アポロ13号に学ぶ、AIには代替できない力の正体。人に必要な「しなやかさ」と「修正力」
AIの進化は止まりません。
「AIを使えば、大抵のことは何でもできる」 そんな実感が、日々強くなっているのを感じる方も多いのではないでしょうか。
私も、AIを使いまくっています。
確かに、これからはますます便利で、加速度的に発展していく世の中になります。
それと同時に、「AIに仕事が奪われるのではないか」という不安も現実味を帯びてきました。
実際、ただ指示通りに作業をこなすだけの仕事は、これからどんどん厳しくなっていくでしょう。
反対に、フレームワークや教科書の内容を教えるだけのコンサルタントやアドバイザーなども厳しくなりそうです。
なぜなら、マニュアルに沿って正確に処理することや、フレームワークのような決められた論理に従ってアウトプットすることは、AIが最も得意とする分野だからです。
しかし、本当にほとんどの仕事はAIに取って代わられてしまうのだろうか?
そんな問いに対して、私は「そんなことはない」と考えています。
AIがどれだけ賢くなろうとも、私たち人間にしかできない決定的な強みがあります。
それが「しなやかさ(レジリエンス)」と、そこから生まれる「人による修正力」です。
デジタルネイティブの「チャッピー頼み」と、ビジネスのリアル

いまのデジタルネイティブたちの行動を見ていると、実にたくましくもあり、羨ましいとも感じます。
彼らは、わからないことがあれば、当たり前のように「チャッピー(ChatGPT)」に聞きます。
もらった答えを実行してみて、もし違っていたら「またチャッピーに聞けばいいや」と、軽やかにツールを使いこなしています。
まさに、仮説検証を高速に回しているわけです。
このフットワークの軽さは、本当に素晴らしいなと思います。
ビジネスにおいてもこれはとても重要です。
しかし、AIは、もっともらしい嘘(ハルシネーション)をつくことがあります。
もし、AIの出した間違った回答をそのまま鵜呑みにしてクライアントに伝えてしまい、それが大問題に発展したらどうなるでしょうか。
失われるのは、一瞬にして築き上げてきた「信用」です。
それも個人の問題だけでなく、組織の問題になってしまいます。
ビジネスにおけるリスクは、私たちが想像する以上に甚大なのです。
予測不可能な世界で、誰が「修正」するのか?

しかも、いまの世の中は「VUCA(予測不能)」と言われる時代です。
どれだけ精緻な予測を立てても、簡単にハズれてしまいます。
もし、目の前で緊迫した状況が起こったとしたら……。
その瞬間、AIが勝手に判断して、すべての状況を都合よく解決してくれるわけではありません。
AIは、その瞬間の背景や状況を把握しているわけではありません。
結局のところ、現場のリアルな状況を見て、自分の頭で考え、軌道修正しなければならないのは「人間」なのです。
つまり、これからの時代に最も価値を持つのは、「人による修正力」になるのです。
アポロ13号の帰還劇が教えてくれる「レジリエンス」

みなさんは、「アポロ13号の帰還劇」をご存知でしょうか。
1970年、月面着陸を目指して打ち上げられたアポロ13号は、途中で酸素タンクが爆発するという致命的なトラブルに見舞われました。
地球への帰還はおろか、乗組員の生存すら危ぶまれる極限状態に陥った話です。
このエピソードは、ビジネスや組織論において、よく「レジリエンス(resilience)」の文脈で語られます。
いまのような高度なAIが存在しなかった時代とはいえ、ロケットは当時の人類における「超高度なテクノロジー」がすべて詰まった結晶です。
しかし、どれほど技術を尽くしても、想定外のトラブルは不意に起こるのです。
この危機を救ったのは、地上管制官と宇宙飛行士たちの圧倒的な「レジリエンス」
つまり、状況に応じて自らを柔軟に変形させ、困難から立ち直る「しなやかさと回復力」でした。
彼らが行ったのは、マニュアルや過去データの参照ではなく、 「いま現実に起こっていること」を直視し、 「未来を予想」しながら、 「いま最善と思える打ち手」を、超スピードで実行すること。
これこそが、レジリエンスの本質です。
AIで「平均点」が取れる時代だからこそ、問われるもの

現代は、AIのおかげで「誰がやっても平均点が取れる時代」になりました。
実際、システム開発すら民主化され、専門知識がなくてもアプリを作れるようになっています。
非エンジニアの私でも、ちょっとしたアプリなら開発ができてしまいます。
定型業務や、ある程度のシチュエーションであれば、AIをぐるぐる回しているだけで上手くいきます。
そのような時代だからこそ、改めて見つめなおしたいわけです。
私たちは、AIに「唯一の正解」を求めて思考停止していないだろうか?
アポロ13号のような緊迫した状況に直面したとき、人間のレジリエンス力が最も試されます。
そして、その緊迫した場面で奇跡的なアイデアを思いつくのはなぜか。
「火事場の馬鹿力」のように生死をかけた緊迫した状況だからこそ思いついた、ということもあるかもしれません。
しかし、本質的に見れば、彼らが「原理原則的なものごとや構造、技術への深い理解」を持っていたからです。
表面的な操作方法だけでなく、「なぜこのシステムはこう動くのか」「物理的にどういう構造になっているのか」を深く理解していたからこそ、マニュアル外の応用(例えば、四角い二酸化炭素除去装置に丸型のフィルターを接続する応急処置など)をひらめくことができたわけです。
おわりに:AIを相棒に、心にしなやかさを

AIのおかげで、私たちの日常はますます便利になり、個人でも高度なことができるようになります。
しかし、だからこそ、不意に訪れるトラブルや想定外の事態を、AIだけで解決することはできません。
最後の砦となるのは、いつも私たちの「しなやかさ」と「深い理解」です。
AIという優秀なツールに「平均点」を出してもらいつつ、私たちは人間だからこそできる「レジリエンス(しなやかさ)」と「修正力」を磨いていく。
そのためには、色々な成功や失敗の経験、豊富な知識、構造化する力、観察する力、など、原理原則を理解し自分の中に定着させるための学びがとても重要になってきます。
ビジネス力が身につければ身につけるほどに、「レジリエンス(しなやかさ)」と「修正力」は磨かれていく。
それこそ、私たちがこれからのAI時代を軽やかに、そして力強く生き抜くための、最大の武器になるのではないでしょうか。
みなさんも一緒に、「レジリエンス(しなやかさ)」と「修正力」を磨きましょう。
