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「石は7つで支える」大野見萩中新改に残る、名人の石積み

高知県中土佐町の大野見(おおのみ)萩中・新改地区。
ここには、四万十川流域の文化的景観に指定された、素晴らしい石積みが残っています。

子どもの頃はコンクリートの方が価値があると思っていましたが、昨年Uターンし、地域の方の話を聞くうちに気づきました。
この石積みは単なる壁ではなく、山間地で生きる人々の知恵と暮らしを支える「高度な土木技術」だったのです。


大野見萩中の新改地区の石積み

「右に倒し、次は左に倒す」
この石積みを築いた名人の子孫であるアキちゃんは、こう教えてくれました。
「石は、右に倒したら、次は左に倒すがよ」

一見感覚的な言葉ですが、構造力学的に非常に合理的です。
一段目を右傾き、次の段を左傾きと交互に積むことで荷重が分散され、土圧や水圧がかかっても崩れにくくなります。石同士が互いに締め合い、壁全体が安定するのです。

名人の石積み

「一つの石は7個の石と接しちゅう」
もう一つの言葉も印象的でした。
「一つの石は、7個くらいの石と接しちゅう」

石は静止しているようで、常に動こうとしています。
前に倒れる、横に滑る、ねじれる……。
これらを防ぐため、一つの石が上下左右の計7個ほどの石と接して支え合っています。
AI画像解析による推定でも平均接触数は約6.3〜6.8個
名人の「7個」という感覚は、経験則として驚くほど正確でした。

曲線も見事に積み上げている!

敵は土ではなく「水」
表からは見えませんが、石の裏側には「裏込め石」と呼ばれる小石が大量に詰められています。
雨が多い高知では、背面に水が溜まると巨大な水圧が生まれ、崩壊の原因になります。この大量の小石が、水を効率よく抜く「水圧を逃がす装置」として機能しているのです。

石だけでなく、記憶も残したい
名人はいつも川原や山で石を探し、「これはどこに使えるか」を一瞬で見抜いていたといいます。
崩れやすい地質で、全国屈指の雨量を誇る四万十川源流域。
だからこそ人々は石を貴重なものとして活かし、水への畏敬の念を持って生きてきました。


文化的景観

本当に失われやすいのは、石そのものではなく「どう積んだか、何を考えていたか」という記憶です。
この美しい文化的景観とともに、先人の知恵と思想をしっかりと未来へ記録し、残していきたいと感じています。

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