寝室に赤は使うな、の正体
──寝室に赤は使うな
インテリアの本や、風水の話で
聞いたことがある言葉だと思う。
でも、
それは本当に、赤という色が原因なんだろうか。
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色には、理論や意味づけよりも先に、
心身に触れてくる力がある。
私たちは色を
ただ「見ているだけ」のつもりでも、
呼吸や脈拍、体の緊張にまで
知らないうちに影響を受けている。
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色は、味まで変えてしまう

たとえば、
同じコーヒーでも、
カップの色によって
味の印象が変わることが知られている。
オックスフォード大学の研究では、
ピンクのマグカップで出されたコーヒーは
「甘みがある」と感じられやすく、
緑色のマグカップでは
「酸味が強い」と評価される傾向があった。
黄色のマグカップは、
「甘さと酸味の両方」を連想させたという。
味が変わったわけじゃない。
変わったのは、
視覚から入る色の情報だけだ。
こうしたことは、
飲み物の印象だけに限らない。
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空間の色と、身体の反応
色彩に関する研究では、
赤い部屋に入ると
脈拍数や呼吸数が上がり、
暑く感じやすくなることが分かっている。
また、短い時間しかいなくても、
実際より長く滞在したように
感じる傾向もある。
一方で、
青い部屋では脈拍や呼吸数が落ち着き、
涼しく感じ、
時間が短く感じられる。
色は、気分だけでなく、
身体の反応そのものを
変えてしまう。
私たちは色を見ると、
無意識のうちに
筋肉を緊張させたり、
ゆるめたりしている。
その緊張の度合いを数値化すると、
パステルカラーのような
やさしい色は低く、
赤のようなビビッドな色は
高くなることが分かっている。
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ここまでくると、
「赤=情熱」「赤=活力」という説明の
別の顔が見えてくる。
赤は、
身体を起こす色でもある。
赤の正体が分かってくると、
「赤を使うか・使わないか」よりも、
赤がもたらしている作用を、どう扱うか
という話に近づいてくる。
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赤との、ちょうどいい距離
ポイントは、
視界に入る量と、距離感。
壁一面やカーテンのように、
面積が大きく、
寝転んだときに常に目に入る場所は、
赤の作用が強く出やすい。
一方で、
クッションの縁、
アートの一部、
花や小物など、
視線を向けたときにだけ存在する赤なら、
アクセントとして心地よく働くこともある。
だから、
寝室に赤を使うとしたら、
空間を染めるためじゃなく、
スイッチとして使う感覚がちょうどいい。
赤が気になるなら、
まずは
彩度や明度を落とした赤から試すのもひとつ。
真っ赤ではなく、
赤の成分を少しだけ含んだ色。
それくらいの距離がいい。
たとえば、
・朝起きて最初に目に入る小物
・身支度の一角にあるアート
・夜は視界から外せる場所
寝室の赤は、
主役よりも脇役。
常に浴びる色ではなく、
「触れる瞬間を選べる赤」。
そうすると赤は、
疲れさせる色ではなく、
背中を軽く押す色になる。
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同じ方向に働く色たち
赤がしんどく感じるとき、
それは「色が悪い」のではなく、
すでに覚醒しすぎている状態なことが多い。
このとき、
赤と同じ方向に働く色は、
できるだけ避けたほうがいい。
それは、自然の色から少し離れた、
強いコントラストや
はっきりした輪郭を持っている色のこと。
自然の中の色は、
にじみやグラデーションがあって、
長く浴びていても、
身体を張りつめさせにくい。
一方で、
・鮮やかすぎるオレンジ
・コントラストの強い黒×白
・強い黄色
・冷たく冴えた青
こうした色は、
注意を向けたり、
切り替えを促すための
人工的な明瞭さを持っている。
元気なときには心強くても、
疲れているときには
無意識に緊張を強めてしまう。
赤ほど分かりやすくはなくても、
身体を起こす方向に働くことがある。
「赤じゃないから大丈夫」ではなく、
どの色も、同じ作用を持つことがある
という視点を持てると、
疲れたときの空間選びが、
少し楽になる。
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赤を引いたあとに、残る色
じゃあ、
落ち着かせてくれる色って、どんな色だろう。
覚醒とは反対に、
身体を「ほどく」方向に働く色がある。
それらは、
目に入った瞬間に
呼吸が深くなるような感覚がある色のこと。
・彩度が低い色
・白に少し色を混ぜたような色
・輪郭や境界が、ややあいまいな色
こうした色は、
視線を一点に集めすぎず、
筋肉や神経を
ゆっくりゆるめる方向に働く。
具体的には、
・くすんだベージュ、
・やわらかいグレー、
・ミルキーなブルー、
・ほんのり黄みのある白。
強く主張しないけど、
「冷たくもしない」色たち。
色で気分を上げようとしなくていい。
無理に元気にならなくてもいい。
落ちているときに必要なのは、
平静を崩さずにいられる色だ。
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色は、
良し悪しで選ぶものじゃない。
今の状態に対して、
強すぎるか、ちょうどいいか。
赤は、
効き目のはっきりした色だ。
だからこそ、
使う日と、引く日がある。
どちらが正しいでもなく、
その距離感を自分で選べるようになることが、
暮らしを整える、
ひとつの方法なんだと思う。
