霧積ダム(群馬県)|一日一堰
~群馬のダム史を刻む入口、霧積の水がめ~
霧積ダムは群馬県安中市に位置する県営の重力式コンクリートダムである。竣工は1950年代、群馬県が自ら施工したダムとしては第一号という歴史的な意義を持つ。堤高はそれほど高くなく、規模も小さい部類に入るが、群馬県のダム事業の出発点として大きな意味を持っている。

霧積ダムの堤体は、一見すると直線に見えるが、実はわずかに折れ曲がっている。重力式コンクリートダムというと、普通は直線的な姿を想像するが、霧積ダムは少し変わった形をしていて、現地で見るとその違和感が印象的である。

見学できる場所は限られているが、下流側には展望スペースがあり、堤体を下流側直下から見ることもできる。ダムを下流正面から眺める体験は、規模に関わらず特別なもので、霧積ダムも同じである。

紅葉の季節になると、この展望スペースからの眺めは一層映える。ダム周辺の木々が赤や黄色に色づき、コンクリートの灰色と鮮やかなコントラストをつくり出す。都市部から比較的近い立地ながら、山深い雰囲気を味わえるのも霧積ダムの魅力である。夏は深い緑に囲まれ、秋は紅葉が映える。季節によってまったく異なる表情を見せるダムである。
母さん、僕のあの帽子、どうしたんでせうね?
ええ、夏、碓氷から霧積へゆくみちで、
谷底へ落としたあの麦わら帽子ですよ。
この有名な一節は、西条八十の「ぼくの帽子」という詩の冒頭部だ。碓氷から霧積へ……その途中の谷底ということで、霧積ダムに行って下流を眺めた時、いつもこの詩が降りてくる。
霧積ダムを訪れるなら、近くにある坂本ダムとあわせて見ておきたい。両者は距離が近く、どちらも安中市内に位置しているため、一日の行程で巡ることが可能だ。坂本ダムは規模も大きく、堤体の直線的な美しさが際立つ。一方で霧積ダムは群馬県営第一号という歴史を持つ。2基を見比べることで、群馬県のダム建設史を立体的に理解できるだろう。

霧積ダム周辺には見どころが多い。中でも有名なのは、通称「めがね橋」と呼ばれる碓氷第三橋梁であろう。ここはかつて信越本線の横川駅と軽井沢駅を結んでいた碓氷峠の鉄道施設の一部だ。赤レンガ造りのアーチ橋は、国の重要文化財にも指定されている。ダム見学とあわせて鉄道の歴史的な遺産も楽しめるのは、この地域ならではだと思う。

鉄道関係の観光スポットとしては、「碓氷峠鉄道文化むら」も見逃せない。横川駅付近に保存されている鉄道施設や車両を見学できて、鉄道ファンはもちろん、家族連れにもおすすめだ。

それから、安中といえば「峠の釜めし」の「おぎのや」本店。ドライブや観光の途中に立ち寄るのにぴったりだ。温泉に入れる場所もたくさんあるので、日帰り入浴も楽しめる。
霧積ダムは、単独で訪問するよりも、こういった地域の観光スポットと合わせて訪れると、より楽しめるダムだと思う。
霧積ダムそのものは小規模であり、観光地として派手な演出や展示があるわけではない。しかし、群馬県営ダムの第一号としての歴史的価値、紅葉に彩られる美しい景観、そして碓氷峠エリア全体の観光との相性の良さを考えれば、十分に訪れる価値がある。
ダムを巡る魅力は、必ずしも規模の大きさや知名度に依存しない。小さなダムでも、その土地の歴史や地理、周辺文化と結びつくことで、ひとつの旅の目的地として輝く。霧積ダムはまさにその好例である。群馬のダム史を語るうえで欠かせない存在であり、碓氷峠の名所群とともに訪れることで、その価値はいっそう際立つだろう。
一日一堰は、今まで行ってきたダムや堰を「気の向いた日」に「一件だけ」マイペースに紹介する試み。気が乗らない日はやらない。それくらいの緩さでやってます。
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一日一堰 Map
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