警察官からカフェの店主へーーチャレンジショップを活用した友利裕哉さんの歩み。
今月の地域おこし散歩では、複合型商業施設SEE SEA PARK でカフェを営む宮古島ロースタリーカフェ店主・友利裕哉(ともりひろき)さんにお話を伺いました。
友利さんは、新規出店者を応援するSEE SEA PARKのチャレンジショップ区画でコーヒー豆の焙煎所を開業。2年9ヶ月の営業を経て今年の4月に同施設のテナント区画へ移転し、現在はカフェを営業しています。「この地域に恩返しをしたい」と語る友利さんの、その言葉の背景にある思いとこれまでの歩みをお聞きしました。

友利 裕哉 / 宮古島ロースタリーカフェ店主
おおい町在住、沖縄県宮古島出身。滋賀県警で警察官として勤務した後、レトルトカレー開発や卸売業などを展開。2022年7月、SEE SEA PARKチャレンジショップ区画で「宮古島珈琲焙煎所」を開業。2025年4月、同施設のテナント区画に移転し、「宮古島ロースタリーカフェ」の営業を開始する。
転機となったチャレンジショップでの開業

―― 友利さんは沖縄の宮古島出身なのですよね。おおい町との関わりができた経緯から教えてください。
宮古島で生まれ育ち、27歳から30代後半まで滋賀で警察官として働きました。退職後は草津市を拠点に、おおい町の飲食店とレトルトカレーや冷凍弁当を開発したり、滋賀ならではの商品を仕入れて町のスーパーマーケットに卸したり、さまざまな事業を手がけていました。そうした経緯でおおい町とのつながりができたのです。
―― どうして、おおい町で焙煎所を開業されたのですか?
家族が今でも宮古島に住んでおり、将来宮古島に帰っても続けられる事業が何かあるのではと模索していました。そんな中で、卸しの仕事を通じてコーヒーがとても人気なことに気づきました。また、ある焙煎所に通ううちにコーヒー豆の焙煎という仕事自体に魅力を感じたこともきっかけです。いつか宮古島で焙煎所を始められたら面白そうだと思っていました。


そうした状況のなか、うみんぴあエリアでの建設工事を見かけました。その建物がSEE SEA PARKという複合型商業施設で、チャレンジショップを募集している状況だと知ったのです。当初は宮古島で始めるかどうか迷っていましたが、SEE SEA PARKは地元の人も観光客も訪れる場所になること、家賃などの固定費を抑えて挑戦できる環境が整っていることに魅力を感じ、まずはこの場所でやってみようと応募しました。

ーー チャレンジショップでの2年9ヶ月はどんな期間でしたか?
本当に充実した期間でした。チャレンジショップという制度がなければ今の自分はないと思います。宮古島珈琲焙煎所を始めるまで、経営の知識が乏しいなか自分のやり方に固執していたので上手くいかないことばかりでした。そのため、宮古島珈琲焙煎所を立ち上げてからは、飲食店の経営に詳しい知人のコンサルタントの先生にご指導をあおいで二人三脚で歩むことにしたのです。その方には「コーヒー豆を売らず、人との絆を大切にすること」が大事だとよく言われていました。



最初は「なんで豆を売ったらあかんのやろう」と思っていましたが、挨拶をする、声をかける、最後まで礼をつくすことを心がけ、お客さんにどうしたら喜んでもらえるかを日々考えていると、どんどん応援してくれる人が増えてきたのです。だからこそ、チャレンジショップを卒業した今も、お客さんとの関係性を最も大切にしています。

―― チャレンジショップを卒業後、テナント区画でカフェを営むことになった背景も伺いたいです。
チャレンジショップを卒業してすぐに「ありがとうございました」と外に出ていくことに対し、気が引ける思いがありました。宮古島にはいつか帰りたい気持ちはありつつ、チャレンジショップがなかったら私の人生はなかったので、恩返しをしたいという想いを優先しました。
そうしておおい町内で出店する道を探していたところ、SEE SEA PARKのテナント区画が空いたので、コーヒー豆の販売だけでなく食事やスイーツを提供するカフェという新業態で挑戦することを決めました。


ーー カフェ業態は焙煎所とは違う難しさがありますか?
全然違いますね。焙煎所を営むよりもカフェでは多くの人を雇う必要があります。調理施設ができたことで掃除の範囲も広がり、業務時間も増えました。焙煎所とは勝手が違います。ただ、小さい頃からお菓子を作って誰かに食べてもらうのが好きだったので、今は夢の中にいるような感覚です。昔、パティシエになりたかったんです。

恩返しという意味でも、地元の人達に働いてもらえるのは良いことだと思っています。新商品のアイデアを提案してくれるスタッフさんや学校の許可を取って働いている高校生もいるので、より働きやすい状況をつくっていきたいです。


――今後、宮古島ロースタリーカフェをどんなお店にしていきたいですか?
コーヒーと食べ物だけで100点満点を目指すのではなく、居心地のいい雰囲気をつくることを大事にしていきたいです。昨日、大学院生が来られていて数時間課題に取り組まれていました。他の店舗では回転率を気にされると思いますが、私としては問題ありません。長居したくなるくらいの心地いい雰囲気をつくり、「今度、また友人と来ます」などの言葉をかけてもらえるとすごく励みになります。そういうお店づくりを心がけながら、この場所でチャレンジさせてもらえた恩返しができれば嬉しいかぎりです。

編集後記
チャレンジショップだった宮古島珈琲焙煎所を初めて訪れたとき、商品を選んでいると1杯のウェルカムコーヒーが差し出されました。それは「お客さんとの絆を大切にしています」という友利さんの言葉通りの瞬間でした。一息つきたいときにまた訪れたい、そんな気持ちになる取材でした。
取材・執筆・撮影:張本舜奎
