月末の勤怠締めがつらい人へ。AIで月3時間→10分にした。AIとの仕事の分け方
毎月必ずやってくる、勤怠管理表の作成。作業のひとつひとつは難しくありません。勤怠データ(CSV)を取ってきて、フォーマットに貼り付けて、おかしいところがないか目で確認して、修正をお願いして、直ったらまた確認する。
難しくないのに、全部合わせると月2.5〜3時間かかっていました。
いまは、確認や修正依頼まで含めて10〜15分です。この記事では、何をAIに任せて、何を人間に残したのか、その分け方を書きます。
自動化する前の流れ
以前の毎月の流れは、こうでした。
勤怠ツールからCSVを取得する
提出用のExcelフォーマットに転記する
関数の入ったシートに反映する
打刻漏れや休憩時間などを目視で確認する
修正が必要な人に依頼する
修正後にもう一度確認する
別で管理している有給管理表も更新する
振り返ってみると、時間を食っていたのは作業そのものより「確認と差し戻しの往復」でした。
目視チェックは集中力が要るわりに、月に一度しかやらないので慣れない。見落としが怖いので二度見する。そこに時間が溶けていました。
AIと人間の分担
いまの分担はこうです。
CSVの取得と保存 → 人間
提出用の管理表の作成 → AI
確認が必要そうな箇所の洗い出し → AI
確認・判断・修正依頼 → 人間
修正後の反映と、有給管理表の更新 → AI
CSVを所定のフォルダに置いてAIに声をかけると、管理表ができあがり、「ここは確認したほうがいい」というリストが一緒に出てきます。
人間はそのリストを見て判断し、必要な人に修正を依頼する。修正が終わったことを伝えると、AIが管理表と有給管理表を更新します。
完全自動化にしなかったのは、手を抜いたからではありません。勤怠は人にかかわるデータで、間違いがそのまま給与や信頼に響きます。
人間の確認を残した設計のほうが安全ですし、「AIが勝手に全部やっている」より「AIが下ごしらえして、人が確認している」のほうが、職場にも受け入れられやすいと感じています。
AIに洗い出させている確認ポイント
AIには、たとえばこんな観点で「確認が必要そうな日」を挙げさせています。
打刻漏れの可能性がある日
休憩時間が不足している可能性がある日
早退や遅刻などの勤怠差異に、備考の説明がない日
雇用区分ごとの標準的な勤務パターンから外れている日
特殊な働き方が発生していて、既存のExcel関数では扱いにくい日
ここでのポイントは、AIに「判断」をさせていないことです。挙がってきた日が本当に問題なのか、単にイレギュラーなだけなのかは、事情を知っている人間のほうが早く正確に判断できます。
AIの仕事は、判断ではなく「気づきの一覧化」。この割り切りで、確認の時間は大きく減りました。目視ゼロにはしていませんが、「見るべき場所」が最初から絞られているので、二度見の不安がなくなりました。
一番苦労したのは、AIへの指示でした
正直に書くと、ここまで来るのに一番時間がかかったのは、ツールの設定ではなくAIへの仕様づくりです。
最初は、Excelの管理表を一から作らせていました。すると、フォーマットが微妙に崩れる。編集はしないけれど残しておく必要がある要素が、気を利かせたつもりなのか消される。何度直させても、別の場所が崩れる。
このとき学んだのは、AIには「してほしいこと」を伝えるだけでは足りない、ということでした。「何を変更してはいけないか」「何を残すべきか」まで指定して、はじめて安定します。
いまは、前月のファイルをコピーして、必要な箇所だけ上書きする方式にしています。ゼロから作らせるのをやめて、「触っていい範囲」を仕様書で細かく区切りました。あわせて、例外的な働き方をルールですべて拾うことも諦めました。拾いきれない日は「関数で扱いにくい日」としてAIが人間に回す。例外は人間が見る、と最初から決めてしまったほうが、結果的に速くて確実でした。
この改善から得た学び
Excelの自動化では、「操作していい範囲」と「操作してはいけない範囲」を先に決める
AIにチェックさせる条件は、最初から完璧を目指さない。運用で出てきた例外を仕様書に書き足していく
目視確認をゼロにするのではなく、「見るべき場所を絞る」ことを目標にする
一発で完成する自動化より、運用しながら育てる半自動化。地味ですが、毎月の運用に耐えているのはこの形でした。
同じ型が使える業務
この「AIが下ごしらえ+人が確認」の型は、勤怠に限らず使えると思っています。
経費精算のチェック
請求書まわりの管理
在庫管理表や月次集計
各種申請データの確認
有給・シフトの管理
共通するのは、毎回同じ構造のデータが来て、決まったフォーマットに落とし、チェックの観点が言葉にできる業務です。逆に、チェック観点を言語化できていない業務は、先に観点の整理から始めたほうがうまくいきます。
この記事の使い方(そのままAIに渡せます)
導入で予告したプロンプトです。この記事は読み物としてだけでなく、AIに渡す「仕様書の種」になるように書きました。
下のプロンプトをコピーして、この記事のURLと一緒に、CodexなどのAIエージェントに貼り付けてください。質問には例を付けてあるので、自分の会社の言葉で答えていくだけで大丈夫です。
あなたは業務改善の設計者です。
添付した記事の考え方を参考に、私の会社の勤怠管理を半自動化する
「仕様書(スキル)のたたき台」を作りたいです。
ただし、勤怠ルールは会社ごとに違います。いきなり作り始めず、
以下を1つずつ私に質問してください。私の回答が曖昧なときは、
遠慮なく追加で質問してください。
【質問してほしいこと】
1. ゴールの方向性
例)表の作成まで全部下ごしらえしてほしい/チェックだけしてほしい/転記だけ自動化したい
2. 元データの形
例)勤怠システムから社員ごとにCSVを出力/全員分がExcel1枚にまとまっている/紙のタイムカードを手で転記している
3. 完成形と提出先
例)提出先指定のExcelに転記して提出/社内の管理表を更新するだけ
4. 触っていい場所・ダメな場所
例)出退勤時刻や休憩の欄は入力してよい。備考欄は人が書くので触らない。色・罫線・数式・シート構成は絶対に変えない
5. うちならではのルール
例)6時間以上働いたら休憩1時間が必須/時短勤務の人は打刻がそのまま使えない/退勤後の在宅作業は労働時間に合算する
6. 自動で直してよいこと・人が確認すること
例)休憩が0の日は入れ忘れが明白なので自動補正してよい。それ以外の違和感は直さず、印をつけて人に回す
【たたき台に必ず入れてほしい3原則】
1. 原本は書き換えない(コピーを作って作業する)
2. AIは最終判断をしない。怪しい箇所は色や印をつけて人に返す
3. 提出前の最終確認は人間が行う
【出力の形】
「してほしいこと/してほしくないこと/確認ポイント一覧/毎月の運用手順」の4部構成。
埋まっていない部分は「要ヒアリング」と明記し、私への質問リストを添えてください。ねらいは、AIに質問させることです。質問に答えていくうちに、いままで頭の中や慣習の中にしかなかった自社のルールが言葉になっていきます。実は、この言語化こそが仕様書づくりの本体です。
ひとつだけ前提を。勤怠のルールは会社ごとに本当に違います。この記事に出てきた補正ルールや分担は、あくまで私の職場での一例です。そのまま流用せず、プロンプトの例文も必ず自社のルールに置き換えて答えてください。
これで一瞬で完成します、とは言いません。ただ、ゼロから仕様書に向き合うより、たたき台ができるところまでの道のりはだいぶ短くなるはずです。
おわりに
派手な工夫は、実はひとつもありません。分担を決めて、仕様書に禁止事項を書き足して、イレギュラーは判断させずに色付けして回す。それだけです。ただ、地味な工夫を積み重ねたら、月3時間が10分になりました。
次回以降に、この仕様書づくりでいちばんの核になった「してほしくないことを、どう言葉にしていくか」を、もう少し深く書こうと思います。
