黒い三角巾のばあばと出会う国〜ジョージアに恋に落ちた理由
黒い三角巾のばあば
ジョージアを歩いていると、ふとあることに気がついた。
黒い三角巾をつけたおばあちゃん――私は“ばあば”と呼びたくなる――が、本当に多い。
最初は、日本で割烹着を着たばあばを見かけるように、ただの生活習慣だと思っていた。
ところが、日を重ねるほどそれ以上の静かな意味があるような気がした。
『なぜ高齢の女性だけが黒を身につけているんだろう?』
羽織るというより「自分の一部」のように身につけている。

暮らしの中にある静かな軸
市場で野菜を並べているばあば達は、特別な振る舞いをしているわけではない。
声を張り上げることもなく、笑顔で愛想を売るでもない。
それでも、そこに立っているだけで周囲の空気が落ち着く。
「優しい」よりも「揺れていない」。
黒い三角巾の端だけが、かすかに風に揺れているけど、
揺れているのは布だけで、ばあばの「芯」は少しも揺れない。
まるで身体の奥深くに太い根があるかのように。

黒に宿るもの
黒は悲しみの色?そう思う国も多いだろう。
私自身も、黒には「喪」のイメージを持っていた。
でも、この国で見る黒はただの色ではなく、その人の内側に積み重なってきたものと結びついているように見えた。
そして、その背景にはいくつかの説があるらしい。
祈りの習慣として女性が頭を覆うために身につけている説もあれば、
年齢の深まりとして落ち着いた色を選ぶという説もあり、
夫を見送った人生の静かな誓いとしてまとうという説もある。
どれも同じ黒だけれど、そこに込められた理由の重なり方は人によって違うのだろう。
私はまだ黒を身につける「その人の理由」はまだ聴けていない。
だからこそ、もっと知りたいし、もっと聴いてみたくなる。
世界には、観光ではなく縁として自然と近づいてしまう国があるのかもしれない。

まだ触れただけの私
私はまだ、ジョージアという国にそっと触れて恋に落ちたばかりの人間だ。
理解には遠い場所にいるけれど、もう無関係でもいられない。
旅をしていて、たったひとつの光景からその国そのものが気になってしまう瞬間はないだろうか。
「気になる」という気持ちは、理解へ向かう最初の入り口だと思う。
一見どれも同じように見える三角巾の黒。
でも、その黒に辿り着くまでの物語は、きっと一人ひとり違う。
いつか、あの三角巾の下にある物語を、その主人公から聴ける日が来るだろうか。
それを確かめに、きっとまたジョージアへ会いに行く。
行くというより、気づけばまた、この国のほうへ自然と引き寄せられてしまうのだろう。
遠くにあるのに、なぜか帰りたくなる場所ができてしまう、そんな国だ。
そんな国に出会ってしまったことが、ただうれしい。

あゆみ
• ───── ✾ ───── • ──── ✾ ──── • ──── ✾ ───── •海外で暮らす。好きなことで働く。
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