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「ターミネーター」は最高のラブストーリー


「ターミネーター」と聞いて、皆様は真っ先に何を想像するだろうか?
 アーノルド・シュワルツェネッガー(以下シュワ)の豪快なアクション? エドワード・ファーロングの美しさ? 液体金属の不気味さ? ダイソンさんが自爆する際の鬼気迫る表情? 溶鉱炉でのサムズアップ?
 きっとどれも正解だ。シュワの件以外は全て、恐らくシリーズ最大の人気作「ターミネーター2」の要素になるが。


 私は元祖「ターミネーター」のラブシーンを思い出す。物語の終盤、逃亡中に立ち寄ったモーテルで発生する、主人公とヒロインのラブシーンだ。ネタ扱いされている風潮さえある場面だが、私はこの一連のシーンが好きだ。決して下世話な意味ではない。
 だからこそ、私は「ターミネーター」が好きで、定期的に見返している。あまりにも切ない、時空を超越した片想いの物語を、時折味わいたくなってしまうのだ。





 さて、偉大な続編と比較すると、今作の知名度は低いように感じる。そのため、改めてあらすじを挙げることとする。

【「ターミネーター」あらすじ】

 未来で繰り広げられている、人類 vs 機械の果てしない闘い。
 人工知能スカイネットは人類のリーダーであるジョン・コナーを歴史から消すべく、1984年のロサンゼルスへ冷徹無比の殺人機ターミネーターを送り込む。
 目的は、いずれジョンを産むことになるサラ・コナーの抹殺。
 そんなある日、平凡な女子学生であるサラの前に殺人サイボーグ「ターミネーター」が姿を見せる。しかしその時、彼女を守るために1人の男が現れる。
 男の名はカイル・リース。ジョン・コナーの命を受け、未来からやって来た戦士だった。

「ターミネーター」4Kレストア版公式サイトより引用。サムネイル画像も同様。


 クレジット上主演扱いではあるが、本作のシュワ=T-800ターミネーターはれっきとした悪役ヴィランだ。主人公はサラ、そしてカイルの両名なので、上から三番目位にクレジットされていても不思議ではない。


 上記の特殊な立ち位置も含めて、明るく楽しい痛快娯楽作が多い初期シュワ主演作群の中で、本作の存在はやや異質だ。「コナン・ザ・グレート」「コマンドー」「プレデター」のような「痛快シュワ大暴れ作品」を期待した方は、きっと面食らうだろう。


 本作は終始シリアスで重苦しく、胸のすくような爽快感がある展開はない。T-800はひたすらサラを追い、戦う術を持たないサラは逃走しかできない。守護者として現れるカイルは決してT-800と渡り合えるような強者ではなく、一時的な足止め程度の攻撃しかできない。派手な銃撃戦や肉弾戦も多くなく、アクションシーンはカーチェイスによる逃亡劇が主体だ。
 その上、たとえT-800を倒してサラの命を守れても、人類 vs 機械の発端となった最終戦争の回避には結び付かないことが確定している。スリルの後に残るのは侘しさだ。


 そんな本作で描かれるのは、いわば究極の「吊り橋効果」だ。
 後の作品では「伝説の人物」扱いされるサラも、この時点では単なる大学生。続編シリーズ「2」「ニューフェイト」で見せる逞しさはなく、基本的には状況に混乱して怯えるばかりだ。
 そんなサラ(そして未来のジョン)を守るために現れたヒーロー・カイルは余裕がなく、とにかく手荒で必死だ。「君を助けに来た」と熱弁するものの、やり口が誘拐犯染みておりサラから恐れられる始末。当初の信頼関係は皆無に等しい。


 しかし、カイルの身の上が明らかになるにつれ風向きは変わり、少しずつ二人の距離は縮まっていく。
 任務遂行のために未来から来たカイルを取り巻く環境は、悲惨極まりない。タイムマシンは一方通行な上、追っ手を防ぐために破壊済みだ。仲間の助けは期待できず、元の時代に帰ることもできない。仮にT-800に勝利できたとしても、未来の危機を訴える彼を誰もが狂人扱いする世界で生きていくしかない。
 それでも、カイルは過去へ飛んだ。

「志願した。伝説の人に会えるから。サラ・コナーに」

 未来で人類解放のために活躍する救世主・ジョンに戦う術を教育した偉大な母・サラを、カイルは敬愛していた。それ以上に、古びた写真でしか見たことのないサラの存在を心の縁にしていたことを、サラと我々は知る。

「僕は君に会うためにここに来た。愛してる。ずっと愛してた」

 半ば異常とも思えたサラへの執着は、与えられた任務に忠実なだけではなく、時空を超越した片想いがゆえの行動だった。

BGM:ブラッド・フィーデル「Love Scene」。かの有名な「デデンデンデデン」のアレンジver.。

「ターミネーター」テーマ曲の切ないピアノアレンジと共に重なり合う二人は語り草になりがちだが、物語上決して省略ができない重要な場面である事実は疑いようもない。一方、「そこまでねっとりと描写する必要があるか……?」との疑問が湧きかねないことも事実だ。
 本稿を執筆するにあたり、改めてこのシーンをじっくりと鑑賞した。すると、九割がたサラに主導権があるような様子が明確に見てとれた。
 描写には何らかの意図が込められているはずだ。壮大な片想いの成就とともに、今まで戦いしか知らなかった男が、遂に愛を知った瞬間を描こうとしていたのではないか? と、私には思えてならない。


 やがて、カイルの犠牲とサラの勇気によって、T-800との戦いは勝利に終わる。
「救世主の母」となる自らの運命を遂に受け入れ、やがて産まれる息子ジョンに向けたボイスメッセージで、サラは確かに告げる。

「カイルと過ごした時間は短かったけれど、私たちは一生分愛し合った」

 出会いから死別まで、たった三日間。片想いは終わり、一つの愛が生まれていた。
 だから、私は声高に叫ぶ。「ターミネーター」は最高のラブストーリーである、と。

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