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3. ケアマネジメントにも利用者負担が入る時代へ――住宅型有料老人ホームから始まる制度変更

はじめに

ケアフル居宅介護センターの管理人です。この記事は財務省が令和8年4月28日に発行された「持続可能な社会保障制度の構築」という資料の内容をまとめたものになります。

今回は、ケアマネジャーにとってかなり大きなテーマです。

それは、ケアマネジメントにも利用者負担が入る時代が来るのかという話です。

これまで居宅介護支援では、利用者さんがケアマネジメントに対して直接自己負担をすることはありませんでした。
利用者さんや家族から見ると、ケアマネは「相談してもお金がかからない人」という感覚が強かったと思います。

もちろん、実際には介護報酬として居宅介護支援費が支払われています。
ただ、利用者さん本人が窓口で1割や2割を払う仕組みではありません。

しかし、財務省資料では、ケアマネジメントへの利用者負担導入が論点として示されています。
特に今回注目したいのは、住宅型有料老人ホームの入居者に係る新たな相談支援類型を設けたうえで、利用者負担を導入するという方向性です。財務省の資料では、住宅型有料老人ホーム入居者に係るケアマネジメントについて、新たな相談支援類型や利用者負担導入が論点として示されています。

これは、居宅介護支援事業所にも、住宅型有料老人ホームにも、そして現場のケアマネジャーにも大きな影響がある話です。

今回は、なぜ財務省がケアマネジメントの利用者負担を論点にしているのか。
なぜ住宅型有料老人ホームから始まるのか。
そして、ケアマネジャーはこれから何を意識する必要があるのかを整理していきます。

なぜケアマネジメントはこれまで自己負担がなかったのか

まず確認しておきたいのは、居宅介護支援に利用者負担がないことには理由があるということです。

ケアマネジメントは、介護保険サービスを適切に使うための入口です。
もしケアマネジメントに自己負担があると、費用を気にして相談を控える人が出る可能性があります。

相談を控えれば、必要なサービスにつながりにくくなります。
結果として、状態悪化や家族介護の限界につながることも考えられます。

そのため、これまでは利用者さんがケアマネに相談しやすいように、居宅介護支援には自己負担を求めない仕組みが続いてきました。

現場感覚としても、これは大きかったと思います。

利用者さんや家族は、費用を気にせずケアマネに相談できる。
ケアマネも、必要に応じて訪問し、相談を受け、サービス調整や関係機関との連絡を行える。
この無料相談に近い仕組みが、在宅介護を支える一つの土台になってきました。

ただ、財務省の視点では、ここに別の問題意識があります。

それは、ケアマネジメントだけ利用者負担がない状態が、制度全体として妥当なのかという問題です。

財務省が見ているのは「給付と負担のバランス」

財務省資料の全体に流れているのは、社会保障制度を持続可能にするという考え方です。

介護サービスの利用者負担についても、前回の記事で見たように、2割負担の対象拡大が論点になっています。
その延長線上に、ケアマネジメントの利用者負担もあります。

財務省から見ると、介護サービスには利用者負担があるのに、ケアマネジメントには利用者負担がない。
この仕組みは、利用者にとって相談しやすい一方で、給付費の抑制や公平性の観点からは見直し対象になりやすいのだと思います。

さらに、ケアマネジメントに自己負担がないことで、利用者さんや家族がケアマネの業務を「無料で何でも相談できるもの」と受け止めてしまう面もあります。

もちろん、相談しやすさは大切です。
しかし、ケアマネの業務範囲が広がりすぎ、通院付き添い、買い物、入退院支援、家族調整、各種手続き支援まで、何でもケアマネに頼まれるようになると、現場は疲弊します。

財務省資料では、ケアマネによる相談対応や保険外サービスとの関係も論点になっています。介護保険サービスと保険外サービスの組み合わせや、ケアマネによる通院付き添い等の相談・要望対応について、費用徴収の考え方に自治体差があることも示されています。

つまり、ケアマネジメントへの利用者負担導入は、単に「お金を取るかどうか」だけの話ではありません。
ケアマネの仕事の価値や範囲を、制度上どう位置づけるのかという話でもあります。

なぜ住宅型有料老人ホームから始まるのか

今回の資料で特に注目すべきなのは、ケアマネジメントの利用者負担が、まず住宅型有料老人ホームの入居者に係る相談支援類型として示されている点です。

なぜ住宅型有料老人ホームなのでしょうか。

背景には、住宅型有料老人ホームの位置づけの難しさがあります。

住宅型有料老人ホームは、制度上は施設サービスではありません。
入居者は在宅扱いとなり、外部または併設の居宅介護支援事業所がケアプランを作成し、訪問介護、通所介護、訪問看護などを組み合わせて生活を支えます。

しかし実態としては、建物内で生活し、同じホーム内の入居者が、同じようなサービスを利用し、介護付き有料老人ホームや特別養護老人ホームに近い形で生活している場合もあります。

つまり、制度上は在宅。
でも実態としては施設に近い。
ここに財務省は不均衡を見ているのだと思います。

財務省資料では、住宅型有料老人ホームについて、施設介護に近い実態があるにもかかわらず在宅介護として扱われている不均衡、ケアマネジメントの役割軽視、画一的ケアプラン、限度額いっぱいのプランなどが問題視されています。

この問題意識から、住宅型有料老人ホームに関しては、通常の居宅介護支援とは異なる新たな相談支援類型を設け、そこに利用者負担を導入するという方向が出てきているのだと思います。

住宅型有料老人ホームで問題視されていること

財務省資料で住宅型有料老人ホームが問題視される理由は、いくつかあります。

一つ目は、ケアプランの画一化です。

同じホーム内の入居者に、似たようなサービスが同じような回数で入っている。
本来は一人ひとりの状態、生活歴、希望、家族状況、医療ニーズ、認知症状、ADLに応じてプランが作られるべきです。

しかし、ホームの運営や併設サービスの都合に引っ張られると、ケアプランが個別性を失いやすくなります。

二つ目は、限度額いっぱいまでサービスを設定するプランです。

もちろん、必要があれば限度額いっぱい使うこと自体が悪いわけではありません。
重度の方、独居に近い状態の方、医療ニーズがある方、家族支援が乏しい方では、サービス量が多くなることもあります。

問題は、必要性が明確でないまま、限度額いっぱいまでサービスが設定されているように見える場合です。

三つ目は、ケアマネジメントの独立性です。

住宅型有料老人ホームと、訪問介護事業所、居宅介護支援事業所が併設・関連している場合、ケアマネが本当に利用者本位でサービスを選べているのかが問われます。

利用者さんにとって本当に必要なサービスなのか。
ホーム側の運営効率が優先されていないか。
同一法人のサービス利用に偏っていないか。
代替手段を検討しているか。

こうした点が、今後さらに見られる可能性があります。

ケアマネジメントに利用者負担が入ると何が変わるのか

では、ケアマネジメントに利用者負担が入ると、現場では何が変わるのでしょうか。

一つ目は、利用者さんや家族が、ケアマネに対してこれまで以上に「対価」を意識するようになることです。

「お金を払っているのだから、もっと動いてほしい」
「相談料がかかるなら、必要最低限でよい」
「何をしてくれているのか分かりにくい」
「ケアマネに払う意味があるのか」

こうした声が出る可能性があります。

二つ目は、ケアマネ自身が、支援内容を説明する必要性が高まることです。

これまでもケアマネジメントの価値を説明することは大切でした。
しかし、利用者負担が入れば、利用者さんはよりシビアに見ます。

ケアマネが何をしているのか。
なぜ訪問するのか。
なぜ担当者会議が必要なのか。
なぜモニタリングをするのか。
なぜサービス事業所と連絡を取るのか。

こうしたことを、分かりやすく伝えなければならなくなります。

三つ目は、相談対応の線引きが重要になることです。

ケアマネジメントに負担が入ると、
「では、どこまでがケアマネジメントなのか」
という話が出てきます。

介護保険上の相談援助。
サービス調整。
給付管理。
モニタリング。
家族との連絡。
医療機関との連携。
通院付き添い。
手続き代行。
生活上の細かな依頼。

どこまでが介護保険上のケアマネジメントで、どこからが保険外・別サービスなのか。
この整理がますます必要になると思います。

居宅介護支援事業所への影響

住宅型有料老人ホームから始まる制度変更だとしても、居宅介護支援事業所全体に無関係ではありません。

なぜなら、住宅型有料老人ホームに関わる居宅介護支援事業所は多いからです。

特に、住宅型有料老人ホームと併設している居宅介護支援事業所、またはホーム入居者を多く担当している事業所は、今後の制度変更の影響を強く受ける可能性があります。

もし新たな相談支援類型が設けられれば、報酬体系、利用者負担、業務内容、記録、説明方法、契約書類などが変わる可能性があります。

また、利用者負担が導入されれば、利用者さんや家族への説明も必要になります。

さらに、ケアプラン点検や実地指導でも、住宅型有料老人ホーム入居者のプランはより注目されるかもしれません。

居宅介護支援事業所としては、今のうちから次の点を確認しておく必要があります。

住宅型有料老人ホーム入居者のケアプランに個別性があるか。
サービス量の根拠を説明できるか。
同一法人サービスに偏っていないか。
本人や家族の意向をきちんと確認しているか。
モニタリング記録に生活実態が残っているか。
ホームの都合ではなく、本人のニーズに基づいた支援になっているか。

これらは、制度変更を待たずに今から見直せる部分です。

ケアマネの価値を説明できるかが問われる

ケアマネジメントに利用者負担が入る議論は、ケアマネにとって厳しい話です。

一方で、見方を変えると、これはケアマネジメントの価値を説明する機会でもあります。

ケアマネは何をしているのか。

単にサービスを入れているだけではありません。
利用者さんの生活を見ています。
病気、ADL、認知症状、家族関係、経済状況、住環境、サービス利用状況を見ています。
本人と家族の意向を調整しています。
サービス事業所や医療機関と情報共有しています。
状態変化に応じて支援を見直しています。
重度化を防ぎ、家族介護の限界を見ています。

しかし、これらは外からは見えにくい仕事です。

だからこそ、利用者負担が入るなら、
見えにくいケアマネジメントを、利用者さんや家族に見える形で伝えること
が必要になります。

「ケアマネは何をしてくれているのか分からない」と言われないためには、記録だけでなく、日々の説明も大切です。

担当者会議の意味。
モニタリングの意味。
サービス調整の意味。
ケアプランの意味。
状態変化を見ている意味。

こうしたことを、専門用語ではなく、生活の言葉で説明できることが大切になると思います。

まとめ

今回は、財務省資料に示されたケアマネジメントへの利用者負担導入について、特に住宅型有料老人ホームとの関係から整理しました。

これまで居宅介護支援では、利用者さんがケアマネジメントに対して直接自己負担をする仕組みはありませんでした。
しかし、財務省資料では、住宅型有料老人ホーム入居者に係る新たな相談支援類型を設けたうえで、利用者負担を導入することが論点として示されています。

背景には、住宅型有料老人ホームが制度上は在宅扱いでありながら、実態としては施設介護に近い面があること。
また、画一的ケアプラン、限度額いっぱいのサービス設定、ケアマネジメントの独立性などが問題視されていることがあります。

ケアマネジメントに利用者負担が入れば、利用者さんや家族は、これまで以上にケアマネの仕事の価値を意識するようになると思います。

その時に大切なのは、ケアマネ自身が、
自分たちの支援は何を守っているのか
を説明できることです。

住宅型有料老人ホームに関わるケアマネは、今後ますます、個別性、必要性、独立性を説明できるケアプランが求められると思います。

次回はどんな内容をお伝えするのか

次回は、
住宅型有料老人ホームのケアプランはなぜ問題視されるのか――画一的プランと限度額いっぱい問題
というテーマで整理していきます。

今回の記事では、住宅型有料老人ホームがなぜ制度変更の出発点になっているのかを見ました。

次回はさらに踏み込んで、
なぜ住宅型有料老人ホームのケアプランが画一的になりやすいのか。
なぜ限度額いっぱいのプランが問題視されるのか。
ケアマネはどのように個別性と必要性を説明すればよいのか。

居宅介護支援事業所と住宅型有料老人ホームに関わるケアマネジャーに向けて、実務目線で考えていきます。

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