なぜ破滅的な予言は広まるのか(強力なトレンドの暗黒面)(トレンド思考5-10)
劇薬ではありますが、ネガティブな感情を刺激する要素も、トレンドを立ち上げ期には有効です。
怒りや悲しみ、不安、憂鬱、焦り、苛立ちといった否定的な感情は、人を強く支配するからです。人間の脳は、進化の過程で「危険やリスク」を優先的に認識するよう設計されてきたことが理由なのでしょう。
長い歴史からすれば安全な社会になっているにもかかわらず、不安を煽る情報はSNSで広まりやすいですし、テレビや新聞、週刊誌などのオールドメディアもネガティブな情報をベースに作られてきました。大きな事件や事故や有名人の転落劇、細かくは「老後の不安」や「この薬や食品は危ない」まで、ほとんどの記事がその範疇に入ります。
また、すでにネガティブな要素のトレンドが生じている場合、それらを利用するのは容易です。煽り運転が大きな話題になった際は、ドライブレコーダーが売れましたし、闇バイトによる強盗が多発すると自宅用のセキュリティカメラが売れます。歴史的に見れば、戦争が新聞の販売数を大きく引き上げることに直結していました。
不安をベースにした昔からある商品である生命保険は、少子高齢化のトレンドを受けて、死亡保険から医療保険や介護保険、終身保険へとトレンドがシフトしてきています。美容やダイエット、サプリなどの健康食品もまた、劣等感や不安といった感情に訴えかける商品であり、新商品がトレンドとなりやすい傾向があります。
一見、ポジティブに見える投資や副業の商材であっても、購入者には「このままでは人生が終わる」という焦燥感から購入されることが多いのではないでしょうか。
こうした負の感情を刺激するトレンドは、成功しやすいものの、社会への悪影響も無視できないレベルにきている気がします。
他社との比較がされやすいSNSを含めて、こうした劣等感を刺激するビジネスが、若者の自殺増加に関連しているのではという研究結果も数多くあります。SNSであれ週刊誌であれ、ネガティブな感情を満足させたいユーザーの欲望があるから成り立っているわけですが、程々にしないと自分自身のメンタルが焼き払われるリスクもあるのではないでしょうか。
映画『スター・ウォーズ』では、フォースの暗黒面の強力さが描かれています。
スター・ウォーズにおけるフォースとは、銀河のすべてのエネルギーをつなぐ見えないエネルギー場のことで、いわゆる超能力です。なぜ、フォースの暗黒面が強力なのかといえば、怒りや憎しみ、恐れ、欲望といった強い感情を原動力にしているからです。
さらに、ジェダイは執着心を放棄し、感情を制御すべきという規律がありますが、暗黒面では、こうした「制限」を解除しており、攻撃に躊躇がないため、より攻撃的で破壊的なパワーを発揮できるというわけです。
トレンドは超能力ではありませんが、人々の思考エネルギーの方向性であるため、怒りや恐怖をベースにしたトレンドは激しく動くのです。トレンドの暗黒面は強力ですが、アナキンがその誘惑に堕ちたように、暗黒面を制御できず、ネガティブな結果を引き起こすことは避けたいものです。
とはいえ、ネガティブな感情を活用したトレンドが、すべて悪というわけではありません。
定期的にトレンドとなるホラーや怪談といった、人の恐怖心を刺激するエンタメも、負の感情を利用したものです。
不景気の時期には、ホラーや怪談が流行るという法則もあるようです。1930年代の大恐慌の際には映画『ドラキュラ』や『フランケンシュタイン』が、1970年代のオイルショック・景気低迷時には『日本沈没』や『エクソシスト』、『八つ墓村』などがヒットしました。
こうした 非日常的なカタルシス(破壊・生存本能の刺激)で、人々は不安を紛らわしているのかもしれません。今現在も、ホラーや怪談は流行っており、いまだ多くの人が景気低迷を感じているのでしょう。不景気というネガティブなトレンド環境にあっても、楽しみを見出しているのです。
不安や恐怖を映画などよりもリアルに感じさせるコンテンツが「予言」です。1999年のノストラダムスの予言しかり、2025年7月に日本で「大災難」が起こるとの予言しかり、不吉な予言は、一気に広まります。
不確かであっても、強い不安や恐怖は、人々の間で話題になりやすく、必然的にトレンドとなるのです。
#創作大賞2026 #ビジネス部門
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