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「奥さん」ではなく、名前で呼んだ日のこと


私は訪問看護をする中で、ひとつ心がけていることがあります。

それは、

ご家族のことをできるだけ名前で呼ぶことです。

「奥さん」

「娘さん」

「息子さん」

そう呼ぶことももちろんあります。

でも私は、できるだけ

○○さん。

△△さん。

と名前で呼びたいと思っています。

それは、その人にも名前があって、人生があると思っているからです。

ご家族にも人生がある


訪問看護は利用者さんを支える仕事です。

でも実際には、利用者さんだけを見ているわけではありません。

その隣には奥様がいることがあります。

毎日介護をしている娘さんがいることもあります。

仕事と介護を両立している息子さんがいることもあります。

訪問看護は家族とも深く関わる仕事です。

だから私は、ご家族のことも大切にしたいと思っています。

時々、

利用者さん中心になりすぎてしまうことがあります。

でも、ご家族にも生活があります。

仕事があります。

悩みがあります。

疲れもあります。

利用者さんを支えているご家族もまた、一人の人です。

だから私は、

「利用者さんの奥様」

ではなく、

「○○さん」

として関わりたいと思っています。

名前には物語がある


訪問看護をしていると、

名前の由来を教えていただくことがあります。

「春に生まれたからこの名前なの」

「祖父の名前から一文字もらったのよ」

「優しい子になってほしくて付けたの」

そんな話を聞くことがあります。

名前には願いがあります。

思い出があります。

家族の想いがあります。

その人が生まれてからずっと呼ばれてきた名前です。

私たちは普段、何気なく名前を呼んでいます。

でもよく考えてみると、

名前ってすごいものだと思うのです。

生まれた時に贈られた最初のプレゼントみたいなものかもしれません。

だから私は、

名前を大切にしたいと思っています。

「奥さん」と呼ぶようになっていた


以前、とある利用者さんの奥様がいました。

私は最初、その方のことを自然と名前で呼んでいました。

特別な理由があったわけではありません。

ただ、その方にも名前があるのだから、

名前で呼ぶのが自然だと思っていたのです。

でもいつの間にか変わっていました。

周りの看護師が

「奥さん」

と呼んでいるのにつられて、

私自身も

「奥さん」

と呼ぶようになっていたのです。

自分でも気づかないうちに。

そしてその頃には、

最初に持っていた心がけも少し薄くなっていました。

忘れかけていた頃に言われた言葉


ある日のことです。

その奥様がふと私に言いました。

「前に私のこと、名前で呼んでくれたでしょう?」

突然の言葉に驚きました。

正直、その時の私はもう名前で呼んでいませんでした。

だから少し申し訳ない気持ちにもなりました。

すると奥様は続けました。

「すごくびっくりしたの」

「でも嬉しかったのよ」

私はさらに驚きました。

私にとっては何気ないことだったからです。

名前で呼ぶこと。

ただそれだけのこと。

でも、その方は覚えていてくださったのです。

そして嬉しかったと伝えてくださったのです。

名前で呼ばれるということ


考えてみれば当然なのかもしれません。

私だって、

「看護師さん」

と呼ばれるより、

「紬さん」

と呼ばれた方が嬉しい気がします。

もちろん

「看護師さん」

という呼び方が悪いわけではありません。

でも名前で呼ばれると、

一人の人として見てもらえているような気がします。

それは利用者さんも同じ。

ご家族も同じなのかもしれません。

訪問看護では、

ご家族が「介護者」になりやすい。

奥様は「介護する人」。

娘さんは「主介護者」。

息子さんは「キーパーソン」。

そんな言葉で表現されることがあります。

もちろん必要な言葉です。

でもそれだけではありません。

その人には名前があります。

好きなことがあります。

大切にしてきた人生があります。

介護者である前に、一人の人です。

家族もまた支援の対象


訪問看護をしていると、

利用者さんよりもご家族の方が疲れていることがあります。

夜間の介助。

仕事との両立。

将来への不安。

誰にも言えない悩み。

そうしたものを抱えながら生活している方も少なくありません。

だから私は、

ご家族のことも大切にしたいと思っています。

利用者さんだけではなく、

ご家族も含めて支えること。

それも訪問看護の大切な役割だと思っています。

一人ひとり名前がある


あの日、

「名前で呼んでくれて嬉しかった」

と言われたことは、

今でもよく覚えています。

そして同時に、

自分が忘れかけていた大切なことを思い出しました。

利用者さんにも名前がある。

ご家族にも名前がある。

そしてその名前には、

それぞれの人生があります。

名前に込められた願いがあります。

歩んできた時間があります。

だから私は、

これからもできるだけ名前で呼びたいと思っています。

それはほんの小さなことかもしれません。

でも、

「利用者さんの奥様」ではなく、

「○○さん」として関わること。

その積み重ねが、

その人の人生を大切にすることにつながる気がしているからです。

訪問看護を続ける中で、

これからも大切にしていきたい私の小さなこだわりです。🌷

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