である。
何も来ていないように見える。
少し静かになったように見える。
第一波が小さかったように見える。
だから、
もう大丈夫かもしれない、
と思ってしまう。
家の様子を見たい。
店のことが気になる。
車を取りに戻りたい。
荷物を取りに戻りたい。
家族の写真や、
大事な物を思い出す。
そうなるのは自然である。
でも、
災害のあとに危ないのは、
その自然な気持ちなのだと思う。
人は、
最初の怖さではなく、
少し落ち着いた空気の中で
判断を間違えやすい。
さっきより静かだから。
今は何も見えないから。
もう時間が経ったから。
その
もう大丈夫かもしれない
が、
戻る理由になってしまう。
でも災害は、
一度で終わるとは限らない。
あとから強く来ることもある。
見えないまま危険が残っていることもある。
静かに見えても、
安全とは限らない。
だから必要なのは、
安心したくなる気持ちより先に、
戻らないと決めておくことである。
警報や避難の情報が解けるまで戻らない。
安全がはっきりするまで近づかない。
見に行かない。
取りに行かない。
それだけで、
守れる命がある。
災害のとき、
逃げる判断は大事である。
でも同じくらい、
戻らない判断も大事である。
怖かったあとほど、
人は元に戻したくなる。
いつもの場所へ戻りたくなる。
日常を確認したくなる。
でも命を守る時は、
その気持ちを少しだけ止めたほうがいい時がある。
戻らない。
近づかない。
災害のあとに必要なのは、
勇気ではなく、
戻らない我慢なのだと思う。
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©︎2026 Nasu Takako
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