全ナラティブに潜むHidden Meanings,創造的解釈の世界,ニュース報道を例に
表紙写真:Blues narratives (Blues Wallpapers-Wallpaper Caveより)
全てのナラティブ(narratives)にはhidden meaningsがある。改めて言うまでもないが、hidden meaningsとは、コミュニケーションにおいて表層メッセージではなくその深層に隠れたメッセージを指す。レトリック上の効果を高めるために意図的に隠す場合が多いので、状況から分析・推論を通して判断するが、後述するように、何らかの公理が存在する。
言語シンボルは言うに及ばず非言語的シンボルにhidden meaningsは存在する。30 Hidden Meaning Examples That Will Surprise You - BitGlintと称するサイトがその代表的なものをリストしているが、例として、以下のようなジャンルのnarrativesをネット上で拾ってみた。





私たちの日常生活においては、言語様態のnarrativesが圧倒的に多い。言語様態であれ非言語様態であれ、全てのnarrativesには表層には現れない"hidden meanings"がある。
そのことを念頭に、今回は言語narrativesにおける"hidden meanings"について述べるわけだが、言語といっても広いので、ここでは私たちの生活に多大なインパクトを与えるニュース報道のnarrativesに絞る。ニュースは、新聞の場合は読んで字のごとくで、テレビやYouTubeの場合は、見て聞いた通り、かと思いきや、なんと、以下のサイトが、
NYT Connections Hints Uncovering Hidden Messages in Journalism
も述べるように、新聞やテレビの報道はhidden meaningsに満ちており、それを読み解く術が必要だ。そこから、実は本当に伝えたいのは"hiddenn meanings"、すなわち、隠されたメッセージであることが分かる。それをミスするとそれぞれのnarrativesの真意は伝わらないということだ。
確かに上記のサイト以外にもニュースnarrativesにおけるhidden meaningsに関する多くのサイトが見つかった。AI Overviewでは関連ネットサイトを総合し、以下のように要約している:
「ニュースにおける「隠された意味」は、メディア言説の中でも特に興味深い。ニュースには、目に見えない複数の意味や暗示的なメッセージが含まれており、記号論的な分析を通し解読できる。ニュース見出しの文脈における記号、シンボル、イメージの機能から、行間に隠された深い意味を明らかにする。こうした諸要素の相互作用が、ニュースの記号的な織物(tapestry)を形作り、イデオロギーや信念を暗黙のうちに受け手に伝達することを可能にする。」
分かったようで分からないまとめだが、以下のCBS のYouTubeニュース報道を例に挙げ少々解説する。
King Charles, Donald Trump exchange speeches at Windsor Castle
2025年9月18日にウインザー城でのチャールズ国王とトランプ大統領がスピーチを交換している。25分58秒に亙る動画だ。最初の8分55秒までのチャールズ国王のスピーチを聞かれたい。10分31秒から17分13秒までのトランプ大統領のスピーチを聞かれたい。
両者ともそれぞれの立場からこれまでの両国関係についてのnarrativesを語る。特に、チャールズ国王はアメリカ独立戦争当時の国王ジョージ3世に遡り、英米間の歴史を同言語を話すパートナーとして"democrcy"を確立してきたことを強調している。
その真意"hidden meaning"は何か?筆者は筆者なりに数々の”hidden meanings"が浮かんだ、読者はどうか?視聴する人により微妙に違うはずだ。でも、"hidden meanings"を感ずるだろう。後半は現地女性レポータによる、どちらかと言うと通り一遍的でアメリカの主要ネットワークらしからぬな木で鼻をくくったかのような両スピーチに関するリポートが。
そう言えば、CBSは4か月前に、
President of CBS News resigns as Trump lawsuit hovers over network
が起きており、
また、9月1日には、PBSに
Congress cut $1.1 billion in funding for PBS and NPR. Here's ...
が、
この報道直前には、ABCに
Jimmy Kimmel show off air over Charlie Kirk comments - CNBC
が起きている。
また、その翌日には
が報道されることを知っていことただろう。
単なる推察だが、であるとしたら、差しさわりのない報道に徹するのも無理はない。ただ、リポーターの表情すなわちbody languageという非言語様態narrativesから局側の、そしてリポータ自身の"hidden meanings"の存在が痛々しほど明らかに伝わってくる。
それは、チャールズ国王、トランプ大統領にも、また、周囲のゲストの様々な非言語的narrativesからも感じ取れる。読者もチャールズ国王、トランプ大統領をはじめ、参列者の顔の表情などbody languageをご覧あれ。
筆者が感じた"hidden meanings"は何かって?野暮だ、言わずにおこう。
筆者が”hidden meanings"を推論した公理の一つPaul Griceの Cooperative Principle and Implicaturesを簡単に紹介するにとどめたい。日常会話におけるhidden meaningsの分析を行ったクラシカルな研究だが、未だに効力がある。以下、簡単に説明する。
Griceは、効果的なコミュニケーションには、コミュニケータが守る協調の原理(Cooperative Principle)があり、それには4つの公理(Maxims)があると提唱する
4つの会話の公理
1. 量の公理(Maxim of Quantity) – 適切な情報量を与える
情報を少なすぎず(必要分を)伝えること。
情報を多すぎず(不要な細部を避け)伝えること。
A: Tell me what you did yesterday.
B: I played baseball. That's about it.
Violation (違反 too much information):
A: Tell me what you did yesterday.
B: I got up at 6 a.m. because I had to wake my kids, but they didn’t get up. So, I turned the TV on as loud as possible. Then I washed my face, brushed my teeth, had breakfast, checked my phone, watered the plants… and it just went on and on..
2. 質の公理(Maxim of Quality) – 真実を述べる
偽りと思うことを言わない。
根拠のないことを言わない。
A:Tell us about your presidency.
B: It’s fine so far despite some challenges.
Violation (違反 exaggeration/implausible)
A:Tell us about your presidency.
B: It is the best and most beautiful presidency that anyone can ever imagine.
3. 関連性の公理(Maxim of Relation) – 関連性を維持する
話題や文脈に関連した発言をする。
A: Is John still dating Mary?
B: I think they have broken up.
Violation (違反):
A: Is John still dating Mary?
B: Lately, John flies to New York City quite often.
4. 方法の公理(Maxim of Manner) – 明確に述べる
曖昧、不明瞭を避ける。
簡潔で秩序立てて話す。
これは、話し方だ。筆者は、Geofrey LeechがPrinciples of Pragmatics | Geoffrey N. Leech で触れた敬語も(honorifics)はここに入ると思っているので、以下はその例。例えば、A(英国国王)とB(訪問中の他国元首)とが
A: Mr. President, this is your second visit to the United Kingdom.(Speech)
B: Your Majesty, thank you for graciously welcoming us once again.(Speech)
Violation(違反, あまりにもカジュアルでroyal protocolに合致しない)
A: Mr. President, this is your second visit to United Kingdom.(Speech)
B:Yup, thanks for inviting us again. (Speech)
しかし、 実際には、これらの公理を「意図的に破る」ことがある。その例が皮肉、風刺、ジョーク。聞き手は字義通りではなく、背後にある状況に照らし合わせsono真意を解釈する。グライスは含意(implicature)と呼ぶが、ひらったく言えば"hidden meanings"だ。
例えば、3.関連性の公理の違反例Bの発言は、敢えて、関連性のないことを言い、そこに想定されていることを伝えているわけだ。
物事には必ず何かが想定されている。文法例ならいくらでもある。中学校で非人称代名詞"it"は先行する名詞(名詞句、名詞節も含む)を指すと習ったが二つ以上あったらどうする?例えば、ずぶ濡れのコートを脱いだ子供に母親が"Put the coat in the bathtub because it's wet."と言ったとしよう。ここでの"it"はbathtubではなくcoatであることは明らかだ。文法的にはどちらもありうるが、濡れているのはコートで、bathtubは水が張られておらず乾いていることは常識から容易に想像できる。ここでは常識が想定されているのだ。
JohnがMaryと付き合い上手くいっているのなら、常識からして、そんな頻繁にNYCに行くはずがないことが想定されている。Bは敢えて関連性の公理に違反することにより、二人が上手く行ってないことを伝えたかったわけだ。(余談だが言語障害(aphasia)の症例にはそれが出来ないケースがある。)
以上の4つのどの公理を意図的に破る(violate)ことにより、想定される"hidden meanings"を伝えることができる。これは皮肉・諧謔であり、ジョークであり、何かを強調したいときによく使われるレトリカル・ストラッテジーで、英国の伝統と言ってよい。故Chuchill首相はそのマスターだ。
Churchill’s Humor: from “Churchill in His Own Words”
上記のチャールズ国王のスピーチにはこうしたユーモアが溢れ、そこに、筆者は諧謔的な"hidden meanings"を読み取った。ちなみにABCのレギュラーを下ろされたJimmy Kimmel氏は現代の名手だ。YouTubeでほぼ毎日見ていたのに残念!
ちなみに、"dementia"などで認知機能に障害を受けた場合、Griceの4つの公理自体が守られない表現が続出する。また、意図的に違反されたnarratives の"hidden meanings"を解釈することも、narrativesを生成することも不可能になる。そうした例は思考の神経学が障害の症例として沢山集めている。量の公理では物事を聞かれる"I don't know"が頻出する。質の公理では大言壮語が多くなる。英語学的に言うと最上級が頻発する。マナーの公理では発言が極度に直情的になるとも言われている。
最後にblues narrativesのhidden meaningsについて。筆者はWilliam Ferris著

に収録されている、ミシシッピー・デルタの1960年代の歌詞を分析した。
映画「アラバマ物語」

に描かれているような1950年代、1960年代の深南部のミシシッピー・デルタ地帯の悲惨な背景の下でブルースマンは小さなシショットガンハウス で即興で歌うが、そこには様々な"hidden meanings"がある。江戸時代に自由な発言を許されなかった江戸の庶民が、小唄に歌舞伎に浮世絵というnarrativesを通して”hidden meanings"を伝えたのと同じ何かを感じた。日本の庶民に「~のブルース」が浸透していったのはその為か。真珠は貝の身に異物を移植され、それを癒そうとしてできた結晶の塊と聞く。こうした芸術も同じ境遇で育まれた真珠だ。その真珠はhidden meaningsだ。(2025年9月20日記)
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