ぬめ、はじめての便秘受診~そのCTが、私と医師の関係を変えた~|Excelお休み
**注意書き(※この記事には便秘表現が含まれます)**
いつもの現場、いつもの日常
また医師への指示確認の連絡がやってきた。どんな連絡をしたって、すでに返事が予想できる。どんな言葉を投げかけても、返ってくるのはただ一つ、あの反応。
「お忙しいところすみません、ぬめぬめ病棟のぬめですが、ぬめ号室のアントニオぬめ山さんの本日の点滴ですが…」
「はいはいはいはい〜」
「お忙しいところすみません、ぬめぬめ病棟のぬめですが、ぬめ号室のぬめ谷ぬめ平さんの本日のICで、ご家族の来院時間についてですが…」
「はいはいはいはいはいはい〜」
「ぬめがぬめでぬめぬめですが〜」
「はいはいはいはいはいはいはいはい〜」
時々、「はいが多いわ先生」と突っ込むと、「は〜い」と、返ってくる。
そして、「壊れかけのラジオかよ」と突っ込むと、「レイディオね」と、さらっとネイティブな発音で突っ込まれる。
もう、お互いにやりとりが漫才みたいになってきた。
そして、この何気ない日常のやり取りがある日変化を迎える。
運命は、思いもよらぬ形でこの急展開を迎えた。まるで静かな海が突然荒れ狂い、全てが一変してしまったかのように…その瞬間、私たちの間に何かが、確かに変わった。
運命の日、その少し前
私は、便秘に悩まされていた。
しかもなかなかの古株。年季が入ったタイプの便秘である。
市販薬でごまかしながらやってきたけれど、最近じゃもう、薬が効かないどころか、「今日はちょっと…違う」と腸が口をきいてくるレベルであった。
…そろそろ本腰入れて戦うべきかもしれない。
ということで、私はあの「はいはい先生」を受診することにした。
なにしろ、いつも「はいはいはいはい〜」の軽快リズムで指示を返してくれる先生である。適当にお薬出してくれて「お大事に〜」の流れだろう、と、正直軽い気持ちだった。
が。
受付を済ませ、診察室に入った瞬間、その認識は裏切られた。
先生、急に真顔。え?怖い。
問診が、やけに丁寧。そしてまさかのCT撮影。
え?CT?便秘で?腸のスキャンってそんなに即決でされるの?と戸惑っている間に、検査着に着替えていた。
CT検査が終わり所見がついたあと、先生と並んでモニターを見る時間がやってきた。
看護師の私にだってそこに何が映っているかなんてわかっている。診察室に再びはいる前から私は悶絶していた。
映し出されたのは、私の腸。そう、私の──中身。
先生がマウスポインタ―でクルクルしながら、穏やかに一言。
「ぬめさん、なかなかぎっしりですね」
…な、なにそれ。なんでそんな詩的な表現で詰まり具合を実況してくるの?
しかも優しい声。
しかもしかも笑わず真面目で。
(や、やめてぇええええええ・・・)
先生が真剣なのはわかってる。医師として当然の対応なのもわかってる。
でもでもでも、そんな…あんなに優しく、丁寧に、穏やかに、自分の腸の状態を実況されるの、精神的に裸より恥ずかしいのよ。
──逆に、つらい。
私は思った。
やめてよ先生、そんな優しくされたら、もう、ボケられないじゃない…。
この関係、どこに着地すればいいのよ。
そして、運命の日
運命の日、私は電話をかけた。
「お忙しいところすみません・・・」
いつもの「はいはいはい〜」が耳に届く。
「・・・ぬめぬめ病棟のぬめですが」
「・・・!!あ、ぬめさん?」
まるで目の前にいるかのように、突然名前を呼ばれた。
そして、
「うんうん、どした?どした?」
え?ちょっと待って、今のはどういうこと?
「え、あ、はい(笑)。ぬめぬめ病棟のぬめなんですけど・・・」
私が戸惑いながら話すと、電話の向こうからは、妙に優しげな、そしてどこか甘さを帯びた声。
「うんうん、いいよぉどうしたの~?」
なんだそれ?急に口調が変わって、「きもっ」なぜ…どうしてこんなに優しいんだ?
そして私の心の中に、ふと浮かんだ思いがある。
(え?私、いつの間にか恋人になったのかしら…)
あまりに急すぎて、頭が追いつかない。そんなことあるわけない、いや…でもこの感じ、ちょっと…?
その瞬間、私は気づく。
(私がこの先生の患者だからか!!)
私は一人で納得し、少しだけ恥ずかしくなった。
そしてその瞬間電話の向こうで、
「ぶほっ」
私の戸惑いを感じ、はいはい先生も無意識の自身の変化に気づいたらしく、おそらく電話の、向こうで血を吐いた。
もう他人には戻れない
……それ以来、私は電話で名乗る前に、必ず0.5秒、間を置くようになった。
「(……名乗りたくない)ぬめですが」
なぜって、「はいはい先生」の中ではもう、私は“看護師ぬめ”じゃない。
“CTにぎっしりだった便秘のぬめさん”として認識されている気がしてならないのだ。
そう思い始めると、指示確認のたびにため息がでる。
だって、電話越しの声が優しい・・・。
前までは「はいはいはいはい〜」で機械的だったくせに、最近では
「ぬめさん?うんうん、どうしたの?」
「そっかそっか~、いいよいいよ」
「了解。で、あれからちゃんと出てますか?(勤務中に聞かないで~)」
誰!?
今、誰としゃべってます?
“私の腸”とお話していらっしゃいます?
あのCT画像を共に見てしまった私たち。
「中身」を曝け出した私と、真摯にそれを受け止めた医師。
もはや裸より恥ずかしい境界を越えてしまった。
それ以来、私は思う。
CTで"う💩こ"を見たら、もう他人には戻れないのかもしれない──。
あとがき
普段は「看護×Excel」で"ちょこっと便利"な情報をお届けしていますが、今回は"ちょこっと便秘"にまつわるお話でした。便秘もExcelも、時にはちょこっとした工夫で解決できるかもしれませんね(なんつって💩)。
▼初心者向けExcel解説の連載や、他の脱線しまくりエッセイもどうぞ。
🌱電話越しの優しさに、便秘以上に詰まりそうになったぬめですが、
みなさんのスキやフォローが、下剤よりやさしく効きます🍵
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