全国の子どもたちから届いた「やってみたい!」の声――その多くが“当たり前の願い”だった理由
放課後NPOアフタースクールでは、子どもたちの「やってみたい!」の声を起点にその願い・思いを応援する“スキを応援企画”をスタートし、昨年の夏、全国の子どもたちからたくさんの声が寄せられました。
今回は、その声から見えてきた子どもの居場所現場のリアルと、そこに隠れていた“当たり前にも思えるけれども、簡単ではない願い”についてお届けします。
集まった「やってみたい!」に感じた、小さな違和感
「ドッジボール大会をしたい」「昆虫展を開きたい」「みんなでお菓子作りをしたい」――
全国から集まった応募総数は79件。低学年から高学年まで、さまざまなアイデアが届きました。
内容を分類してみると、最も多かったのは「遊び・楽しさ」と「友達・つながり」を求める声。この2つで、全体の半数以上を占めていました。
「みんなでトランプをしたい」
「学校でかくれんぼ大会をしたい」
「昆虫を集めて展示したい」
どれも子どもたちらしい、ワクワクする声です。
続いて「挑戦・自己表現」「環境・設備」「学び・スキルアップ」などが挙げられ、
特に「居場所をもっと広くしたい」「水遊びができる場所がほしい」「しずかな時間をつくりたい。」など、環境改善を望む声が目に留まりました。
実際に寄せられた、このような子どもたちの声を見て、最初は少し意外に感じました。
もっとユニークで、特別なアイデアが多いのではないかと想像していたからです。
しかし実際に、子どもたちが求めているのは、特別な体験ではなく、
「みんなで遊びたい」「友達と一緒に過ごしたい」
といった、とても身近な願いでした。
この結果は、私たち大人側の「子ども像」を、そっと問い直すものでした。

子ども第三の居場所「みらくる」で聞いた子どもたちの本音
なぜ、こうした当たり前にも感じてしまう願いが、これほど多く集まったのでしょうか。
その背景を探るため、東京都青梅市にある、子ども第三の居場所「みらくる」で、子どもたちに話を聞きました。
▼子ども第三の居場所「みらくる」について

小学生〜高校生まで、誰でも無料で利用ができる、子どもたちの居場所。学校や家庭とは違う”子どもでいられる場所”として、子どもたちが自由に過ごし、遊び、学び、つながることができます。
みらくるを利用する子どもたちが寄せてくれた「やってみたい」の声は、
「友達とプールで遊ぶ」
「お昼寝タイム」
「季節に合わせて遊ぶ」
などで、直接話を聞いてみると、子どもたちの言葉はとても率直で、飾らないものでした。
――なぜ友達とプールをしたいの?
「今年はいっぱい水遊びができた。友達と水遊びをしたら楽しいと思った。もっと友達と一緒に遊びたい。」
――みらくるのどんなところが好き?
「おかしやおにぎりが食べられるのがうれしい。ボードゲームでみんなと遊べるのも楽しい。」
――どんな思いで書いたの?
「みんなでワイワイ楽しく遊びたい。友達とパーティをしたい。」

一つひとつの言葉は、決して特別なものではありません。しかし、その背景にある共通していた願いは
「もっと友達と一緒に過ごしたい」という気持ちでした
みらくるは、学校や学年を越えて子どもたちが集まる場所です。
学校が違えば、放課後に約束して遊ぶことは簡単ではありません。
だからこそ、この場所での時間が、子どもたちにとって大切な「つながりの場」になっています。
高学年になるほど、強くなる「つながり」への意識
高学年の子どもたちからは、こんな声もありました。
「学年を問わず仲良くなれる場がほしい」
「学校では上下関係があるが、ここでは関係なく過ごせる」
「みんなで何か同じことをやった方が話しやすく、関係も深まる」
ただ遊びたいというだけではなく、人との距離感や関係性を大切にしている様子が伝わってきます。
一方で、「静かに過ごせる場所もほしい」といった声もあり、自分のペースで過ごせる環境へのニーズも見えてきました。
みんなで遊ぶ時間も、一人で過ごす時間も、どちらも必要であることを、子どもたち自身が感じていることがわかりました。
「やりたくても、できない」その理由
そして、運営スタッフへのヒアリングを通じて見えてきたのは、
「子どもたちのやりたいことの声を受け止めたい。でもなかなかそこまで手が届かない。」という現実でした。
・安全面の不安:広い場所がない、見守る人手が足りない
・予算不足:材料や道具をそろえる費用がない
・スタッフの人手不足:人員が限られていて準備が難しい
こうした課題は、みらくるに限らず、全国の居場所に共通しています。
また、放課後NPOアフタースクールが2023年に行った「小学⽣の放課後の過ごし⽅に関する調査」では、「放課後に友達と遊ぶのは週1回以下」が7割を超えるという結果も出ています。
習い事や勉強での忙しさ、遊び場の減少など、子どもたちの「自由な時間・空間・仲間」は少しずつ失われつつあり、「みんなで遊びたい」という声は当たり前のようで、実は満たされにくくなっている願いの一つのようです。
子どもたちの声は、現代の放課後のあり方そのものを映し出しているのかもしれません。
それでも「やってみたい」をあきらめない
スキを応援企画は、「子どもの声を起点に、子どもたち自身が主体となって進めていく」ことを大切に設計した取り組みです。
子どもの「やってみたい」という声をもとに、その実現プロセスも含めて子どもたちとともにつくっていく。
そこには、子どもの声を社会に届けていくという意図があります。
今回、みらくるを訪問しヒアリングを行う中で印象的だったのは、この考え方が、みらくるの現場で大切にされている姿勢と重なっていたことでした。
みらくるでは、子どもたちの気持ちを尊重し、過ごし方を子ども自身が選べる環境づくりが行われています。
大人が主導して何かを決めるのではなく、子どもたちの声を受け止めながら、一緒に考えていく。
今回の企画の趣旨を共有した際にも、その進め方に共感し、前向きに取り組んでいきたいという声がありました。
実際に現場で感じたのは、「子ども主体」という言葉は、単なる方針ではなく、日々の関わりの積み重ねによって実現されているということです。
子どもたちの声に耳を傾けること。
すぐに答えを出さず、一緒に考えること。
そうした関わりがあるからこそ、子どもたちは安心して自分の思いを表現し、自然とつながりを生み出していくのではないでしょうか。

今回のスキを応援企画は、青梅市の「みらくる」で実施することが決定しました。
子どもたち自身も「やってみたい!」と前向きで、
高学年が低学年を支えながら、「みんなで決めて、みんなで実現する」プロセスが動き出していきます。
イベントそのもの以上に、その過程こそが子どもたちの成長の機会になっていて、価値がある――
それも今回の取り組みの特徴です。
「声を聴く」ことの意味
私たちはつい、「より良い体験を提供したい」と考え、大人主導で物事を進めてしまいがちです。
しかし、今回改めて感じたのは、「実現すること」以上に、「声を聴くこと」の重要性でした。
「何を実現するか」ではなく、「誰の声を起点にするか」ということ。
「みんなで遊びたい」
その一言の中には、つながりや安心を求める気持ちがぎゅっと詰まっています。
その声を丁寧に受け止め、一緒にやってみることが子どもたちの未来につながっていくのではないでしょうか。
次回予告――子どもたちと「実際にやってみた」
集まった「やってみたい!」は、ここでは終わりません。
大人が決めるのではなく、子どもたち自身が考え、選び、動く――
次回の記事では、実際に子どもたちと一緒に取り組んだ様子と、その中で起きたリアルな変化をお届けします。
「声を聴く」から「一緒にやってみる」へ。
子どもたちの「やってみたい」が、どのように形になっていったのか。ぜひご覧ください。
子どもたちの「やってみたい」を支えるために
子どもたちの声を形にするためには、安全な環境や人材、継続的な運営基盤が必要です。
今回見えてきた「やりたいけどできない」という課題も、多くの方の支えによって少しずつ解決に近づいていきます。
スキを応援企画は、株式会社エポスカードとのコラボレーションによって実現しています。「アフタースクールカード」のご利用を通じて集まる寄付金が、子どもたちのアイデアを形にする活動を支えていきます。子どもたちの“やってみたい”を応援する一歩として、ぜひご検討ください。
▼アフタースクールカードの詳細はこちら
文・プロボノライター/寺部晃司
