たのしいぞ郷土資料館「足立区立郷土博物館」
足立区郷土博物館が約2年半の改修を経て2025年4月26日にリニューアルオープンしました。コンセプトは「郷土資料館から美術博物館へ」だってよ?!
1.施設概要
・施設名称 足立区立郷土博物館
・営業時間 午前9時から午後5時まで(入館は午後4時30分まで)
・入館料 200円
・休館日 月曜日
・写真撮影 OK
2.まずはホームページで予習
どんな郷土資料館面(づら)をしているのか。まずはホームページで予習していこう。
サイト自体は足立区のフォーマットを踏んだだけの簡単なものだがトップページに勢いがあって”それらしい面構え”になっている。ん?入館料も有料だし北区の飛鳥山博物館に通ずるものがあるぞ?
なるほど。足立区と北区は隣接している。お隣さん同士影響を受けあうのが郷土資料館というものだ。
さておきリニューアルだ。
気になる2点
その1:郷土資料館の基本型を捨てた
郷土資料館の基本は通史展示だが、足立区立郷土博物館は前回(2009年)のリニューアルで常設展示を刷新し江戸以前をバッサリ斬っている。
その2:郷土資料館から美術博物館へ
自称・郷土資料館ウォッチャーとしては「郷土資料館から美術博物館へ」このワードは大いに響いた。
「ビビビ美アダチ」という足立区文化遺産調査PRマンガマンガが解説してくれている。
冒頭はこうだ
きっかけは
「うちにある屏風をちょっとみてくれない?」という
一本の電話だった。
「「!!足立に琳派の絵師がいる!!」」
琳派の絵師による屏風が発見されて学芸員さんたちはどよめく
ここから区の文化遺産調査が本格的に始まる―――。
ごめん。全然ビビビ美とこない。そんなに度肝を抜くことなの?そもそも琳派てなぁに?学芸員さんの興奮を享受できず悔しいったらない。
3.取り急ぎ琳派について調べる

琳派には狩野派のような連綿と続く師弟関係などは存在しないらしい。
キーワードは「私淑」
— 尊敬する人に直接には教えが受けられないが
— その人を模範として慕い、学ぶこと
要するにパクリ画てこと?
尾形光琳って超・琳派してるイイ!となれば好きなだけ真似しようぜ!真似た先に”オレの琳派”を見出そう!そんな流派のようなのだ。
え?おもしろいんですけど
4.アクセス
最寄り駅は東京メトロ千代田線北綾瀬駅、北綾瀬駅からは約1.5kmで公式ではバス推奨だ。
この地を体感するべくわたしはもちろん歩くよ。5月にして最高気温は30度に近かった。汗が頬を伝う。郷土資料館巡りに厳しい季節は目前だ。
5.外観と周辺環境
わたしこれが足立区初上陸。

海抜0メートル表記に戦慄した
もしも今ここで大地震に遭ったらどこへ逃げるべきか!?

ピーアーク(パチ屋)の立体駐車場が最適解と見た
郷土博物館は戸建てが密に建ち並ぶ住宅街に突如登場。後背には緑がたわわに茂る東渕江庭園というお庭を従えている。存在感のある施設だ。


重厚で立派な建物はまるで徳川美術館のようだ。「江戸えど」とした外観は品川歴史館にも酷似する。
今回のリニューアル(大規模改修工事)を請け負った株式会社三浦工務店さんのサイトで改修ビフォーアフターを見ることができるのだが
どこが変わった?!改修前後の外観写真はサイゼリヤの間違いかという難易度よ。是非見てみて!
6.いざ、入館

入ってすぐのエントランスホールが美術博物館へのシフトチェンジを訴えてくる。だがしかし、わたしは郷土資料館ウォッチャーだ。まずは左手の部屋の郷土博物館パートへ向かう。

唐突に足立区の江戸がはじまる
ビビビ!と来た展示ポイント
ジオラマだいすき!
日暮里・舎人ライナーの高野駅東側に広がっていた農村模型

耳慣れない下品ワードにも心躍る
門をくぐって右手、庭の右下の外風呂にご注目

んお!?

おおお!!
引き出しを引くとTIPS的にちょっとした解説やクイズがあるのだ。

すごくイイ!
足立区は昭和30年ころまでは農地が幅を利かせていた。
東京に隣接していなければ成立しない「ツマモノ栽培」にビビビ!ときた


刺身盛り合わせの脇にいる赤紫色のハートは「紫芽(ムラメ)」というのだそうだ。外食産業が発達する大都市に隣接するからこそ成立する農産物だ。
つづいてエントランスホールの美術博物館パートへ

興味深かったのは「千住の酒合戦」
江戸後期文化12年(1815)に江戸飛脚宿の主人中屋六右衛門の還暦を祝い行った大酒呑み大会だ。よほど盛り上がったと見えて2年後の1817年にも開催する。

この様子を著名な絵師や俳諧師や戯作者を招き漢詩や文を書いてもらって絵巻物にしちゃう。文雅な催しなどと言っているが、やっていることは大酒呑み大会ですからね。馬鹿馬鹿しくて実によいではございませんか!

開催中の企画展にも「千住の酒合戦」の展示があった。

大盃は琳派の絵師・酒井抱一、収める箱は狂歌師・太田南畝による箱書き。どうだと言わんばかりの逸品だ。実物を見ていると酒合戦の真意が分かった気がした。
まずは還暦を迎えた六右衛門さんの承認欲求を満たしたい。「たくさんの人があつまった!さす六!(さすが六右衛門)」と言われるための”ガヤ”が欲しい。なにをするか。
大食いでも力自慢でも相撲大会でも、分かりやすくて人が集まって話題になればなんでもいい。

そのイベントは住人に娯楽を提供することにもなる。いわんや社会活動だ。主催者(このときは坂川屋鯉隠こと青物問屋「坂川屋」のあるじの山崎利右衛門さん)はおおいに見栄をはり名を上げたことだろう。
そしてお祝いのハイライトは「文雅や著名人との交わり」となる。うまくできている。
それにしても大酒呑み大会の催しというのは古くは平安時代からあったらしい。「911年6月15日:亭子院酒合戦」宇多上皇が貴族を競わせてゲロまみれ・・・なんなんだこの国は!最高か!
企画展「香りたつ琳派の美」で琳派をかんじる。
これはどこかでみたかきつばた・・・

私淑の産物だ!
光琳の燕子花はなかなか超えられるものではない。琳派って現代では難しい世界観だ。

私淑とパクリのあいだでわたしの頭はぐらぐらした。
7.ミュージアムショップあり
受付カウンターにてオリジナルグッズを販売している。


神馬小禽七図(随身庭騎図)のマグネット400円
(冷蔵庫用マグネット収集家です)
グッズを買ったら千住宿400年記念シールステッカーが貰えた。太っ腹!
タダ同然(1枚・50円)のポストカードを歌川広重の絵(梅にうぐいす・足立区立郷土博物館所蔵)の封筒に入れていただき恐縮なり。そして博物館の建物をプリントしたショッピングバッグもうれしい。
8.庭園「東渕江庭園」隣接タイプの郷土資料館

コレ、郷土資料館あるあるアルネ!
博物館の奥にある日本庭園「東渕江庭園」はボランティアの方々が丁寧に手入れをされていて足立区のオアシス的な存在だ。


郷土博物館といい東渕江庭園といい、この界隈で際立った存在感を放っている。土地の名士が寄贈したのかな?なんて予想していたが、崇高なる都市計画による産物なのでありました。
9.寄り道は・・・
北綾瀬にて寄り道をする小粋なお店を見つけることはできず。

千代田線・新御茶ノ水駅の改札を出たところでお買い得(1パック350円)になっていたイチゴを買いました。あまくておいしかった。
10.最後に

千住宿のジオラマもよかった
一生見ていられるヤツです
足立区立郷土博物館、気になるポイントを振り返ってみよう。
その1:郷土資料館の基本型を捨てた
江戸以前は清々しいほどにバッサリ斬っていた。ここまで思い切った郷土資料館は今まで訪問した中では初めてだ。新しい郷土資料館の息吹をかんじた。
その2:郷土資料館から美術博物館へ
「「!!足立に琳派の絵師がいる!!」」
学芸員さんたちの驚嘆に共感できず悔しいと申したが
-足立くんだりで
-琳派とか
-(ヾノ・∀・`)ナイ 笑
そんな感触を得たが口にしていいものか迷った。
博物館の企画展で美術誌『國華』の特集ページを読むことができた。
酒井抱一(江戸後期に名を残す琳派の絵師)の画風が、千住在住の画家たちによって大正初めまで継承され、
その作品を求める顧客たちが当地にいたことが明らかになったのである。
(中略)千住の旦那衆は、また会を組織して自分たちの所蔵品の展覧を何度も行い、自宅には季節ごとに掛幅や屏風を飾り、記念行事のために制作を依頼するなど
江戸の商人や豪農たちのように、
生活の中で美術品を楽しんでいた様子もわかる
おわかりいただけただろうか。最後の一文ににじむ「足立くんだり」感。『國華』が言ってんだから「足立くんだりで琳派」ってことだろうよ!
でもね。常設展を見学すると(見せ方で誘導されているところもあるかもしれないが)華のお江戸に隣接するゆえに農業で豊かに発展していった経緯が分かる。「足立くんだりで琳派」などと言わせないこの土地の説得力を感じることができた。

足立区郷土博物館たのしいよ。是非!
