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《前編》【緊急寄稿:見えない金融の罠——プライベートクレジットファンドの正体】

CMが流れた夜

2026年4月のことだった。

家族と一緒にテレビを見ていた、何でもない日の、何でもない時間。画面に見慣れない企業名が映った。

ブラックストーン。

一瞬、耳を疑った。

以前から調べていた会社だ。世界最大のオルタナティブ資産運用会社。
運用資産は約1兆ドル。
年金基金、政府系ファンド、超富裕層の資金を預かり、不動産、プライベートエクイティ、クレジットファンドを世界中で動かす巨人。そのブラックストーンが、日本のお茶の間でCMを流している。

「え? ブラックストーンがCMしてる?!」

驚きと同時に、不気味な感覚が走った。

後にも先にも、そのCMは一度しか見ていない。
(もっともTVをあまり見なくなったせいかもしれないが。)

しかし、なぜ今、日本でCMを打つのか?
画面を見ながら、この会社の「企み」を疑いの目で追っていた。

その違和感は、正しかった。

💰世界最大の「見えない金融」が日本に降りてきた理由


ブラックストーンのビジネスモデルを一言で言えば、

「機関投資家の資金を預かり、高いリターンを約束する代わりに、換金できない商品に投資する
ことだ。

ここに構造的な問題が潜んでいる。

通常の投資信託は毎日価格がつく。
下がれば売れる。
逃げられる。

しかしブラックストーンが扱うプライベートクレジットファンドは、市場で売買されない。

価格は運用会社が自ら算出する。
解約も自由にはできない。

「見えない」から「安定している」ように見える。


これが巧妙な仕掛けだ。


🏦大和証券という「窓口」


ブラックストーンが日本のリテール市場に本格参入したのは2023年のことだ。
その販売代理として手を組んだのが、大和証券グループだった。

🔑 「ダイワ・ブラックストーン・プライベート・クレジット・ファンド」

という商品名で、大和の窓口から個人投資家向けに販売が始まった。

プライベートとは、非上場を意味する。

つまり株式市場に上場せず、価格が公開されない金融商品だ。
見えないから安全に見える。
それがこの商品の本質でもある。

投資家から集められた資金の投資先の中心は、銀行融資を受けられないスタートアップや非上場企業だ。

通常の銀行が「リスクが高すぎる」と門前払いにした先に、高い金利をつけて貸し付ける

だから年率10%前後という破格の利回りが成立する。

🔑 リターンが高いのは、それだけリスクが高いからだ。

🔑 大和証券の個人顧客は約300万人。

その販売網を使えば、これまで機関投資家だけに販売してきた商品が、一気に個人の手元に届く。

🔑 ブラックストーンにとって、大和は理想的な販売パートナーだった——少なくともそう見える構造になっている


⚠️破格の条件、その裏側

このファンドの謳い文句は、確かに魅力的だ。

年率10%前後の利回り目標。
毎月分配
円建てでも購入可能

定期預金の利率が0.数%の時代に生きてきた日本人にとって、これは目を疑う数字だ。

🔑 わたしは絶対に勧めない。ただし、条件だけ見れば破格であることは認める。


だからこそ危ない。

この条件に食いついているのは、個人投資家だけではないはずだ。
運用難に苦しむ地方銀行、生命保険会社、メガバンクの資金運用部門——
「少しでも利回りを稼がなければならない」
という重圧を抱えた機関投資家たちが、この「旨味」に引き寄せられていると直観した。

ただし、あくまで推測の範囲だ。


🤔では、なぜ今CMを打ったのか?


答えは一つしかない。

機関投資家からの資金調達が、詰まってきているからだ。

しかし、ここで一つの数字を見てほしい。

🔑 BCREDは、2025年第1四半期だけで37億ドルの解約請求を受け、同ファンド史上最大規模の解約ラッシュに見舞われた。

※BCRED=Blackstone Private Credit Fund(ブラックストーン・プライベート・クレジット・ファンド)

機関投資家たちが、静かに逃げ始めている。

そしてもう一つの事実がある。

BCREDは急速な資金流出を防ぐため、通常は発行済み株式数の5%を上限としている四半期ごとの解約枠を、上限を引き上げて、全ての解約請求を受け入れるという、異例の対応を余儀なくされた。

これがゲート条項の実態だ。

通常は「解約できる量を制限する」仕組みが、解約の奔流を前に機能しなくなった。

出口が詰まっている。だから入口を広げる。

その入口として選ばれたのが、日本の個人投資家だった。

🔇なぜ、誰も言わないのか?


不思議なことがある。

これだけの大規模のリスクが水面下で進行しているにもかかわらず、国内の著名な投資インフルエンサーたちはこの話題をほぼ取り上げない。

理由は想像に難くない。
証券会社との提携、セミナー協賛、メディア出演——
金融業界と深く結びついた者ほど、その業界の不都合な真実には触れにくい構造がある。

ちなみにこのファンドは、2026年5月現在も購入可能だ。

✍️この記事を書いた理由


この記事をまとめている今日、2026年5月25日——
日経平均株価が65000円を突破した。

日経史上最高値。
青天井モードに入ったとも見える狂乱の相場だ。

背景はおそらく、イラン情勢の終息期待だ。
アメリカ・イスラエルのイラン攻撃が開始されて以来、相場は原油先物とトランプの発言だけに反応し続けている。他の悪材料には見向きもしない。

そして、プライベートクレジットファンドのことなど、誰も気にしていない。

この強烈な違和感と危機感が、わたしにこの記事を書かせた。

市場が狂乱しているとき、人は見たいものしか見ない。
上がる理由を探し、下がる理由から目を背ける。
リーマンショックの前夜も、そうだった。

わたしはこの記事を、投資家だけに向けて書いたのではない。
銀行に預金を持つ人、生命保険に加入している人、年金を受け取っている人——
つまり、すべての人に読んでほしい。

あなたの知らないところで、あなたのお金に関わる構造が静かに軋んでいるかもしれないから。

しがらみのないわたしのような個人投資家だけが、これを書ける。

だから、書いた。


《つづく》


次回予告:3700億円の設計図

大和証券、ブラックストーン、オリックス銀行。

三者の間に完成しつつある「三角形」の正体と、その三角形が崩れたとき誰が最後に残されるのか——後編で解剖する。



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参考文献:

  • Blackstone Private Credit Fund(BCRED)公式サイト bcred.com

  • 大和アセットマネジメント「ダイワ・ブラックストーン・プライベート・クレジット・ファンド」目論見書(2025年9月)

  • 日本経済新聞「米ブラックストーンの融資ファンド、初の資金流出超」(2026年3月)

  • InvestmentNews「Blackstone BDC flooded with client redemptions」(2026年3月)

  • Morningstar「Blackstone Private Credit Aims to Calm Investor Jitters」(2026年3月)

  • FinancialContent「The Liquidity Illusion: Apollo Triggers Private Credit Panic」(2026年3月)

  • 東洋経済オンライン「日本の長期金利上昇の本質」(2026年5月)

免責事項:

本記事は、公開情報および筆者個人の調査・分析にもとづく見解を述べたものです。特定の金融商品への投資を勧誘・推奨するものではありません。また、特定の金融商品を否定・批判する意図もなく、事実の提示と筆者個人の見解の表明を目的としています。投資の最終判断はご自身の責任において行ってください。本記事の内容により生じたいかなる損害についても、筆者は責任を負いかねます。

本稿で特定の金融機関名や個別ファンド名、その手数料率等に言及していますが、これらはあくまで構造分析の事例として一般に公開されている情報を取り上げたものであり、当該金融商品の購入や保有、あるいはその解約・継続を勧誘・推奨する意図は一切ありません。

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