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NAVITIME息子版で帰省する。

旅に出たい。

すっかりコロナも過ぎ去って旅行も身近に帰ってきた。来る年の瀬、久しぶりに帰省する。わたしの実家の八丈島へ短いみじかい旅行だ。

旅には出たいが、子連れだと大変である。スケジュール通りにいかないのが旅の醍醐味。しかし何一つコントロールできないのがキッズの常。難易度うなぎのぼりの掛け算はトラブルがネギ背負ってアクシデントに突っ込むかの如くである。そもそもが無理ゲーなのだ……。なのでできるだけリスクは減らしたい。我が家も元気満載6歳と息するようにいたずらを繰り出す3歳という、肘と肩に爆弾を抱えたピッチャーくらいには綱渡りだ。暴投不可避。結果、無理のない効率的なルートにせざるを得ない。油断すると旅はただの移動になってしまう。

今回は朝早い飛行機にしたので、羽田空港の近くのホテルに前泊することにした。とりあえず前日にホテルに到着していれば、あとはどうとでもなる。(ちなみにわたしは全然旅慣れしている方ではなくてホテル取るにもブッキングドットコムでフィッシングドットコムされたりなどした。旅はむずかしい)

旅行にいくことを伝えると、使い込まれた路線図を引っ張り出してきた6歳がウンウンとルートを考え出す。6歳は電車大好き。誰かがあそびに来れば、どこから来たのかルートを確認したり、「ここに行くなら〜」と謎の乗換案内をずっとしていたりする。横の3歳も兄のマネをして何やら書いたりしていた。

「う〜ん、あんまりはやすぎると旅じゃないからなぁ〜」
「……(ええやん)」

ええやん。めっちゃええ。
旅感大事よな〜。旅を感じたい。

なんでも効率化が重視されフリクションレスなサービス体験に価値があると言われている現代。移動もアプリで一発検索。しかし、旅とは?それでいいんだっけ?
ただの移動を超えるには、意味を持たない寄り道が必要だと肌で感じているのかもしれない。ただたくさん電車に乗りたいだけかもしれない。うん。たぶん乗りたいだけである。

「よし、じゃあ当日は息子くんの考えたルートで行こう」
「いいよ!」
「よろしくお願いします」

こうして張り切って決められたルートがこれである。

NAVITIME息子版。謎の呪文書みたいだがなんとなく読める。
ちなみに本家NAVITIMEだと80分くらいだった。

「このルートのいいところはねぇ……」
「どんなところ?」
「ルートどおりにいくと、おじぎしたひとができる!」

……そこですか!?

🚊

🚉

🛫

こうして我らはNAVITIME息子版で帰省することにした。


10:30 出発

のっけから出発が遅れた。本家NAVITIMEでは池袋にいるはずなのに、ギリギリまでニットの帽子を探していた。散々探し回って、結局かばんに入っていた。順調である。
スーツケースもあるし、いつもならタクシー呼んで駅までビュンと行ってしまう。しかし今日はNAVITIME息子版に従い、歩いても駅に向かった。

行ったり来たり、忘れものを思い出したり。本返し縫いみたいな速度でわいわいおしゃべりしながら駅まで歩く。いつも使ってる道だけど「これから旅行!」のスパイスも効いて、うきうきたのしい。冬の冷たい空気と年の瀬特有のせかせかした感じが心地よかった。

最寄り駅につくと、ちょうどいいタイミングで電車がホームに滑り込んできた。各停だ。いつもならどの電車で行けば楽か、早いかを検索する。しかしNAVITIME息子版は違った。

「かっこいい電車です!のりましょう」

西武線の限定ラッピングカラーの電車だった。乗りましょう。そうよね、そのくらいでいいんだよね。かっこいい電車に乗ってたら、たのしいもん。

結果的に追い抜かれず一番早い電車だった。やるじゃんNAVITIME息子版……。

12:00 真反対の電車へ

羽田空港に向かうはずなのに、我らは一路大宮へ。
池袋から埼京線に乗る。川越方面行き。途中、武蔵浦和の前あたりから新幹線と並走し始める。

「このルートのしんのもくてきはねぇ……」
「……?」
「しんかんせんがみれる!」
「……なんだってー!(知ってた)」

知ってた。新幹線好きだもんね。
検索では絶対に出てこないルートだけど、かなりたのしくてよかった。たのしいが正義。
大宮駅は帰省の人と仕事納め感ただようビジネスパーソンが行き来していて、これもまた年末を感じてうきうきそわそわした。旅感、高まってきたぞ。

突然エンカウントした大宮横丁。
ここでお昼ごはんにした。
昭和レトロが唐突に現れてたのしい。
旅なので……。

13:43 上野東京ラインでいざ品川へ

ダブルデッカーを知っているだろうか。JRのグリーン車とかにある二階建てのあれである。
息子ズはYouTuberの鈴川絢子を敬愛していて、常々いつか乗りたいと言っていた。

なので乗った。

ホームの券売機でグリーン券ってどう買うのかなってやってみたらパートナー分だけ買ってしまった。わたしのはモバイルSuicaだったので買えずに、しかたなくしばしの別れ。まだ本格帰省ラッシュ前なのか、自由席も空いていて助かった。二階建ての二階に皆を残し、隣の普通車に移動する。
先ほどビールもほどよく回ったのか、窓に流れていく景色をぼんやり見ながらうとうとしてたら、すぐに品川だった。

15:00着 京急は早い!着いたぞ!

品川駅からは京急に乗り換えて、羽田空港へ。ここまで来ると帰省感も最高潮に達した。サビである。まわりのスーツケースだらけ。かなり混雑していたが、なんとか乗り込む。さすがに疲れが出てきたのか、長男はスーツケースに捕まりながらうとうとしていた。次男はとっくに夢の中だ。

京急は早い。乗るたびに思うけれど、京急の空気は独特の距離感があって好きだ。いろんな人が乗っているし、これから飛行機に乗る人と生活便で乗ってる人が入り交じっていて、ちょっとした人生が交差点の感じがある。線路からの景色が高いのもいい。
あくび三回、そんな考えにぼんやりふけっているうちに京急はトンネルに入り、多言語のめちゃくちゃ長いアナウンスが終わるか終わらないうちに羽田空港に到着した。やはり京急は早い。

ついた!

おしまい 移動を旅にする好奇心

「ナビ、ばっちりだったね!」
「うん。すごかった。ありがとう」

ナビ隊長として大役を果たした長男は誇らしげに笑ったあと、ホテルのベッドですぐに寝た。すやすやと満足そうだ。自分でルートを考える。やってみる。移動する。目的地に着く。結局80分のルートに4倍以上かかったけど、ずっと笑っててあっという間だった。ただの移動を旅にするのは好奇心なのかもしれない。明日は飛行機に乗り、久しぶりにじいじばあばに会ってなんやかんやするだろう。こどもは忙しくて、時間はすぐ過ぎていく。
こういう無駄や余白をちゃんとできる時間、できるだけつくっていきたいなぁとしみじみする年の瀬。2023年もあと数日です。おやすみなさい。


おわり。

余談/とはいえ……もある。

空港でちょっとした手続きをしたかったのだけど、年末効果でめちゃくちゃ並んだ。並んだうえに結局並んでもできない手続きで、しかもすぐにやらなくてもなんとかなるやつだった。ふつうに2時間くらいかかった。さすがにこれには全員不機嫌大爆発となり、ホテルの近くで焼き肉キメることでバランスを取った。いらない無駄もある。やはり下調べは大事である。

帰り道、見上げた月が満月だった。今年さいごの満月らしい。ずぼらにもおせっかちにも失敗した人にもうきうきにも、お月さまは変わらずまんまるだ。ええやん。

よいお年を!

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野やぎ 待てうかつに近づくなエッセイにされるぞ あ、ああ……あー!ありがとうございます!!