カフェでイケメンの悩み相談?|デザインのあうんVol.1
こんにちは。d-fractalのデザイナー、Ochiです。
先日、仕事帰りに、なじみのカフェに立ち寄った時のことです。
閉店間際のお店では、午前中で帰ってるはずの今風イケメンアルバイトの今井くんが、一人、ノートパソコンの画面を前に、うんうんと唸っていました。
「あら、今井くん、まだ残ってたの?お疲れさま」
私が声をかけると、彼は、本当に困り果たた顔で、こちらを見上げました。
「あ、Ochiさん…!お疲れ様です。いや、ちょっとパソコンできるって言ったら店長に秋フェアのチラシ作りを頼まれちゃいまして…」
彼のパソコンの画面を覗き込むと、そこには、たくさんの文字と、色と、写真が、ぎゅっと詰め込まれた、とても賑やかなチラシがありました。
伝えたいことがある、その熱意は、すごく伝わってきます。
でも、少しだけ、情報を「盛りすぎ」ているのかもしれない。一番大切な「秋フェアの魅力」が、たくさんの情報の中に、なんだか埋もれてしまっているように、私には見えました。
「そうなんです…。でも、絶望的にダサくて。ダサいのは分かるんですけど、もう、どこをどう直したらいいか…」
その気持ち、痛いほど、分かりました。
d-fractalに入って、まだ間もない頃の、苦い記憶が蘇ってきたからです。
あれは、ある飲食店の、新メニューのフライヤーでした。
当時の私も、良かれと思って、情報をどんどん「足し算」してしまったんです。シズル感のある写真、キャッチーなコピー、シェフのこだわり、お得なセット価格…。全ての情報を、もりもりにして少しでも目立たせようと、飾り立てて。
そして、自信満々で、先輩であるTanakaさんに見せたのです。
彼女は、私のデザインを数秒間、無言で見つめた後、たった一言、こう言いました。
「で、結局、何が一番言いたいの、これ?」
頭をガツンと殴られたような衝撃でした。
良かれと思って足した全ての要素が、お互いの邪魔をして、一番伝えたいはずの「美味しそう!」という気持ちを、殺してしまっていた。その事実に、その時、初めて気づかされたのです。
デザインの世界では、そんな時、まず「引いてみる」ということを試します。
たくさんの情報の中から、「本当に伝えたいことは、なにか?」を見つけ出し、それ以外の要素を、思い切って、引いてあげる。
そうすることで、本当に見てほしい部分が、すっと、際立ってくるのです。
今井くんのチラシも、きっと、ほんの少しだけ「引いてみる」勇気を持つだけで、見違えるほど、素敵になるはず。
「不躾なお願いなのは重々承知の上なんですけど、このチラシが、どうやったらダサくなくなるか、ヒントだけでも、教えていただけませんか!?,
たしかOchiさんってデザイナーさんでしたよね」
彼のその真剣な眼差しに、Tanakaさんに叱られて、悔しくて、でも、目の前が少しだけ開けた、あの日の自分を重ねて、思わず「いいわよ」と、頷いてしまいました。
もちろん、この秋フェアの新作のミルフィーユを味見させてもらう、という約束付きで(笑)。
こうして、今井くんへの、ささやかで不思議なデザインレッスンが、始まることになったのです。
(つづく)
text by Ochi (d-fractal)
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