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朝は蒼い

朝の空気は、まだ言葉を持っていない。
夜のあいだに沈んでいた思考が、輪郭を持たないまま浮かび上がる時間。

目が覚めた瞬間、世界は少しだけ蒼い。
青ではなく、蒼。

はっきりしないけれど、確かにそこにある色。
この時間帯に考えたことは、
たいてい昼には役に立たない。

けれど、夜にはちゃんと意味を持つ。
通勤前の頭は軽い。

軽すぎて、重たいことを掴めない。
だからこそ、感情の底に沈んでいたものが、
水面に浮かぶ。

答えを出すには、まだ早い。
判断するには、少し静かすぎる。
朝は、整理ではなく観測の時間だと思っている。

考えをまとめる前に、
「今、何が浮かんでいるか」を眺めるだけ。
夜が深くなるほど、思考は潜る。
朝は、その逆だ。

思考は浅瀬に戻ってきて、光を受ける。
だから、朝は蒼い。
決めないままの色で、

まだ名前を持たない感情が、
そこにある。


©2026 Nasu Takako
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