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ポツダム宣言への日本側の返答「黙殺せよ」が米側に"ignore"や"reject"と訳されて悲劇がー機械翻訳考(その5ー2)

表紙写真:Potsdam Declaration (Famous Photo) - On This Dayより


ポツダム宣言への日本側の返答「黙殺せよ」が米側に"ignore"や"reject"と訳されて悲劇がー機械翻訳考(その5ー1)」の続き(その5-2)です。

言語コミュニケション論からの一分析、遂行文分析performative analysis

そもそも宣言/布告(declaration)とは、言語哲学者J.L. AustinがHow to Do Things with Wordsで提唱した遂行文(performative sentences/performatives の一種です。[1]

J.L. Austin
J. L. Austin, Philosophical Papers Third Edition

遂行文(performatives)とは、その発信が単なる叙述・報告ではなく(“do not ‘describe’ or ‘report’ or constate anything at all”)、真偽でもなく( “are not ‘true’ or ‘false’”)、ある行為そのものの(“uttering of the sentence is, or is a part of, an action”)となる文のことです。

結婚式で発せられる、新郎の“I,___, take thee, ____, to be my wedded wife.” そして、新婦の“I,___, take thee, ____, to be my wedded husband.”は、結婚という行為そのものです。

進水式で発せられる“I name this ship Queen Elizabeth”は当該の船の命名という行為そのものです。

これらの例はいずれも宣言 (declaration)という遂行文の一種です。1941年のルーズベルト大統領のPresident Franklin D. Roosevelt Declares War on Japan (Full Speech) | War Archives においては、最後の文

“On Sunday, December 7, 1941, A state of war has existed between the United State and the Japanese empire.” 「1941年12月7日、戦争と言う状況が合衆国と日本の間に存在することとなった。」

をもって宣戦布告という宣言行為が成立しました。これは単なる状況描写ではなく、この状況が存在することとを認識したと声明することにより、宣戦を布告という行為の遂行です。「嘘」とか「本当」とかの対象になる単なるお話ではありません。

遂行文の特徴

遂行文の統語構造は、通常一人称主語Iと遂行動詞(performative verb, 例 “declare” 、“bet”、“name”)の直説法一人称単数現在能動形で成る肯定文です。ただし、それは原則で、上例の宣戦布告の遂行文のようにそうでない場合もあります。

John Searleのspeech act theory〈言行為理論)

Austinの理論の影響を受け、遂行文(performatives)を言行為(speech acts)と言い換えてspeech act theory (Speech Acts Theory and Pragmatics) [2]に発展させたJohn Searleは、“Indirect Speech Acts”(1975.In Syntax and Semantics Vol. 3 Peter Cole and Jerry Morgan eds. [2] pp.59-83)と称する論文で、 二人称の主語、遂行動詞ではない動詞、疑問形、否定形、などの統語構造を持つ文が、間接的に遂行文となる例を列挙しています。

Patten lecture: John Searle - "The Logical Structure of Human ...より

Speech Act Theory  Speech Act Theoryと称する無料サイトはSearleのspeech actsを下表のように分類しています。

           The PERFORMATIVE CATEGORIES (Speech Act Theory )  
                                                                                                                  Category                            Action                                  Example
Representatives  (陳述)  Tell how things are                 Concluding
Directives(指令)              Encourage action                   Requesting
Commissives(約束)           Commit speaker to action      Promising
Expressives(心理的表出)   Express psychological state    Thanking
Declarations(宣言)           Change the state of affairs      Christianing

広い分野で研究されており、Speech Actsにもう少し詳しい説明があります。哲学、言語学、AI、政治学、法学などを専攻する大学生には必須です。後述しますが、アメリカの立法府上院、下院議員議員らは文字通り立法lawmakersと呼ばれますが、法科大学院lawschoolsで全員speech actsを学んでいることでしょう。法律はそれぞれの国民国家の許可・禁止・罰則に関するspeech acts集です。

筆者自身がGeorgetown Universityで書いた博士論文のタイトルはA Genrative Analysisi of the English Modalsでspeech actsに触れました。興味がある読者にお読みいただければ幸いです。別稿「J・サール"The Chinese Room"「中国語の部屋」でStrong AIを否定...意識科学ハード・プロブレム ?イージー・プロブレム?(5)」でも触れています。

ポツダム宣言への日本側の返答「黙殺せよ」が米側に"ignore"や"reject"と訳されて悲劇がー機械翻訳考(その5-3)」に続く


[1] A I(自然言語処理)、神経学(言語障害)の必読書です。アメリカ大学院留学希望の読者は読みましょう。
[2]同上。
[3この論文集]Syntax and Semantics Vol. 3は、間接な遂行文に関連する重要な論文を集めています。特に、同書収録のH.P. Griceの“Logic and Conversation” (pp.41-58)は、アメリカ大学院留学を考えている読者は是非読んでおきたい論文です。多分野で引用されます。


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鈴木佑治 N.Yuji Suzuki サポートいただけるととても嬉しいです。幼稚園児から社会人まで英語が好きになるよう相談を受けています。いただいたサポートはその為に使わせていただきます。