コストコに行くことは、変わらない日常を願うこと
妻の海外赴任に伴い会社を退職し、アメリカで主夫として暮らし始めて約9カ月。
家事もようやく一通りのことが出来るようになってきた。
特に上達を感じるのは、料理だ。
もともと料理は苦手で、日本にいた頃はほとんど妻に任せきりだった。
たまに私が担当しても、なるべく工程が少ないレシピを探し、かつ分量を1ミリ単位で測って正確に作らないと気が済まない。自分に自信がないから細かい違いが怖いのだ。本来15分で終わる料理に、60分もかかるような有様だった。
それがアメリカで主夫になり、日々料理に向き合う中で、少しずつ苦手意識が薄れてきた。
アメリカの食材で料理するのも新しい発見があって面白いし、何より、作ったものを妻や娘に食べてもらえるのが嬉しい。
「美味しい」と言ってもらえることが、今の私のやりがいになっている。
そんな我が家で今、コストコが大活躍している。
私は休日しか車が使えないため(平日は妻の通勤用)、日曜日に一週間分の食材や日用品をすべて買いだめしておく必要があるからだ。
最初は「会費を払ってまで買い物するのってどうなんだろう?」と疑問もあったけれど、いざ使い始めると商品は大容量の割に安いし、何より楽しい。
2キロはあろうかという大きなステーキ肉。
15個入りのクロワッサン。
まな板に乗り切らないくらいのサーモン。
買いたい物が次々と出てくる。
それら諸々をカートに入れて、気が付くといつも200ドルくらい買ってしまう。
「これって本当にお得なのか・・・?」
と一瞬疑いたくなるが、まあちゃんと使い切れば長い目で見ればお得だろう、と自分に言い聞かせる。
帰宅してから、これらを小分けにして冷凍庫をパンパンに埋めると、不思議な安心感が湧いてくる。 献立を考えるのが楽しくなるし、作りがいもある。
本当にお得なのかはさておき、それ以上にこの買い物自体にワクワクしている自分がいる。
家族で行くと、まるでテーマパークのようだ。3歳の娘も、色とりどりのパンやお菓子を見てはしゃいでいる。
そんなふうに買い物を楽しんでいると、商品以上に驚かされるのが周りの「爆買い」ぶりだ。
24本入りのペットボトルの水を5箱も積み上げている人。
巨大なお菓子を山のように買っていく大家族。
ブロック肉をカートいっぱいに詰め込む親子。
「さすがアメリカ、スケールが大きいね」
そんなことを家族と話しながら、私たちも満杯のカートを押して歩く。
レジに向かうと大量のお客さんですし詰め状態。ああ、これはお会計まで30分はかかるな、なんて思いながら、同時に、なんだかすごく良い光景だなと思った。
家族のために、これだけたくさんの食材を買い込む人達。
そこには「これからの数週間も、数ヶ月も、家族みんなで元気でこの食材を食べていく」という、当たり前のような、でも確かな未来への光がある気がした。
この大きな肉をみんなで焼き、大量の水を飲み干すまで、私たちは同じ屋根の下で変わらずに暮らしていく。
レジに並ぶたくさんの家族連れを見て、それぞれの家庭にそんな「続く日常」があることを想像したら、なんだかこちらまで温かい気持ちになってきた。
もちろん、この生活が永遠ではないことも分かっている。
いつか帰国の日が来るし、いま3歳の娘だっていつかは家を出ていくだろう。そのときは、こんなに大きな肉を買うことも、日曜日に必死に切り分けることもなくなる。
そう思うと、少しだけ寂しさもよぎる。
でも、家族で買い物に行って、ご飯を作って、みんなで一緒に食べる。今まさにこの時間が、とても愛おしく感じられる。
また来週の日曜日も、家族でコストコに行こうと思う。
「こんなに大きなお肉食べきれるかな〜」
なんてみんなで話して、今ここにある幸せを、静かに噛み締めながら。
