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【川崎市】地域コミュニティの拠点・学校から、未来へとつながるまちづくりを。

 2024年7月1日市制100周年を迎える川崎市。全国に先駆けて地域のつながり強化に取り組み、さらに近年は学校を拠点として家庭・地域が連携しながら未来を担う子どもたちの成長を支えていく、コミュニティづくりを積極的に進めています。これまでの取組についての成果や課題、さらなる未来に向けての展望などを、小田嶋 満 教育長に伺いました。

様々な課題を乗り越え、地域コミュニティ拠点であり地域の大切な財産でもある学校施設の有効活用を推進

教育長職に就く前に、中学校の教員・校長を務め、平成29年から2年間、川崎市宮前区の区長を経験しました。区長時代、大きく分けて、3つの政策として、地域包括ケアシステム、新しいコミュニティづくり、防災への取組を進めてきましたが、こうした地域で支え合うまちづくりにおいても、学校は地域コミュニティの拠点としての位置づけが大きく、地域の大切な資源であると感じていました。ただ、その際に課題となっていたのが、学校施設をどのように活用していくか、どのように地域と学校とのつながりを強めていくかの2点。そこで教育長となり、この課題としっかり向き合おうと、昨年「学校施設の有効活用」「学校・地域連携」という2つの役割を軸にした地域教育推進課を新設しました。

学校の有効活用については、子どもたちの安心安全を大前提にセキュリティや個人情報の管理を徹底しながらも、利便性の向上などをICTの活用でカバー。それによって実現を目指しているのが、校庭や体育館以外の利用頻度が低い特別教室等を地域の方に開放する「Kawasaki教室シェアリング」です。また、都市部ということもあり満足にボール遊びができない公園が多い中、体を動かしたいという子どもたちの“やりたい”思いに応えるために「みんなの校庭プロジェクト」として放課後の校庭開放も実施。そこでは大人によるルールの押し付けや必要以上の管理で窮屈な思いをしないよう、子どもたちが主体となってルール作りを行い、自由にのびのび遊べる居場所となっています。令和6年度からは、全市立小学校で校庭開放が実現する予定です。

さらに、学校施設等を活用した既存の取組として「地域の寺子屋事業」もあり、川崎市内各地に広がっています。こちらは、OBを含めた PTA、町内会などの地域の方が協力して立ち上げた実行委員会や、中学校区地域教育会議、総合型地域スポーツクラブ、NPO団体、学校運営協議会など、様々な形態の団体が運営しています。地域の方などに公募して寺子屋先生となった大人が学習をサポートしたり、共に体験活動を行ったり、子どもたちを見守るという役目をもつことで、子どもたちだけでなく大人の居場所にもなっています。

各区に熱意ある人材と自治体をつなぐ拠点を設置。ゆくゆくは子どもが成人して見守る側に回るという地域循環へ

こうした子どもの成長に必要な「経験」や「体験」を誰もが積めるプロジェクトを継続的に実施するにあたり、今後課題となってくるのは人材の確保と育成です。校庭開放等について現段階で行政側が行っているのは、あくまで場の提供のみ。学校教育の中だけでさまざまな体験機会を提供することには限界もありますし、現時点で熱心にプロジェクトに関わってくださっている人たちも、いずれは高齢となっていきます。学校負担の軽減と高齢化による人材不足に対応するには、次を担う人材をどう発掘するかを常に考えておかなければなりません。

ただ川崎市ではもともと全国に先駆けて学校と地域とがつながる「地域教育会議」という組織を構築し、地域で子どもたちを見守り・育てるという視点が根付いており、区長の経験から、実際に市民活動の盛んなエリアも目の当たりにしてきましたので、市民団体をはじめとするやる気があって動きたいという人はたくさんいることはわかっていました。あとは、熱意ややる気があっても埋もれている人材をどう発掘し、どう既存の取組や活動などとスムーズにつなげていくか。川崎市ではソーシャルデザインセンターを設置して、そこを拠点に各区独自の関係性づくりや取組も進んでいますが、子どもたちを社会全体で育む仲間集めにも取り組んでいきたいと考えています。

また、川崎市では、人間としてのあり方・生き方教育にも力を入れているのですが、そこには自主・自立や、みんなと一緒に生きていく共生・協働の精神を育てることという一般的なキャリア教育だけでなく、「私たちのまち川崎」というシビックプライドへつなげていくという独自視点を加えています。進学や就職でいったんは川崎を離れていく子どもたちも少なくありませんが、成長の過程で川崎市や身近な地域のことをよく知り、色々なプロジェクトにかかわって地域への関心やつながりを強めていくうちに郷土に対する愛着が芽生え、将来的には川崎市に戻り住みたくなって欲しい。そんな想いも込められています。ゆくゆくは子どもたちが成人して今度は子どもを見守り、地域の発展のために力を尽くす側へ、そんな地域の好循環が生まれることが理想形です。

多様な背景を持つすべての子どもたちが、互いを認め合いながら貴重な「経験」や「体験」を積める居場所になっていくのではないか

そもそも川崎市は工業地帯として発展し、様々な地方の方、外国の方を迎え入れてきた歴史的背景があり、“多様性は力”という意識のもとまちづくり・地域づくりに取り組んできました。近年も外国人の人口増加に伴い、ますます多国籍化が進んでいます。だからこそ川崎市では教育施策においても、根幹に人権尊重教育があり、子どもの権利条例を全国に先駆けてつくり、子どもの権利を大事にしながら教育を進めてきたという実績もあります。今の子どもたちを取り巻く課題のひとつとして、多様なバックグラウンドや価値観をもつ子どもがおり、家庭や学校の授業だけでは成長に必要な「経験」や「体験」を積み残したまま大人になっていくケースも少なくありません。こうした背景から、川崎市が現在取り組んでいる学校施設の有効活用や学校を拠点とした地域づくりは、そういった意味での格差対応にもつながり、すべての子どもたちが意図的・計画的に「経験」や「体験」を積める貴重な場になっていくだろうと期待しています。

来年は市制100周年ですが、川崎市はすでに次の100年を見据え、将来像を示すブランドメッセージを策定しています。それは「colors,Future!いろいろって未来」。まさに多様性を認め合い、つながり合うことで、新しい魅力や価値観を生み出そうという意味が込められています。ロゴマークの光の三原色が象徴するように、一人ひとりそれぞれにカラーが違うからこそ、重なり合ったときにさらに明るく鮮やかになったり、混ぜ方によっていろんな色に染まったり、無限の可能性を持っているということです。

歴史的節目を迎えるにあたり、我々のこれまでの取組に対する効果も少しずつ見えてくることと思います。大きな変化が現れるのはもっと先の先だと思いますが、まずは走りながら子どもたちの状況がどう変化したかを捉え、課題に対しては都度改善していく取組が必要だと考えています。また、学校や教育のあり方、地域というものの捉え方は、時代に合わせながら変化していくことが大事です。これまでのやり方に囚われすぎずイメージとしては「緩やかな関係づくり」。多くの事例を持つNPOをはじめ市内外の様々な団体・企業と連携・協働しながら、それぞれのノウハウを我々の取組に活かしつつ、地域循環が活性化するような共に支え合う地域づくりに努めていきます。