カナダと日本で、家の建ち方を見比べてわかったこと
カナダに住んでいた頃、僕はベースメントで暮らしていました。

天井は仕上げがされておらず、一階の床下がそのまま剥き出しになっていました。
見上げると、細長い板が、等間隔にずらっと並んでいます。
その上に合板が貼られて、カチッとした一枚の面になっています。
それが、そのまま一階の床でした。
面白かったのは、太い梁が見当たらないことです。
日本の家なら太い一本ものの木を使いそうな場所に、薄い板が3枚重ねられて、束ねて一本の太い材のように使われていました。
どこでも売っている板の組み合わせで、太い木と同じ役割をさせている感じです。
日本の家とは、ずいぶん考え方が違うんだなと感じたのを覚えています。
北米の木造住宅は、壁や床の「面」で建物を支える作りが主流です。
モノコックという構造ですね。
規格サイズの板で枠を組み、そこに合板を貼って面を作り、その面を箱のように組み立てていく。
一方、日本の在来工法は、柱と梁で骨格を組んで、その「線」で建物を支えます。
壁の多くは、構造的にはただの間仕切りです。
面で支える家と、線で支える家。
この違いは、建てている現場を見ると、けっこうはっきり現れます。
白馬で自宅を建てたとき、うちは在来工法でした。
棟上げの日は、クレーンが入って、職人さんが集まって、一日で家の骨格が一気に立ち上がりました。

朝は基礎しかなかった場所に、夕方には家のかたちが見えている。
骨が先に立って、あとから肉付けしていく建て方です。
一方、最近のRevelstokeは開発が進んでいて、新築の工事現場をいくつか見かけました。

こちらは、一階を作って、その床の上で二階を組んで、と下から順番に積み上げていくイメージです。
骨が一日で立つ家と、箱を一段ずつ積んでいく家。
同じ木造でも、建ち方がまるで違います。
面の家と線の家で、性格の違いみたいなものはある気がしています。
面で支える家は、壁そのものが建物を支えているので、あとから壁を抜くようなリフォームは簡単ではありません。
Revelstoke時代のルームメイトにカーペンターがいて、家の壁を抜く場面に立ち会ったことがあるのですが、彼はまず「この壁は建物を支えている壁かどうか」を見極めてから抜いていました。
抜いていい壁と、抜いてはいけない壁がある。
その代わり、使われているのはどこでも手に入る規格品の板なので、傷んだ部分を同じものに交換するのは、わりとやりやすい。
間取りは変えにくいけれど、部品の交換は楽。
築100年の家が普通に直されながら住み継がれている背景には、この「部品を替えやすい」という特徴も理由のひとつなんじゃないかなと思っています。
線で支える在来は、たぶんその逆です。
骨格さえ守れば壁は動かせるので、間取りの変更には強い。
ただ、太い一本ものの柱や梁が傷んだときは、交換がなかなか大ごとになります。
じゃあ日本も面の家にすればいいかというと、そう単純でもなくて。
日本には、地震があります。
今の在来工法は、接合部を金物で固めたり、構造用の合板を張ったりして、線の骨格に面の強さを足した、いいとこ取りのような作りになっているそうです。
線と面は、対立しているというより、だんだんお互いに寄っていっている。
気候も、地震も、採れる木も違う場所で、それぞれの事情に合わせて建て方が育ってきた、というだけの話なのかもしれません。
ベースメントで見上げていたあの天井は、当時はただの「安い部屋の景色」でした。
でも、自分が家を建てて、建物を扱う仕事をするようになった今思い返すと、あの剥き出しの骨組みは、けっこう雄弁だったなと思います。
ふと自分の家は100年後、どんなふうに直されているんだろうか。そもそも100年後まで建っているんだろうかと、ちょっと考えてしまいました。
