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NY郊外のパブリックビューイングは盆踊りみたいだった

いつもの公園に行くと

祝日の金曜日の午前中、3歳の娘といつもの公園に遊びに行くと、芝生エリアにドカンと大型スクリーンが設置されていた。
看板を見ると、「FREE PUBLIC VIEWING EVENT」と書いてある。どうやら午後3時からサッカーワールドカップのアメリカ代表対オーストラリア代表のパブリックビューイングをやるらしい。
それを見た娘は「サッカー応援したい!」と言って芝生に座り込んでしまった。

確かにアメリカの公園でワールドカップを見れるなんてとても楽しそうではあるけれど、キックオフまではまだまだ時間がある。
「まだ始まらないよ、今日の午後かららしいよ」と何とか説得して、ひとしきりすべり台やブランコで遊んだあと、ひとまず一度家に帰り、また午後に同じ公園に来ることにした。

ユニフォームなんて持ってない

家に帰り昼食を済ませると、さっそく娘は出発しようとする。
僕は「今から行っても暑くて疲れちゃうよ。少しお昼寝して後半途中から見ようよ」と言い、娘を連れてベッドに入ったが、娘は興奮からか中々寝ない。10分おきに「いつ行くの?」と背中に乗って催促してくる娘にしびれを切らし、「じゃあそろそろ行こうか」と言うと娘はベッドの上でジャンプして喜んでいた。

家を出発する直前に、娘が黄色いTシャツを着ているのに気が付いた。オーストラリア代表のホームカラーだ。これはさすがにまずい。わざわざアウェイチームの色の服で地元民の中に飛び込んでいく勇気なんてない。
もちろんユニフォームなんて持っていないので、なるべく赤っぽい服を探して急いで着替えた。

いざパブリックビューイングへ!

祝日だけど仕事日(在宅勤務)の妻に見送られ、娘と僕は、歩いて15分くらいかけて、本日2度目の公園に向かった。
公園の入口に到着すると、遠目からでもたくさんの人が来ているのが分かった。会場が熱気に包まれていることが伝わってくる。
アメリカのサッカー人気はこんなに高かったのかと何だか嬉しい気持ちになった。

芝生エリアに近づいてみると、既に試合の前半が始まっていた。
スクリーンの目の前では、赤白のユニフォームを着た集団が座って応援をしている。
後方では各々自由にキャンプ用の椅子を置いたり、ブルーシートを広げたり、何だか自由でゆったりした雰囲気だ。

いざパブリックビューイングへ・・・?

我々はどこに座ろうか...と考えていると、なぜか娘はスクリーンとは反対の方向をじっと見つめている。娘の視線の先を見てみると、ソフトクリーム、ケバブ、焼きトウモロコシなどのキッチンカーがたくさん並んでいた。

午前中は「サッカー応援したい!」と芝生に座り込んでいた娘は、もはやサッカーのことは忘れ、完全にキッチンカーに心を奪われているようだった。
かくいう僕も、この暑さの中で”ソフトクリーム”の看板を見ていたら、猛烈に食べたくなってきた。サッカーは長丁場だし、まずは甘いものを食べようと売り場に直行した。

店のおじさんにカラフルなチョコチップがついたソフトクリームを1つ注文し、娘に手渡した。
記念に写真を撮影していると、直射日光を浴びてソフトクリームが娘の手にどんどん溶けてくる。僕は慌ててスマホをポケットにしまい、「急いで食べないとなくなっちゃうよ」と言いながら、2人で交互に1本のソフトクリームを食べた。それはそれは美味しかった。
いつもの公園でソフトクリームを食べられるなんて、何て贅沢なんだろうか。

いざパブリックビューイングへ・・・?②

アイスクリームを食べ終え、僕が「じゃあサッカー応援しようか」と言うと、なぜか娘はまた、スクリーンとは反対の方向をじっと見つめている。
娘の視線の先を見てみると、屋台の向こうに、空気で膨らんだ大きな”ふわふわ遊具”が並んでいた。

娘は、またもやサッカーのことは忘れていた。どうしてもあの”ふわふわ遊具”で遊びたいらしい。僕はそろそろ試合を見たかったが、まあ元々娘の希望でパブリックビューイングに来たのだからやりたいようにさせてあげようと、娘の後ろについて進んでいった。

遊び場を目指して、一人でぐんぐん歩いていく娘

ふわふわ遊具に到着すると、既にたくさんの子供たちが遊んでいた。
係員もいなければ何の注意書きもないが、様子を見てみると、どうやら靴を脱いで順番に入っていくらしい。僕が「靴を脱いで...」なんて言うまでもなく、娘はさっさと靴下になり、遊具の中に入っていった。いつの間にか、何でも自分で出来るようになっている。

娘は遊具の中のクッションで飛び跳ねたり、障害物を乗り越えたり、ハイハイでくぐったり、四苦八苦しながらゴールまで辿り着いた。よっぽど楽しかったのか、「もう一回やりたい!」というのを7,8回は繰り返し、このまま日が暮れるんじゃないかというくらい遊んでいた。

娘が入っていった遊具をぼんやり眺めていたら、ふと、”何かものすごい揺れているな...”と感じてよく見てみると、さっきまで遊んでいた幼稚園~小学校低学年くらいの子供たちはいなくなり、代わりに、中学生くらいの男女10名程が、遊具の中で取っ組み合いをしたり、横からダイブして飛び乗ったりしているではないか。

僕はこれは危ないと思い、遊具を上から覗き込んで娘の姿を探すと、娘はバランスがくずれて横向きに倒れ、そのまま揺れに合わせて体が無抵抗でバウンドをしていた。

僕は必死に手を伸ばして何とか娘を救出し、「大丈夫だった?」と聞くと、「もう一回やりたい!」とすごくご満悦な表情をしていた。
僕は「危ないから別の場所に行こうね」と何とか説得をして、靴を履かせて急いでその場を立ち去り、結局いつものブランコやすべり台で遊ぶことにした。

パブリックビューイングには行ったけど

ひとしきり遊んだ後、娘を抱きかかえ、ようやくスクリーンのある芝生に戻ってきた。
試合は2-0でアメリカ代表がリードしており、もう後半終了間際になっていた。僕と娘は芝生横のベンチに座り、水筒の麦茶を交互に飲みながら試合を見た。

ふと周りを見回すと、真剣にサッカーを見ている人もいるが、屋台で買ったビールを片手に芝生で寝転んでいるおじさん、サッカーボールを蹴り合って遊ぶ中学生、シャボン玉を吹く親子など、みんな思い思いのやり方で過ごしている。

パブリックビューイングというと、ユニフォームを着た熱狂的なファンが集まるイメージを持っていたけれど、ここは少し違っていた。
サッカーが好きな人も、そうでない人も、みんなが同じ公園に集まって、それぞれが好きなようにこの時間を楽しんでいるように見えた。
ワールドカップというイベントを中心に置きながらも、誰も置いてけぼりにしないような、アメリカの公園の持つ大らかさがとても心地よかった。

子どもの頃、意味も分からずに友達と集まるだけで楽しかった、盆踊り大会みたいだなあ、なんて思った。
“何をするか”よりも、そうやってみんなで集まることの方が、実は大事なのかもしれない。

結局、応援自体はあまりできなかったけれど、娘と「来てよかったね」なんて自然と言い合えるくらい、公園での非日常のイベントは新鮮で楽しかった。

試合はそのままアメリカ代表が勝利し、公園は歓声と拍手に包まれた。和やかな雰囲気の中、集まっていた人達も少しずつ帰っていく。
僕が「じゃあそろそろ帰ろうか」と言うと、今度は娘が、かき氷屋さんの看板をじっと見つめている。

イベント気分に乗せられて、結局その後、かき氷を買った。娘は好きなだけかけていいというセルフサービスのシロップに興奮し、赤・青・黄色・ピンク・オレンジなど全ての色を一通り注いでいった。
娘は猛烈に甘くなったかき氷を一口だけ食べ、しかめっ面をして、「もうお腹いっぱい。そろそろ帰ろうか」と言いながら、僕にかき氷を差し出してきた。
僕は「なんだこいつ...」と内心思いながら、「甘っ」と言いながらカップに山盛りのかき氷を食べ、底に溜まったシロップを何とか飲み干した。

僕は「じゃあそろそろ本当に帰ろうか」と言い、遊び疲れた娘を抱っこし、冷えたお腹に娘の体温を感じながら歩いて家まで帰っていった。

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