落ち込んだ憧れの人を、また好きになった日
気の毒なくらい、しょんぼりとしていた。
あんなに落ち込んだ姿を、わたしは見たことがなかった。
それは、仕事が終わってエレベーターに乗っていたときのこと。
となりにいたのは、いつも一緒に帰っているHさん。
わたしが尊敬している60代の先輩だ。
5階から乗った。
4階で停まり、女性が乗り込んできた。
そして、また3階でも停まった。
何気ない一言だった。
「今日はよく停まる日やなぁ」
そう、ポツリと仰った。
3階でドアが開くと4階から乗ってきた女性が
「すみません」と少し微笑んで降りていった。
その方は、杖を突いていた。
その瞬間、Hさんは、
「あぁ……」と小さく声を漏らした。
「今日はよく停まる日やなぁ」はきっと、
「誰か乗ってくる人いるのかな」
の意味だった。
でもHさんは、
「あの一言で、女性に嫌な思いをさせたかもしれない」と、とても心配していた。
普段は堂々としていて、気遣いもできて、みんなから信頼されている方。
でもそのときは、本当にしゅんと落ち込んでいた。
わたしは思った。
あぁ、この人は、
人の気持ちを想像できる人なんやなぁ、と。
想像できる人だけが、「もしかして」と立ち止まれる。
気づくと、わたしは全力で励ましてた。
「だいじょうぶ、だいじょうぶ」
「今度会ったらわたしが『こないだすみませんでした』って言っときますよ」
落ち込ませたくなかった。
不思議だけど、
その出来事で、わたしはHさんを嫌いになるどころか、むしろ、もっと好きになった。
ひとつは、尊敬する人でも、そんな事あるんだなぁと知れたから。
どこか、ほっとした自分がいた。
わたしも、悪気のない一言を、あとから何度も思い返して、落ち込むことがあるから。
ぐるぐるしてしまう癖を、わたしはネガティブに捉えていた。
だけど。
それは弱さじゃなかった。
相手を想像する力の強さだったんだと、Hさんの姿を見て気付かされた。
そして、もう一つは、Hさんが、人の気持ちに寄り添いすぎるくらい寄り添う人だと、確認できたこと。
ちゃんと落ち込める人だったから、
尊敬してたんだと、気づいた。
正直にいうと、わたしは自分の評価を気にするところがある。
一番怖いのは、自分が無意識に発した言葉で、人からの評価が下がることかもしれない。
でも、信頼してる人の言動は、何も揺るがなかった。
その人の本質を、わたしは知っていたから。
わたしの中の「ちゃんとしなきゃ」という緊張が少しゆるんだ。
おまけ
週末落ち込んだHさん。
月曜日に声をかけるとこう宣言されました。
公共の場では、ミッフィーちゃんになる。
また好きになってしまった♡
2026.3.6追記
たくさん読んでくださりありがとうございます😊



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