決算書よりコンセンサス? 日本株市場は「投資」から「予想当てゲーム」になっていないか【n+マーケット】

最近の日本株市場を見ていて、どうしても違和感がある。
企業が増収・増益を達成する。
設備投資を進める。
新しい需要を取り込み、将来に向けて生産能力を増やす。
経営努力によって利益を積み上げる。
ところが決算発表後、
「コンセンサス未達」
この一言で株価が大きく売られる。
もちろん、株価は現在の業績だけで決まるものではない。
将来の成長期待まで織り込んでいる以上、増益だから必ず上がるという話ではない。
それくらいは投資家なら誰でも分かっている。
しかし最近の決算相場を見ていると、その範囲を超えているように感じる。
そもそもコンセンサスとは何なのか
ここを一度整理した方がいい。
コンセンサスは、企業が約束した数字ではない。
証券会社やアナリストなど、市場参加者が予想した数字を集計したものだ。
つまり、
企業が発表する「実績」
と、
市場参加者が作った「予想」
は、本来まったく別のものだ。
ところが最近は、この順番が逆転しているように見える。
企業が実際にどれだけ利益を出したのか。
前年からどれだけ成長したのか。
事業環境はどう変化したのか。
来期以降に何が伸びるのか。
こうした本来見るべき内容より、
「コンセンサスを何%上回ったか」
「何%下回ったか」
だけで瞬間的に評価が決まってしまう。
これでは決算分析ではない。
コンセンサス予想大会だ。
決算書を読む意味がなくなったら、個人投資家はどうなるのか
個人投資家は、企業の決算資料を読む。
IR資料を読む。
事業内容を調べる。
将来の市場規模を考える。
競合企業と比較する。
そして、自分のお金をその企業に託す。
これが本来の「投資」だと思う。
しかし、どれだけ調べても、
決算発表の瞬間にコンセンサスとの差だけで10%、15%と株価が動く。
しかも人間が決算資料を読み終わる前に、アルゴリズムや高速取引によって価格が形成されてしまう。
そうなれば個人投資家は当然こう考える。
「決算をまたがない方がいい」
「個別株なんて怖くて持てない」
「企業を調べても意味がない」
「指数やETFだけ買った方がいい」
これで本当に、日本の個別株市場は活性化するのだろうか。
「貯蓄から投資へ」と言いながら、投資しづらい市場を作っていないか
政府は新NISAを拡充し、
「貯蓄から投資へ」
「資産運用立国」
を掲げている。
私はこの方向性そのものには賛成だ。
しかし国民に、
「企業を応援しましょう」
「長期投資をしましょう」
「資産形成をしましょう」
と言うのであれば、その受け皿となる市場も健全でなければならない。
一方では長期投資を勧めながら、
もう一方では四半期決算ごとにコンセンサスとの差で極端な値動きが起きる。
これは矛盾していないだろうか。
投資家を増やしたいのであれば、
投資家が安心して企業を調べ、
企業価値を判断し、
中長期で保有できる市場を作る必要がある。
口座だけ作らせれば投資家が育つわけではない。
問題は企業側にも及ぶ
さらに怖いのは、企業経営までコンセンサスに支配されることだ。
経営者が、
「5年後、10年後に会社を成長させるには何をすべきか」
ではなく、
「次の四半期でコンセンサスを超えるにはどうするか」
を優先するようになれば、日本企業はますます短期志向になる。
本来であれば今期の利益を多少犠牲にしてでも、
研究開発する。
工場を建てる。
人材を採用する。
新しい市場へ投資する。
そういう経営判断が必要な場面もある。
しかし短期的なコンセンサス未達で株価が極端に売られるのであれば、経営者も市場の顔色を見るようになる。
それは企業の成長にとって本当に良いことなのだろうか。
海外投資家から見ても、日本市場の信頼性に関わる
日本市場を拡大したいのであれば、海外投資家からの資金も必要だ。
海外の投資家が日本企業を調べる。
決算書を読む。
技術力を分析する。
将来性を評価する。
そして日本株を買う。
その流れを増やしたいはずだ。
しかし、
「企業が出した正式な決算より、アナリスト予想との差の方が重要です」
という市場になればどうだろう。
日本企業のファンダメンタルズを分析する意味そのものが薄れてしまう。
これは日本市場の活性化や国際化に水をかけることになりかねない。
コンセンサスをなくせと言っているのではない
ここは誤解してほしくない。
私はコンセンサスをなくせと言っているわけではない。
アナリスト予想も必要だ。
レーティングも必要だ。
市場には様々な予想があっていい。
ただし、それはあくまで、
「投資判断材料の一つ」
であるべきだ。
企業の正式な決算書より上に来るものではない。
問題は、
「コンセンサスが予想ではなく、正解の数字のように扱われていないか」
ということだ。
今回、私は実際に意見を送ることにした
そこで今回、この問題について、
三井金属をはじめ企業側、
東京証券取引所、
金融庁、
日本証券業協会、
それぞれに意見を送ることにした。
企業側には、
「企業努力が第三者のコンセンサスだけで否定される市場について、企業側からも問題提起してほしい」
東証には、
「決算発表前後の価格形成や極端な値動きを検証してほしい」
金融庁には、
「新NISAや資産運用立国を進めるのであれば、市場の質についても考えてほしい」
日本証券業協会には、
「証券会社やアナリストが作るコンセンサスが、過度に市場を支配していないか検証してほしい」
と伝える。
株価を上げてほしいわけではない。
下落を禁止してほしいわけでもない。
市場は上がることもあれば下がることもある。
それが株式市場だ。
ただ、
企業が正式に発表した決算を読むことより、
市場参加者が作った予想数字を当てることの方が重要になってしまったら、
それは「投資市場」ではなく、
「予想当て市場」になってしまう。
N+の視点
株式市場とは、本来、
良い企業に資金が集まり、
その資金で企業が成長し、
企業の成長によって投資家も利益を得る。
そういう場所だったはずだ。
企業と投資家をつなぐのが株式市場だ。
ところが、その間に存在する「予想」が主役になってしまった。
企業よりコンセンサス。
決算よりコンセンサス。
成長よりコンセンサス。
そんな市場になれば、最後に離れていくのは個人投資家だと思う。
そして個人投資家が離れれば、企業も困る。
企業が困れば、日本経済も困る。
結局これは、
「株価が下がって腹が立つ」
という小さな話ではない。
日本がこれから本当に資本市場を育てられるのか。
企業の成長に国民のお金を循環させられるのか。
海外から投資資金を呼び込めるのか。
その根本に関わる問題だと思っている。
企業の決算書を真面目に読む人が報われない市場にしてはいけない。
コンセンサスは予想である。
決算は結果である。
この当たり前の順番だけは、忘れてはいけないと思う。
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