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関西人、標準語を使おうとして三秒で諦める

「しまったしまった島倉千代子」

新卒だった僕が浴びた、上司からの渾身の関西おじさんギャグである。

笑うべきか。流すべきか。出せたのは、苦笑いだけだった。でも今なら言える。

きっと君は関西人。

間違いなく関西人。

さいでんなー。

ほーでんなー。(①)

……え、すべりました? どうもこんばんは。面白くない関西人代表、尾古森あおです。

あなたは誰ですか。(②)

(元ネタ知らない人へ。①嘉門達夫さんの山下達郎さん「クリスマスイブ」の替え歌。②関西ローカル番組「ちちんぷいぷい」角さんの冒頭挨拶。知らんでも大丈夫)

関東に住み始めて、今年で8年目。標準語も、多少は上手くなった気がする。イントネーションも、馴染んだはずだ。

……はずなのだが。

「ご出身は……?」

少し遠慮がちな質問。

「関西です」

「あぁ、やっぱり」

その笑顔を見るたび思う。あれ?そんなに出てる?

服屋さんで「カッター、カッター」と連呼して、店員さんを困らせたことがある。
こちらでは、刃物を探している人に見えるらしい。

「知らんけど」

とだけ言って、大爆笑されたこともある。会話の最後につけただけなのに。関西では、責任逃れの便利な言葉。関東では、突然現れる謎のワードらしい。

一番困るのは、道案内である。

「そこの通りをビャーッと行って、信号渡って、サッと出てきた交番の前を右に行ったら、ドンと看板出てきます」

完璧な説明だった。少なくとも、僕の中では。擬音は、想像力を助ける優秀な説明方法である。たぶん。

数年テレビをまともに見ていないのに、「芸人さんに詳しいですね」と言われることもある。いや、詳しくない。ただ、関西では芸人さんが日常の風景だった。
朝にも、昼にも、普通にいた。知らないうちに、名前を覚えていた。
実家に帰ると、つい関西の番組をつけてしまう。蓬莱さんや片平さんの天気予報を見ると、「帰ってきたな」と思う。

職場のカラオケで、最後に『探偵!ナイトスクープ』の曲を熱唱するのは、関西あるあるなのだろうか。それとも、僕の周りだけなのだろうか。

知らんけど。

関西という場所は、離れても簡単には抜けない。標準語のつもりで、関西弁が飛び出す。隠しているつもりで、隠しきれていない。

関西人らしくない関西人だと思っていた。
でも、たぶん僕は、かなり関西人だった。

知らんけど。

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